吉田裕一建築設計事務所(環境デザイン/内装監理)・交建設計(基本調査設計)・東鉄工業・AE(実施設計)・SUPERBALL(環境デザイン/内装監理)による、東京・千代田区の、鉄道高架橋下300mにわたる商業施設「日比谷OKUROJI」です。
JR東日本(山手線、京浜東北線、東海道本線)、JR東海(新幹線)が通る鉄道高架橋の下を300mにわたって開発した計画です。
この高架下は、銀座、有楽町、日比谷、新橋などの個性的で華やかな街のどこにも属さずに、それぞれのエリア同士のノード(結節点)となりうる可能性を秘めた立地でした。8000㎡を超える都心の一等地であり、貸付面積を最大限確保するのが事業者としてのセオリーだとは思いますが、100年近くの歴史を持ち、東京都という都市の遺構ともいうべきこの高架下空間を床で埋め尽くすのではなく、誰でも利用できるオープンエアーなパブリックスペースとして開放し、通路と広場の中間的な性格をもった共用空間を中心に、その周りに建築が貼りつく構成としています。
こうして作られた共用空間は、消防活動と避難に有効な複数の通路を介して、土木柱に囲まれた広場やニッチ状の空間が数多く点在し、外部も含めた回遊性を高め、これまでと違う人の流れを生んでいます。また、鉄道高架橋が併走する特異な立地にあらためて商業施設として計画する上で、高架下空間にとってノイズとなるものを徹底的にコントロールすることを試みています。
具体的には新しく建てる建築をできるだけ簡素化し、使用するマテリアルを限定し、色数を抑え、間接光と反射を利用し、新しく作られる建築よりも高架を浮かび上がらせました。そうすることで建築はレイヤーの最背面へ滑り込み、高架橋の存在が前面に出てきます。そして建築が空間の調停役を担わず、高架下空間から店舗のインテリアへダイレクトにつながる状態になるよう心がけました。