尾崎泰永 / 尾崎建築事務所が設計した、東京・品川区の住戸改修「ROOM-M」です。
約50㎡の区画に家族3人の住まいを作る計画です。建築家は、景観享受と個室数確保等を求め、詳細な想定を基にした寸法の“チューニング”から導いた“屏風壁”で空間を分割する構成を考案しました。そして、都市住居に必要な合理性と柔軟性を空間に付与する事も意図されました。
今計画は近年リノベーションされていた築38年の商品化住戸だった。
クライアントは夫婦+子供の3人家族だが、複数の個室が欲しいなど、希望を根本的に満たせていない50㎡程の1LDK住戸であった。間取りは合っていなかったが、都心でサクラ並木の景観が期待できる立地を優先し、商品化住戸を購入したうえで、更にリノベーションを行うこととなった。
そこでまず、サクラの見える北側に広い空間を得るため、全体を南北方向から東西方向に分けなおす直線の壁を設定し、さらに壁の位置をチューニングした。玄関を広くしたい、TV とソファの距離をもっと離したい、キッチンとダイニングは横並びにしたい、廊下は最小幅でいい、部屋はベッドサイズギリギリでよい、といった置かれる家具を具体的に想定して検討を行いながら、直線設定だった壁の位置を動かし、最後にそれらをつないで、個々の居場所と室内の一体感が共存するような一続きの屏風壁としてフィックスさせた。
住み手の空間感覚を反映するなかで収束した屏風壁は、商品化住戸を住み手の感覚にチューニングするためのアイデアであり、面積の限られた都市の住空間をムダなく使うためのアイデアでもある。
屏風壁には窓を穿ち、視線の抜けを増やし、奥の部屋や玄関からも窓の先の窓の向こうにサクラが見通せる。さらに屏風壁に絡むかたちで引戸を計画し、引戸を開ければぐるりとまわれるワンルーム、閉じれば最大3つの個室が生まれる計画となっている。