
吉良森子・加藤耕一・連勇太朗による鼎談「マテリアリティの再発見と新しい建築的ラグジュアリー」の動画が、LIXILのサイトで期間限定で無料配信されています。
“オランダを拠点とする建築家”と“歴史的建築の改修に注目する建築史家”を迎えて開催されました。そして、海外と歴史の視点から現代日本の建築家の状況を再考し、未来を見据えた議論が実施されました。閲覧可能期間は2024年2月14日まで(申込締切は2024年2月12日まで)。【ap・ad】
2023年5月末にスタートした特集連載「建築とまちのぐるぐる資本論」。
大きなシステムで駆動する金融資本主義などと違った、人、物、空間を含んだ様々な社会資本がぐるぐると循環する経済モデルについて考え、そうしたモデルの実現に寄与する建築やまちづくりのあり方を見出していくという主旨です。
本連載では、様々な場所へ足を運んで生の声を実践者から聞いている取材とは別に、相対的にかつアカデミックに、あるいは歴史的視座からこれらの状況を俯瞰して見るために鼎談も行っています。
今回は、オランダを拠点にされている建築家の吉良森子さんと、建築史家の加藤耕一さんをお迎えし行われた鼎談の様子を、期間限定で配信いたします。ぜひご登録のうえ、ご視聴ください。
(2023年12月5日 東京大学工学部1号館建築学専攻会議室にて収録)
鼎談内で語られたキーワード(アーキテクチャーフォト編集部が抜粋)
学生時代、建築でお金の話をするのは格が低いことだったが、今はどう活動するのかにお金の話は無視できない / オランダはリーマンショック以降、お金が全てを解決するというニューリベラリズムに変わっていった / 『時がつくる建築: リノベーションの西洋建築史』は、現代の建築家へのメッセージとしても書いた / スクラップ&ビルドではない形でどうやって産業化できるのか / (現代の日本の建築は)質素・倹約の側に行くのが正しいようにデザインされている / モダニズム的な価値観が強く残っているがそれだけが正解なのか / 建築家側の美学とユーザー側の美学のギャップ / 21世紀になって新しい考えが出てきて建築家も進歩しなければいけない / 日本の建築家は組織との住み分けで小さな仕事が多い / 日本の建築家は振り切れているがオランダの建築家は振り切れていない / 東京はラボラトリーであり続けている(90年代のコールハースの言葉) / 何を根拠にデザインすればよいかが分かりにくくなっている時代 / デザイナーが背景化していく / 建築家の美学は現代でどこまで保持できるのか / 建築家がプロフェッショナルとしてデザインすることは消えない / 新しさの部分を生成AIが切り開けるわけではない / 参加型のデザインの方が建築家はやることがある / 建物になるか建築になるかの決定的違い / 建築家はあらゆる情報を集めた中でつくりシンプルな形にまとめる / 住人との対話と協働も職能になりうる / 日本ほど状況に明確に対峙して建築的な答えをだそうとしている場所はない / 日本は制度に守られていないから自分で生き方を考えないといけない / 日本は個々人が土地を持っていて決断権が強くある / 空き家問題が実験場になっている(アムステルダムの空き家率は4%) / 日本はジェントリフィケーションの格差が小さい / 日本には非制度的なセーフティネットがある / 海外では廃材を活用するビジネスが始まっている / 材の循環をどうしていくのか / 2000年前後に美術史と建築史でスポリアの面白さが再発見された / 東大の内田祥三のキャンパス再開発でも明治の建築の部材や基礎を再活用している / 建具等だけではなく構造に使われた材を再利用できると建築の新しい姿が出てくるのではないか / 木造建築だからできるフレキシビリティがある / オランダではリノベーションは建築家の仕事ではない時代があった / スポリアの部材とつくる空間の乖離から面白い形態が生まれたりもしている / 材の再利用の面白さ / マテリアルに対する感性が大事 / 建築教育の再編の必要性 / 今までのロジックがうまくいかないことを学生は感じている / デザインの授業はどうなっていくべきか / 其々の大学が地域の特殊性を取り込むのが大事 / 建築学は確立された世界のように見えるけど全ての領域で考え直さなければいけない / 先生がいて生徒に教えるという時代でもない / 19世紀までの建築家の仕事はラグジュアリーをつくることだった / モダニズム=アンチラグジュアリー / その他