※このエッセイは、杉山幸一郎個人の見解を記すもので、ピーター・ズントー事務所のオフィシャルブログという位置づけではありません。
光の空気層 / 丸い教会
text:杉山幸一郎
今回は、Caplutta Sogn Benedetg (以下、聖ベネディクト教会)について綴りたいと思います。
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ピーターズントーと聞いて、聖ベネディクト教会を思い浮かべた人は多いのではないでしょうか。これまで紹介してきた木造アトリエ、ローマ遺跡のためのシェルターとともに、彼の出世作としてよく知られているプロジェクトです。
建築雑誌 a+u の臨時増刊号ズントー特集の表紙にもなっている、霧がかかった緩やかな傾斜の上に立ちそびえる教会のモノクロ写真。Hans Danuserという彼の友人でもあるアーティストが撮ったものだと聞いています。この写真によって、教会とズントーの名前が世界に知られていったと言っても過言ではありません。
教会はグラウビュンデン州のクール市から電車で1時間ほど西へ移動したところにあるSumvigt-Cumpadialsという駅から、さらに1時間弱歩いたところにあります。(この駅に停車するには、車内にある停車ボタンを押して意志表示しなければ止まってくれません。注意してくださいね)
この辺りはスイスの公用語の一つ、ロマンシュ語が話されている地域で、電車に揺られている時に、周りからそれらしい言葉での会話が聞こえてくるにつれて、目的地に近づいてきたことに気がつきました。
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一度も乗り換えることなく、駅に着きます。駅前であっても特にお店があるわけではなく、乗車したのは僕一人でした。このあたりは山に囲まれ、谷に沿って線路がひかれ、小さな集落がポツポツとあります。目的の教会へは、ここから山の上へ向かって登っていきます。
目の前に広がっている緩やかな斜面の牧草地を横切っていくと、車道に突き当たりました。その道に沿って歩いていくのが一番簡単な行き方です。途中で森の中に入っていくハイキングコースもあるのですが、初めて訪れる際は迷うことのないこの車道を歩いていくことをお勧めします。車道といってもローカルな道なので、車の行き来はそう多くありません。
聖ベネディクト教会については、既に数えきれないメディアが取り上げ、出版もされ、そして多くのことが語られています。それだけに、何か新しい発見はないかと、逆にワクワクしながら向かいました。