


中村竜治(建築家)・花房紗也香(アーティスト)・安東陽子(テキスタイルデザイナー)による「ほそくて、ふくらんだ柱の群れ ─ 空間、絵画、テキスタイルを再結合する」です。
異分野の作家3人が協働して制作しました。建築家は、誰一人欠けても成立しない関係性を目指し、お互いを遠ざけない様に“エンタシス柱”での空間構成を考案しました。そして、安東の制作のクッションが柱を固定し、花房の絵画は分割され柱に巻きつく形で展示されました。展覧会の公式ページはこちら。※この展覧会の会期は終了しています
建築家、アーティスト、テキスタイルデザイナーという異なるジャンルの3人の作家のコラボレーションによる展示です。
アーティストの花房紗也香さんの絵画を鑑賞する展示空間(そこには安東陽子さんのファブリックや私による家具も空間の要素としてある)をつくるというのが企画の五十嵐太郎さんのお題でした。まず私が空間を提案することになりました。
単なるグループ展にならないように、3人が領域を侵食し合ったり、誰か1人が欠けても成立しないような関係を生み出す空間がつくれないかと考えました。そこで、壁による空間構成はお互いを遠ざけてしまうのではないかと思い、細くて膨らみのある柱(エンタシス柱)による空間を提案しました。
絵画展示の難易度は上がりますが、そのぶん花房さんから面白い発想が出てくるのではないかと期待しました。花房さんは1枚の絵を5分割しそれぞれ柱に巻きつけるという方法で、柱の群の中に浮遊するような空間的な作品をつくりました。絵は柱の裏側に回り込むので完全には繋がらず、鑑賞者は絵を観るというよりは脳内補完しながら1枚の絵を徐々に感じるというような空間・時間的体験を生み出します。
一方、ビスの打てない場所に柱をどうやって自立させるかという問題が生まれました。そこで、柱と天井の間にクッションを挟み込みその反発力と摩擦力で柱が倒れないようにするという方法を考え、そのクッションのデザインを安東さんにお願いしました。安東さんは複数の素材を組み合わせ、天井の不陸を吸収しながら適度な摩擦を生み出す、毬藻のように可愛らしく、テキスタイルの可能性を広げる作品をつくりました。