江藤健太アトリエが設計した、大分市の住宅「政所の家」です。
敷地は、電気以外のインフラが整備されておらず、前面を流れる汚れた溝川、敷地と道路をつなぐ開発によって架けられた極太の橋、太陽光パネル群、居酒屋の駐車場・看板などが目立ち、雑多さが目に付く場所であった。
何度か敷地に通い観察していると、駅舎が近くにある事で電車がコトコトゆっくりと駅へ向かう発着の風景や、ワイワイと人の行交う通勤通学の風景、線路側にある神社の大木の連なる景色、辺に生えている雑草までもが肯定的に感じられるようになり、様々な要素がこの地域の秩序だった穏やかな日常の風景を作り出している事に気づいた。
計画では、雑多さをある程度排除しつつ、この地域の穏やかな日常風景の一瞬や借景を切取り内部へ引込む事で、半屋外の様な心地良い受け皿としての緩衝的な余白を住空間へ組込もうと考えた。
8m角の正方形平面に田の字型の図式を選択。分解して幅1.8mの十字状の土間による吹抜けホール(余白)を作成。内外のプライベートと半パブリックな空間が混じり合う中間領域とする。