長坂常 / スキーマ建築計画が設計した、福島・会津若松市の「Human Hub Tenneiji Soko」です。
工房・カフェ・コワーキング等を併設する店舗です。この施設は、伝統工芸を手掛ける施主企業の“継承”への想いの下、徒弟制度ではない方法で若い世代が制作と販売を行える場として構想されました。建築家は、旧倉庫を既存や風合いを残しつつ改修を行いました。施設の公式ページはこちら。
会津若松では、持続可能な都市開発を目指し、先端技術を活用。ICTや再生可能エネルギー導入により、交通や生活インフラを効率的に運営し、住民の生活と環境の質を向上させる革新的な都市プロジェクトとしてスマートシティ会津若松が立ち上がった。
Human Hub Tenneiji soko(HHT)とは、そこにもともと関美工堂として行っていた伝統工芸を現代風にアレンジした商品のセレクトショップをより充実的なものにし、地域のHUBになるべくもともと関美工堂の工場だった場所を改修しHHTをつくった。具体的には、商品をつくる工房、そこに滞留しやすくするためのカフェ、新たなビジネスとの接点となるコーワーキングスペースなどが加わった。
伝統工芸は商品そのもの、マーケット、デザイン、工房のあり方、そして働き方などあらゆる側面で発想の転換を必要としている。
確かに一つ一つ聞いてみると他では変え難い美しさや性能の高さを持っている。例えば、今回家具などで使わせてもらっている漆だが、これも自然素材として古代から使われてきただけあって性能も美しさも抜群だが、ウレタン、ラッカーなどの人工的な樹脂と一見似ているので、見た目では分かりづらく、現代のように消費過多の一つのものが長く使われない時代においてはありがたみに欠ける。そこで、昔ながらの工芸品をつくる地元の職人さんを時間をかけ説得し、できるだけ現代に合う商品を今まで開発、販売してきた。
しかし、その職人さんたちが高齢化し、継承する者が少なくなり先細りの中、実は若者の中に伝統工芸の技術を学びその産業に寄与していきたい者は十分いることに気づいた。ただ、昔ながらの徒弟制に抵抗ある者は多く、その中で継承できる者は少ないので、関美工堂自ら、企画デザインを考え、市場を作り、自分では工房を持てない若者に共同で工房を提供し、つくらせ、販売することで会津の伝統工芸を守ることを考えこのHHTはできた。
それが、この異常気象や専制主義が強くなりグローバル化がそこまで広がりを見せない今、もしかしたら少し前のグローバル時代では時代遅れとも捉えられていたローカルなものづくりとして周回遅れで皆に求められる日もそんなに遠くないのかもしれない。
そんなことを考えながら、低予算のプロジェクトゆえにできるだけ既存の物、風合いを残しつつリノベーションして生まれた。