佐野文彦 / Fumihiko Sano Studioが設計した、京都市の、市指定文化財を改修した飲食店「ダンデライオン・チョコレート京都東山一念坂店」です。店舗の公式サイトはこちら。
この物件は高台寺近くの一念坂と呼ばれる、古くからの京都の風情が残り落ち着いた雰囲気を持った通りに建っている。建物は京都市指定の文化財となっており、建物の外観は歴史を感じさせるものだ。しかし内部は数年前に大規模な増改築がされており、元の姿をうかがい知ることができない状態だった。
私はこの建物が以前は持っていたであろう京町屋の雰囲気を取り戻させつつ、このチョコレートブランド発祥の地、サンフランシスコらしさをどこか感じるラフで心地よい開放的な空間を作ることを目指した。
日本建築は寺社仏閣などの特殊なものを除いて主たる素材は杉だ。天井板をはじめ鴨居、柱、長押、廻縁、障子、欄間など日本建築を構成する多くの部材に杉が使われている。
クラフトチョコレートと吉野杉という厳選された自然の無垢な素材を使ったものづくりには親和性があると考え、杉を空間を作っていく素材の中心に据えた。ほとんどのオリジナルの内部意匠は失われてしまっていたが京町屋だったはずのこの空間を、まるで元々ここにあったかのように、空間に溶け込むようデザインを進めていった。