GROUP+清原惟+三野新が設計した、神奈川の「海老名のアトリエ付きシェアハウス」です。メーカーが建設した集合住宅の改修の依頼に、設計者が実際にそこに住み“生活の痕跡”を見つけ“形”に再構築することで、その新しい関係性により建築が更に変化する発端となることが構想されました。高野ユリカと三野新がそれぞれ撮影した写真で紹介します。
私たちが改修設計を依頼された住宅は、平成のはじめにハウスメーカーによってつくられた6棟が連なる長屋形式の集合住宅でした。
クライアントからアトリエ付きシェアハウスへのリノベーションの依頼を受け、敷地を訪れたとき、ハウスメーカーについてよく言われている均質な空間の中に、生活の痕跡が残されていることに気が付きました。
海老名の家プロジェクトでは、まず、設計者も含めた9名がその場所に実際に住むことで、家に残された生活の痕跡を見つけつつ、同時に新たにつくりだしていきました。そして、生活を送る中で海老名の家に積み重なっていった痕跡を、写真や映像を用いて記録していきました。そこに写っているものは、食事の風景であったり、庭の植物であったり、部屋に差し込む光であったり、中には私たち設計者が写り込んでいるものもありました。
私たちはその記録を元に、生活の痕跡の「形」を再構築し、外壁に各部屋をまたがった曲線の開口、共用棟の吹き抜け、北側の作業場に通ずる扉をつくりました。これらは既存建築の中に、柔らかい光を取り入れたり、座ったり、ものを置いたり、思い思いに使うことのできる余白を生みだすものとして設計しました。
また、「形」に還元できない痕跡を用いて、共用棟へのスロープと、北側の外部アトリエをつくりました。スロープは各住戸の入り口へと曲線を描きながら伸び、外部アトリエは、隣地の森の樹木の位置と呼応し、制作中にふと目をあげると樹木たちが近くいることを意識できるように設計しました。