福田俊 / オフィススグルフクダが設計した、東京・世田谷区の住戸改修「404」です。大きさが規定された改修計画に向き合い、現実以上の広がりを知覚させる“嘘を含んだ空間”を目指して設計、複数の役割を担う壁面や架空の天井面等により人の空間認識を揺るがす事が意図されました。
南北にバルコニーを持ったマンションの一室を改修する計画である。
あらかじめ決められた大きさを超えることができない改修計画において、現実の空間以上に広がりを知覚させるような、嘘を含んだ空間を作ることを試みた。
桜鼠色の壁面は、それぞれが自分の役割について嘘をついている。壁であることはもちろんのこと、建具であり壁面装飾であり、家具でもある。要はひとつの部材が複数の役割を持つのだが、すべて同ディテール、同仕上げ、同モジュールで構成されているため、どれが壁で建具か、わからなくなるときがある。
一度この壁面が建具でもあると認識すると、建具ではない単なる壁の先にも空間が広がることを想像することになる。あるいは、家具だと認識すると、単なる壁であってもどこか親密な存在に感じられる。もちろん壁であると認識すると、大きなホールはトンネルとして完結し、建具や家具であることは意識の外へと消えていく。
ホール全体の壁面より上部の高さ1850mm以上の部分をグレーで塗り込め、床から1850mmの高さを「架空の天井面」として設定している。
視覚的に天井を下げることで、認識される空間のアスペクト比を16:9と横に押しつぶし、空間の横方向の広がりをより強調している。16:9というアスペクト比は、映画のスクリーンやテレビのモニターに用いられており、一般的によく見慣れたフレームの画角であるといえる。しかし、もちろん現実世界にはフレームが存在しないため、現実の空間にスクリーンやモニターと同様の画角を見立てることは、空間全体をどこか虚構めいたもののように感じさせる効果をもつ。