神谷勇机+石川翔一 / 1-1 Architectsが設計した、愛知・安城市の住宅「House ST」です。駅前再開発で分譲された敷地に計画、都市スケールの環境に建つ住宅を街固有の文脈と捉えて道路側から徐々に縮小する断面を考案、都市と住宅の両スケールを繋ぎ多様な居場所を作り出しました。
対象敷地は、地方都市の駅前再開発によって新しく生まれた保留地※であり、商業地域の中にありながら、住宅地として分譲された。そのため、駅から徒歩1分の立地であり、周辺には真新しい幅の広い道路と商業地域特有の大きく区画割りされた未開発の土地が広がっている。
初めて敷地に立った時、幅員11mの前面道路やその正面に広がる高架上の駅が、おおよそ住宅のスケールとは似つかない印象だった。そこから本計画では、都市における土木的で大きなスケールと住宅における暮らしのスケールの対立をこのまちのコンテクストと捉え、それぞれに対してふさわしい設えにすることで、都市と住宅をつなぐ暮らし方を提案する。
※保留地・・・土地区画整理事業において費用を捻出する等の目的のために、施行区域内の一部の宅地を事業施行者が取得し、販売することができる土地
具体的には、建物を前面道路ぎりぎりに配置し、住宅1階の断面を道路側から徐々にスケールダウンするように計画する。
道路際は、天井高6m強の吹き抜けと大開口により、住宅内部にまで都市の大きなスケールを取り込む。
そこから奥に向かって、階段状に天井高さが低くなることで徐々に包まれるような空間に縮小していき、高さ1.4mのピロティで外部の小さな庭につながる。異なる天井高さを持つ1階の内部空間を柱のないひとつながりの空間にすることで、道路際の大開口から見える高架の風景と奥の低い開口から見える小さな庭の風景が、暮らしの中でシームレスに絶えず変化する。
この住宅では、駅前再開発地区における都市と住宅の異なるスケールをつなげる暮らしを提案した。
それぞれに対する設えとシームレスにつながる空間の設計により、住まい手が、立ったり、座ったり、寝転んだりといった些細な暮らしの中での行動で、開放的に都市と繋がったり、包まれた自分たちだけの空間でゆったりと過ごしたりと多様な居場所を発見できる。都市に溶け込むでもなく、抗うでもない暮らし方と風景をつくれたらと考えた。