佐藤研吾 / In-Field Studioが設計した、現代詩人の為の住宅「インド・シャンティニケタンに家を作りに」です。インドで“日本の家”を作りたい施主の夢を出発点とし、要望に真摯に向き合い“家の断片”と捉えた家具から計画を開始、現地では大工と二ヵ月滞在し内部造作のデザイン制作を行いました。In-Field Studioは、現在一般社団法人コロガロウ / 佐藤研吾建築設計事務所に改組されています。
インドのシャンティニケタンという町で、「日本の家」を作りたい、という遥かな夢を持ったある現代詩人の家である。
住宅の構想に先立って、私たちはまず家具を作ることから始めた。日本で家具を作り、シャンティニケタンへ持って行くことを考えた。というのは、「日本の家」という幻影ともいうべき概念に対して、確かな形を与えることができなかったからである。
「これが日本の家だ」というイメージをそう易々と提出することもできずに「日本」という問題に対して真摯に向き合うにはどうすれば良いか、悩んだ。それで、家の断片である家具の形から考え始めた。そして家具のほかにも、施主のために様々なモノを日本から持って行こうと考えていたから、それらのモノを入れて運ぶためのハコを作ることを考えて、そのまま家具の一部となった。とはいえ家具もまた、確かな輪郭を描けずに何かが欠けた形とするしかなく、現地へ持って行ってから新たな部材を付け足すように、留保させた。
現場では、持ち込んだ家具を起点として、内部造作のデザインと制作を進めた。日本の友人である大工の青島雄大さんらとともに、およそ2ヶ月間現場に滞在し、座机、床の間、家全体に広がる木架構を制作した。
この家の構造躯体はRC造とレンガ組積造を組み合わせたもので、およそ4間四方の単純な平面形となっている。外壁は、採光と通風のための開口部の調整に注力した。躯体は先行して現地の職工の手によって建てられ、その後私たちが滞在し、生活と制作を両立にするためのハコ=シェルターとなった。