佐藤総合計画・青森建築家集団による「青森市新市庁舎」。既存庁舎の建替計画。機能の拡張性と市民協働の持続性の両立を求め、改修を想定した仕様の執務空間を持ち上げて地上部分を市民の為の広場とする建築を考案。外観の“ポツ窓”は気候への対応と増築時の施工性を考慮 鳥瞰、南東側より見下ろす。 photo©船来洋志 川澄・小林研二写真事務所
佐藤総合計画・青森建築家集団による「青森市新市庁舎」。既存庁舎の建替計画。機能の拡張性と市民協働の持続性の両立を求め、改修を想定した仕様の執務空間を持ち上げて地上部分を市民の為の広場とする建築を考案。外観の“ポツ窓”は気候への対応と増築時の施工性を考慮 外観、北側より見る。 photo©船来洋志 川澄・小林研二写真事務所
佐藤総合計画・青森建築家集団による「青森市新市庁舎」。既存庁舎の建替計画。機能の拡張性と市民協働の持続性の両立を求め、改修を想定した仕様の執務空間を持ち上げて地上部分を市民の為の広場とする建築を考案。外観の“ポツ窓”は気候への対応と増築時の施工性を考慮 外観、敷地内の「青い森の広場」から見上げる。 photo©小寺亮
佐藤総合計画・青森建築家集団による「青森市新市庁舎」。既存庁舎の建替計画。機能の拡張性と市民協働の持続性の両立を求め、改修を想定した仕様の執務空間を持ち上げて地上部分を市民の為の広場とする建築を考案。外観の“ポツ窓”は気候への対応と増築時の施工性を考慮 2階、左:事務室、正面:通路 photo©船来洋志 川澄・小林研二写真事務所
鳴海雅人+小寺亮+進藤勝人+福士晴也+福士譲 / 佐藤総合計画 ・青森建築家集団が設計した「青森市新市庁舎」です。
既存庁舎の建替計画です。建築家は、機能の拡張性と市民協働の持続性の両立を求め、改修を想定した仕様の執務空間を持ち上げて地上部分を市民の為の広場とする建築を考案しました。また、外観の“ポツ窓”は気候への対応と増築時の施工性を考慮しました。施設の場所はこちら (Google Map)。
青森市新市庁舎は既存庁舎の老朽化・耐震性能不足、分散された庁舎の集約化、ICT化への対応、東日本大震災を受けて防災拠点の整備が必要になったことによる建替え計画である。
ここまでは他の自治体でもよくある経緯ではあるが、このプロジェクトは一度設計が完了した後に社会状況の変化にともなって、窓口機能は青森駅前商業ビルへ集約、本計画地には防災機能を中心とした執務空間や市民スペースの新設、と大きな転換があったことが特徴である。
当初、庁舎機能をひとつに集約して青森の気候に配慮した3次曲面の特徴的な建築の提案は、「持続可能性」をテーマに青森の風土から導き出される環境のデザインであった。これに対して、変更後は既存施設を無駄なく活用しながら社会情勢や都市の状況をつぶさに把握して少しずつ更新していく変化を許容する建築が求められた。
計画地は、東西軸(機能)と南北軸(活動)の結節点に位置することから、ひとやものが集まる敷地特性を活かした庁舎のあり方、そして、庁舎の変化(改築、増築)に柔軟に対応しながらも、市民協働の場はその都度変わらない場所となることが大切だと考えた。
建築は都市構成を活かして、東西方向に長い雁行平面によって既存議会棟と執務機能を連続させた機能軸を形成し、将来的な増築の拠り所とした。グラウンドレベルは南北に通り抜け広場を設けることでまちの回遊性を高め、1階のほとんどを市民スペースとしたことと合わせて、市民の気軽な利用を促す活動軸とした。この2つの軸によって、庁舎機能の拡張性を高めつつ、市民協働の場としての持続性を両立させた。
1階のほとんどをひろばとともに市民スペース(サードプレイス)、上階は伸びやかに雁行する執務エリアとしている。
特に上階は高い環境性能を有した快適な空間であり、将来の変化(増築や改修)に対しても、窓際にできるだけ個室をつくらない平面構成、乾式・ユニット化による増築施工しやすいディテール、天井レスによる更新しやすい設備ルートとすることで、機能を維持しながら変化に柔軟に対応できる計画とした。こうした小さな工夫の積み重ねが、将来への選択性を高め、持続可能性へとつながっていく。