井原正揮+井原佳代 / ihrmkが設計した、愛知・日進市の住宅「バイパスの湾処」です。
敷地は日進米野木駅前特定土地区画整理事業として整備が終わったばかりの、建物や人が徐々に集まる新しい住宅地の一角で、30メートルに拡幅された交通量の多いバイパスに面している。
広々と造成された周辺環境に対してどのような構えの建物とするか。
魚などの水生生物の安定した棲み処であり活動の場である湾処のように、前面道路に向かって全面的に開くのではなく、反対に閉じてしまうわけでもない。境界面を操作することで、平面的な場所に繋がる立体的な空間と、人工的でスケールアウトした場所に接する人間的な距離感を作りたいと考えた。
土地形状は、前面道路から入ったところから約1メートル高のひな壇となっていた。そこで、そのひな壇にRC造のボリュームを挿入し、巣穴のようにこの土地に入り込ませた。このRC造のボリュームは、1階の腰壁部分が梁となっており、1階テラスまで繋がった腰壁が建物をぐるりと取り囲む構造としている。その上に木架構を1.5層載せ、RC造とは反対に軽やかなリズムをもたせている。
カフェとして使用される地下階と1・2階の居住部分でエントランス位置や階層はきっちりと分けながらも、中央の中庭吹抜けや、1.5層のRCと1.5層の木架構という建物の構造を通して上下階の気配を感じることのできる構成となっている。