大野友資 / DOMINO ARCHITECTSが設計した、東京・江東区の店舗「Heim Jens」です。
コンテンポラリードレスのレーベルの為の店の計画です。建築家は、“家の様な店”との要望に、“室礼”を主題とし“遊びごたえがあって暖かな骨と皮”の提供を志向しました。そして、被覆で囲まれた場に並ぶ品々が連鎖して“趣味”が生まれる空間を作りました。店舗の場所はこちら(Google Map)。
Jensの展示会に足を運ぶとき、服はもちろんだけれど、デザイナー・武藤亨本人が手掛けた空間構成を見るのを楽しみにしている。
場所を丁寧に読み解いて、あるいは読み換えて、即興でアレンジやブリコラージュを加えられた空間は観察すればするほど彼の思考に引き込まれていく。
そんな武藤から、家みたいなお店を作りたいと相談を受けたとき、ああ、これはきっと室礼の話になるだろうな、と確信していた。
僕らからは、遊びごたえがあって暖かな、空間の骨と皮を提供しよう。
床のテラコッタタイルはそのままに、天井にいくつかのレールと、カーブしたアルミのパイプを骨として追加した。建築的な操作はほとんどそれだけといってもいい。そしてほとんどすべての壁を覆うように、するすると手触りのいい布をかけ、壁紙を貼り、鮮やかなブルーの絨毯を敷いた。
柔らかい被覆で囲まれた空間の中に、武藤がどこからかこつこつと集めてきた住宅のための家具や調度品を並べていく。
ドレッサー、脚付きマットレス、スリッパラック、全身鏡、クッション、腰掛けにコーヒーテーブル。傘立て、銀食器、チューリップの形をしたランプ。
住宅との唯一の差異はクローゼットの不在だ。行き場を失った衣服やジュエリー達は空間の中に漂って浮かぶことになるだろう。
アルミパイプの端部は、シャンパンの蓋で塞いでみよう。フロアランプは梁にくくりつけてシャンデリアにしよう。
そうして部屋の中にあるすべての家具やものが星座みたいに連鎖して、その家における趣味が生まれると語っていたのはアドルフ・ロースだったっけ。