


沼田祐子 / YNASが設計した、東京・渋谷区の住戸改修「神宮のスタジオ / 自邸」です。
共用部の光庭や動線が特徴的な集合住宅での計画です。建築家は、外の空間性の内への導入を求め、光を拡散して全体を緩やかに繋げる“曲面壁”を中心に据える構成を考案しました。また、歴史も読み込んだ創造で“住み継ぐ”選択肢の提示も意図されました。
ビラ・セレーナは平面的に十字スリットが入り、4つのヴォリュームに分節することで隣り合った住戸がほとんどないこと、住民共用の光庭を内包しており、建物の裏側と捉えられる内側が黄色に塗られていることが特徴である。光庭は角度のついた外壁と円筒形のEVシャフトによって、各戸の玄関の視線が制御されており、外部の曲がった小道がそのまま続いている感覚になる。
黄色の塗装が見えるスリットの階段を数段上がってたどり着く一室を、建築家とキャスティングディレクター夫婦の自邸兼仕事場として設計した。二人とも仕事とプライベートの境界が曖昧で、その曖昧さを楽しみ、集中したいときには自分の世界に没頭できる場所が必要であった。共用部まで続く動線と空間構成を住戸内にまで引き込むことで緩やかに連なる空間を作った。
曲面壁はコンクリートのグリッドで固くなりすぎる空間に柔らかさを加え、外光を反射し部屋全体を明るく照らす役割も果たす。開口部に面していない水回りや、近づいて初めて見えるスタディエリアの床に色を使い、裏方に色を持たせる共用部の特徴を踏襲した。
曲面壁に誘導された視線の先の開口は向かいの集合住宅のビワの木やテラスに施された植栽が借景になる。早朝には朝日を受けた外装の黄色壁の反射により部屋全体が黄金の光に包まれる。キッチンは無彩色に近いグリーンを使ったシンプルなヴォリュームで室内からも見えてくる共用部の特徴的な黄色を背景として際立たせた。
住戸全体が緩やかに繋がり、外への意識が加わることで、独立しプライベートヴィラのようでありつつも周囲の環境に溶け込むものとなった。周辺環境の特徴と既存建築の歴史を読み込みながら、新たな生活の場を創造することで、一室改修の可能性を最大限に示し、経年した建物を大切に住み継ぐ選択肢を浸透させていきたい。
