池田靖史・下田悠太・林盛による、千葉・館山市の「POP-UP ORIGAMI ROOF」。海辺の地域での相撲の土俵に屋根を掛ける計画。“折り紙の動き”を応用し、膜を引張材としカーボンパイプ等を圧縮材とした“テンセグリティ構造”の屋根を考案。超軽量を活かして人力作業かつ低コストで完成させる俯瞰、南側より見下ろす。(建築家による解説:四隅の柱についたウィンチを4人で回すことで、屋根を立ち上げる。屋根の高さは5,575㎜。土俵の向こうには浦賀水道と沖ノ島が見える) photo©コミヤ写真館
池田靖史・下田悠太・林盛による、千葉・館山市の「POP-UP ORIGAMI ROOF」。海辺の地域での相撲の土俵に屋根を掛ける計画。“折り紙の動き”を応用し、膜を引張材としカーボンパイプ等を圧縮材とした“テンセグリティ構造”の屋根を考案。超軽量を活かして人力作業かつ低コストで完成させる外観、南側より見る。(建築家による解説:起こした状態の屋根。平面から立体を立ち上げる際の折り紙の挙動とテンセグリティを組み合わせた屋根をセルフビルドで建設した) photo©コミヤ写真館
池田靖史・下田悠太・林盛による、千葉・館山市の「POP-UP ORIGAMI ROOF」。海辺の地域での相撲の土俵に屋根を掛ける計画。“折り紙の動き”を応用し、膜を引張材としカーボンパイプ等を圧縮材とした“テンセグリティ構造”の屋根を考案。超軽量を活かして人力作業かつ低コストで完成させる東側より屋根の下の土俵を見る。(建築家による解説:天候に左右されず練習できる環境が整った) photo©コミヤ写真館
池田靖史・下田悠太・林盛による、千葉・館山市の「POP-UP ORIGAMI ROOF」。海辺の地域での相撲の土俵に屋根を掛ける計画。“折り紙の動き”を応用し、膜を引張材としカーボンパイプ等を圧縮材とした“テンセグリティ構造”の屋根を考案。超軽量を活かして人力作業かつ低コストで完成させる屋根架構の詳細(建築家による解説:屋根の動きに合わせて追従可能な屋根頂部) photo©コミヤ写真館
池田靖史・下田悠太・林盛が設計した、千葉・館山市の「POP-UP ORIGAMI ROOF」です。
海辺の地域での相撲の土俵に屋根を掛ける計画です。建築家たちは、“折り紙の動き”を応用し、膜を引張材としカーボンパイプ等を圧縮材とした“テンセグリティ構造”の屋根を考案しました。また、超軽量を活かして人力作業かつ低コストで完成させました。
千葉県館山市の熱心な小学生の相撲サークルと縁があり、手作りの屋外の土俵の上にかける屋根について相談を受けた。
炎天下の日差しの下での練習や、雨で土俵の土が流されるなどの悩みがあるが資金は全く足りないという。
台風も多い海辺の地域でかなり極端な条件だが技術的な研究課題として大学内の仲間で考え始め、軽量な半屋外屋根の最大の敵である吹上げ風荷重に対して耐えるのではなく逃げてしまう方法を思いついた。
立体的な折り紙の動きを応用して、通常時は平らに開いて伏せておいて風雨を避け、使うときにだけ素早く折り起すような屋根なら超軽量でも実現可能だと考えたのである。
最小限の骨組みをパンタグラフのように動かし、伸縮する膜材と湾曲しながら突っ張るCFRPがテンセグリティのような関係になることで、大きく「変形する」ことが前提の構造物になった。ちょうどこれまでデザインのコンピューテーショナルな調整に使っていたパラメトリック・モデリングの方法を、さまざまな部分が連動して全体が問題なく「変形する」仕組みを3次元的に設計するために使うことができた。
こうして最先端の知恵を動員しつつも、施工にあたっては膜材とカーボンファイバーパイプの製作以外はホームセンターで売っている単管パイプと既製品の継手部品を使い、超軽量であることを活かして人力作業だけで組み立てた。平らに伏せた状態で全ての組み立てが終わるため高所作業もなく、その後は自己起立するので仮設的な支持も必要ない。
こうして最小限の材料や工具で非熟練者でも比較的安全に作業でき2日間で完成したことで目標の極限的な低コストを実現した。