池下成次建築設計室が設計した、福岡市の「高宮の家」です。
施主家族の慣れ親しんだ場に計画されました。建築家は、エリアの変化への応答と地域との繋がりを目指して、透かし積煉瓦塀の“閉じない中庭”を考案しました。また、環境・生活・時間軸を考慮して均整のとれた建築をつくる事も意図されました。
設計にあたって、ご家族は以前から近くの賃貸住宅に住み、慣れ親しんだ場所でもあったため、当初は最終案よりもっと開放的な住宅のあり方を模索していました。
しかしながら、将来の沿線ビルの更新や周辺住民の流入出などの環境の変化を踏まえるともっと順応できるかたちがあるのではないかと軌道修正し、移りゆく周辺環境と住居の個の部分を家族固有のバランスでどう関係づけていくか、これまでよりもこれからどう周辺に向き合っていくべきかを再考し、提案させていただくことにしました。
最終の平面プランは、プライバシーを優先しつつも、一面を開放させた閉じない中庭を持つコの字型。
中庭は、室内からも望め、周囲に対しては住まいの温かさや庭の様子が垣間見える「ニッチ(くぼみ)」の様に位置づけました。一つの庭ではあるものの、生活の潤いや街並の心象風景の一つになって欲しいこと、建主家族の子育て中の現在から高齢になる将来に渡ってまちや地域の方々に見守られるような周辺との繋がり方を体現しました。
外観上の大きなボリュームには1階がファミリースペース、2階は小屋裏を利用した立体的な子ども室や小屋裏収納を設けています。
片方が高くなる片流れ屋根の特性を利用し、縦方向に空間を補完しました。小さなボリュームは、離れ的な和室や浴室等の水回りの小間で構成し、小さな容積に相応しい内部機能で整理しました。