成瀬・猪熊建築設計事務所と&K architectsが設計した、東京・中野区のシェアハウス「Social Base東中野」です。
街中の旧社員寮を転用する計画です。建築家は、中庭のある“ロの字型”平面の活用を意図し、庭に近い場所の壁等を解体し外部化して中庭から共用部が広がる様に再構成しました。また、素材や色の選択は都会の喧騒から離れられる“落ち着いた空間”が意図されました。
築57年の旧JR東日本東中野寮を耐震補強・リノベーションし、シェアハウスとして再生したプロジェクトです。
敷地は東中野駅のほど近く、店舗や住宅、高層マンションが混在する雑多な街の中にある。既存建物の一番の特徴はロの字型の構成だが、その大きな中庭空間は、外部からは感じられず、またその中央に屋内廊下があることで庭が二つに分断され、本来の可能性を活かしているとは言えない状況だった。
私たちはこのロの字形の構成を生かすため、もともと室内であった中庭を貫通する廊下やエントランスといった屋内空間62㎡を、屋根を残して解体した。室内の共用部は、この中庭を中心に広がるよう再構成し、浴室だった場所を段差のあるラウンジやワークスペースに、閉じていた厨房をオープンなキッチンに、管理人の寝食スペースだった場所を防音室やトレーニングジムに、また寮室の一部とメールコーナーをシャワールームに置き換えた。
仕上げについては、中庭を含む外壁を落ち着いたグレーの階調に塗装し直し、室内は共用部をダークトーンと木でまとめ、中庭にむかって大きく開きながらも、素材が豊で手触りがある、落ち着いた空間とした。情報量の多い都会の喧騒から一気に離れることのできる、精神的にも空間的にも余白を生み出す住まいとなっている。