小俣裕亮 / new building officeが設計した、東京・新宿区の、集合住宅の一室のリノベーション「マキさんの住宅」です。小俣は、磯崎新アトリエ(2011年よりイソザキ・アオキ アンドアソシエイツ)出身の建築家。
集合住宅の一室のリノベーション計画です。
間仕切りを撤去して大きなワンルームとなった空間の中に、厚さ 50mm のセメント板による極薄の組積造の壁を立て、その周囲を回遊する空間のつらなりとして生活の場を設けています。
セメント板による組積造の壁は、天井と床のスラブによってテンションをかけられたスチールロッドがバットレスのように、面外方向の倒れに抵抗する構造計画としています。ロッドによって直接支持されていないパネルも、支持された他のパネルによって挟み込まれることで保持され、ロッドによって支持されたパネルをバランス良く配置するため、セメント板の目地が互い違いになっています。そのセメント板の目地のパターンと、オークの床張りのパターンがスケールを変えて呼応しています。
ものを積み重ね、倒れないように控え壁で抵抗する組積造という技術体系を、集合住宅の一室の限られた寸法の中で成立するように、壁の厚みを薄くし、控え壁が果たしてきた役割を繊細なスチールロッドに任命し直すといった、技術の編集をすることで、力の因果関係を体現するものを生活空間に同居させることを意図しています。