写真家・阿野太一の、愛知・瀬戸市での個展「瀬戸 2015」の会場写真です。Art Space & Cafe Barrackにて2019年6月30日まで開催されています。詳細は下部に掲載します。
瀬戸・2015 写真 阿野太一
安土桃山から江戸時代に急速な都市化を迎える瀬戸の中心部は、現在に至るまでその歴史の痕跡を風景の中に見出すことができるが、それは土地の所有が常に彼方/此方を分け続けることで生まれる政治そのものである。
壁、フェンス、パイロン、唐突に接続され分断される私道、かつてあった建物の痕跡、それを覆い尽くしていく草むら、町並みが脈絡なく駐車場や家庭菜園へと姿を変える。一角に「お天王さん」の祠。その一方で山を切り土留し土地を改変してまで宅地の造成を繰り返す。
一見すると非常に混沌とした風景であるが、目を凝らすと実に多くのことが読み取れる。大都市では不動産として主に数字として見られることの多い土地が、ここではその比重が入れ替わり生々しく人が生きる/生きたところとして姿をあらわしはじめる。それが瀬戸の風景の面白さなのではないだろうか。
撮影は2015年のいま頃、ちょうど大金鶏菊が咲いている6月に行った。写真の多くは旧市街地と私が勝手に呼んでいる尾張瀬戸駅を中心とした旧瀬戸村と思われる地域である。その後も継続的に撮影を行っているが、撮り始めた時期の初期衝動的な熱量がよく写真に表れていると感じたので、このBarrackのための構成とした。