石川素樹建築設計事務所による、秋田・横手市の住宅「赤坂の家」
石川素樹建築設計事務所による、秋田・横手市の住宅「赤坂の家」 photo©ARCHI HATCH
石川素樹建築設計事務所による、秋田・横手市の住宅「赤坂の家」 photo©ARCHI HATCH
石川素樹建築設計事務所による、秋田・横手市の住宅「赤坂の家」 photo©ARCHI HATCH

石川素樹建築設計事務所が設計した、秋田・横手市の住宅「赤坂の家」です。

東西に長い敷地の赤坂の家は、西側道路の先には田園風景が広がるものの敷地からの見え方は周辺建物もかかり、南北と東側は隣家が近く3方囲まれていて東西で敷地の高低差もある状況にあった。

そうした敷地状況から、高低差をかわしつつ空と日照を求めて南側隣家間の切れ目となる位置まで大きくセットバックし、東側には自家用畑、低い西側には駐車スペースと一時的な雪溜まりにもなる庭という配置にしている。

配置計画から得られる日照や、敷地形状、街並みとのボリューム、施工性、予算から、北側に雪を集め南側に大きな開口を設けたシンプルな片流れ屋根を架けた平屋とした。

屋根から北側に落ちる雪は井戸水を利用し融雪し、その井戸水融雪を西側の一部まで伸ばし雪溜まりや雪かき量も軽減させている。南側は積雪軽減に加え、外部としての活用と隣家との緩衝帯となるよう軒を深くしている。

建築家によるテキストより
“建築と今” / no.0001「青木淳」

「建築と今」は、2007年のサイト開設時より、常に建築の「今」に注目し続けてきたメディアarchitecturephoto®が考案したプロジェクトです。様々な分野の建築関係者の皆さんに、3つの「今」考えていることを伺いご紹介していきます。それは同時代を生きる我々にとって貴重な学びになるのは勿論、アーカイブされていく内容は歴史となりその時代性や社会性をも映す貴重な資料にもなるはずです。

“建築と今” / no.0001「青木淳」

青木淳(あおき じゅん)
1956年横浜生まれ。東京大学修士課程建築学修了。91年、青木淳建築計画事務所を設立。2020年、ASに改組。05年、芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。東京藝術大学建築科教授。代表作に「潟博物館」、「青森県立美術館」など。京都市美術館(通称:京都市京セラ美術館)のグランドリニューアルの設計を西澤徹夫とともに手掛ける。19年、同館館長に就任。
URL:http://as-associates.jp/


今、手掛けている「仕事」を通して考えていることを教えてください。

「松本平陸上競技場」の設計がはじまりました。

人々の気持ちや行動というナカミは、それ自体で形をもっていません。
それを容れる、広い意味での建築というウツワがあってはじめて、ナカミは形をもちます。
ウツワは、それ自体で形を決めることができません。
そこに容れるナカミがあってはじめて、ウツワはその形を決めることができます。

ナカミもウツワも不定形。
その不定形同士がやりとりするなかで、
ナカミはウツワをつくったり、壊したり、
ウツワはナカミをつくったり、壊したり。

この動的な、微妙な関係が、おもしろい。
建築の設計というのは、その関係のなかに飛び込んで泳ぐこと。

それは、住宅の設計も、美術館の設計も、陸上競技場の設計も変わりません。

日本ペイント×architecturephotoコラボレーション企画 “色彩にまつわる設計手法” / 第1回 中山英之・前編「世界から『色』だけを取り出す方法について」
日本ペイント×architecturephotoコラボレーション企画 “色彩にまつわる設計手法” / 第1回 中山英之・前編「世界から『色』だけを取り出す方法について」

本記事は学生国際コンペ「AYDA2020」を主催する「日本ペイント」と建築ウェブメディア「architecturephoto」のコラボレーションによる特別連載企画です。4人の建築家・デザイナー・色彩計画家による、「色」についてのエッセイを読者の皆様にお届けします。第1回目は建築家の中山英之氏に、色彩について深く印象づけられた出来事を綴っていただきました。

 
世界から「色」だけを取り出す方法について

text:中山英之

 
 
倉俣史朗という名前を、もしかしたら若い方はご存知ないかもしれません。もう四半世紀も前の話になりますが、僕がデザインの世界に興味を持った頃、既にその名前は半ば神格化されていました。建築の道に進もうと考えつつも、当時いちばん興味があったのは椅子のデザインでした。持っていた椅子の本のなかでもとりわけお気に入りだった一冊にも、ちゃんとKURAMATAの名前はありました。だから僕もなんとなく知ったかぶりをしていましたが、告白すると、造花をアクリルに封じ込めたその椅子の何が素晴らしいのか、その当時は正直、よく分からずにいました。

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日本ペイント×architecturephotoコラボレーション企画 “色彩にまつわる設計手法” / 第1回 中山英之・前編「世界から『色』だけを取り出す方法について」「ミス・ブランチ」(デザイン:倉俣史朗、1988年) Photographed by Hiroyuki Mori、 ©︎クラマタデザイン事務所

そんなある日、たまたま立ち寄ったお店の片隅に飾られていたオブジェに、目が釘付けになりました。ほのかにピンク色に染まった透明な直方体が、まるで物質感のない純粋な存在がそこにあるかのように、浮かんでいたのです。「物質感がない」というのは何かの比喩ではありません。本当にそう感じたのです。

ピンク色に染まった透明な直方体。もしもそんなものが目の前に浮かんでいたとしたら、どんなふうに見えると思いますか?それはまるで、輪郭が空気と溶け合って、スッと消えてしまおうとしているように見えます。どういうことか。原理は単純です。斜め方向から立方体を見つめた時、立方体の中心を対角線状に貫く視線と、角を一瞬で通過する視線では、どちらの方が色が濃く見えるでしょうか?簡単ですよね。紅茶をたっぷり注いだティーカップの底が、飲み進めるにつれて徐々にはっきり見えてくるように、濃いのは当然、深度の深い前者のほう。とてもあたりまえのことです。けれども、そのあたりまえのことが目の前に描く完璧なグラデーションから、僕はしばらく目が離せませんでした。

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日本ペイント×architecturephotoコラボレーション企画 “色彩にまつわる設計手法” / 第1回 中山英之・前編「世界から『色』だけを取り出す方法について」立体を透過する視線と色彩濃度の関係 提供:中山英之建築設計事務所

近寄ってみると、飾られていたオブジェは無垢のアクリルでした。透明なピンクのアクリル直方体。そして、ここからが特別なのですが、それが丸ごと、ひと回り大きな無色透明のアクリルの塊の真ん中に、封じ込められていたのです。なんだそんなことかと笑わないでください。透明なアクリルの中に何かを封じ込めて、それで「空中に浮かんで見えた!」という単純な話では終わりません。

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