ネリ&フーが設計した、中国・上海の、店舗「プリミティブ・シェルター / ブルーボトル張園カフェ」です。
歴史ある住宅を改修しました。建築家は、生活と路地が密接な上海の“都市の精神”の獲得を求め、初源的な“シェルター”を路地の様な客席が取り囲む構成を考案しました。また、人々が小道に生活を拡張する為に用いた発想も参照しました。
こちらは、建築家によるテキストの翻訳です
19世紀末、上海で最も有名な庭園である張園は、現代中国で最も早い時期に公共および商業空間として発展し、新しい中国の都市生活の出現を例証し先導しました。2022年、張園が歴史的建造物の全面的な修復を終えて一般公開されるにあたり、ネリ&フーはブルーボトルに依頼され、古い石門型住宅のひとつに店舗スペースを作りました。コーヒーが、上海の豊かな歴史と現代の都市社会との対話を開始します。
上海の記憶の集積地である張園の建築物の中で、中国の作家、ムーシンが説明した光景 ─夕暮れ時の上海の路地は、小さな蟹が砂浜を出たり入ったりするように、人々が散在している─ を思い描くことができます。この広大な路地網の中で、人々は日々の喧騒の中で生きていますが、上海の人々はいつでも、ひとときの安らぎを感じているのです。ネリ&フーは、このような都市の精神を獲得しながら、地元の人々や観光客に楽しんでもらえるような物語を紡ぎたいと願っています。
歴史的建造物保存のガイドラインにより、オリジナルの建築ファサードやアトリウムの既存のレンガ壁、ドア、窓はそのままに、新しいデザイン要素を挿入するための連続的な背景となります。空間の中央には、建築の原点回帰を象徴するプリミティブなシェルターが設置され、ここでコーヒーが用意され、プロジェクトの視覚的、循環的な中心を形成しています。旧館の外壁には、メインストリートとアトリウムをつなぐ細長い空間があります。建物の中の路地のようなスペースには、窓や壁に向かっていくつかのベンチや小さなテーブルが置かれ、シクメンでの生活の中でゆったりとした社交の時間を過ごすことができるように配慮されています。
既存の建築の重厚な色調と対照的に、ネリ&フーは構造とテクトニックジョイントを綿密に検討し、可能な限り軽量化しました。屋根の構造体にはブラッシュドステンレス、屋根面にはパンチングスチールとベントスチールを使用しています。それは、周囲の環境を微妙に曖昧に映し出す素材です。また、ネリ&フーは、かつて人々がプライベートな空間を路地に拡張するために使用した、インフォーマルな構造やシンプルな取り付けにインスピレーションを受けました。そのため、既存の構造柱に金属棒や小さなプラットフォームを追加して徴用し、ライトレール、サイドテーブル、ベンチ、オブジェのディスプレイとして機能させました。ブランド家具だけでなく、伝統的な古い家具を再利用することで、時間の痕跡が温もりと親しみを与え、新旧、ブルーボトルと上海を融合させたプロジェクトとなっています。