SHARE 堀内功太郎建築設計事務所による”salon du fromage hisada paris”
堀内功太郎建築設計事務所によるパリの レストラン・ブティック・ギャラリー”salon du fromage hisada paris”です。
以下、建築家によるテキストです。
歴史的建造物指定されている建築物の半径500Mを保存地区の指定を受けるフランスにおいて、当敷地の位置するパリ第1区は全域街並みがコントロールされるこの区域に該当する。当敷地の位置するリシュリュー通りは、ルーブル美術館・オペラ座・ロワイヤル宮殿に囲まれ、更なる規制を要求される地区に属する。これら既存建築物に変更を加える際には、ABF(フランス歴史的建造物管理)、PASU(都市計画管理)、Préfecture de Police(警視庁)、Mairie(区役所)等の各規制に適応する必要性があり、また、Syndic(地域住民管理組合)による許可も要する。
日本に22店舗、パリに1店舗を持つクライアントのパリ2店舗目のフロマージュの店舗であるが、年に一度、 Porte de Versailles (フランス見本市)で4日間各店舗が集い催される企画展salon du fromage(サロン・ド・フロマージュ)をパリ中心市街地で個店により常設しようと試みた。来訪客が浮遊するフロマージュの展示等を鑑賞し、散策する。気になるフロマージュを手に取り試食して回遊する。ブティックでフロマージュを購入したり、レストランで様々なフロマージュをそれに適したワインと共に味わうことのできる空間である。
内の中の外
非常に小さな敷地の中で既存建築物を尊重し改修する。既存建築物という内部空間を外部空間に変換させる。外部と内部の境界に位置するファサードを、無数に散りばめたグラデーション状に配置した大小様々な穴を開けた二重のアルミニウムで構成することで内部空間を消去する。外部の空気はそのまま内部の空気となる。行き交う人々は内部の様子を垣間見、フロマージュを体感する人々は外部の様子を垣間見る。フロマージュを扱う環境条件とパリの地域特性から、都市空間に開放した自然環境型の空間を18世紀より継承される既存建築物に介入させた。RDC(地上階)のブティックの外部冷気に包まれた空間とは異なり、上階レストランは上昇した暖気に包まれ、コートを脱ぎ、フロマージュをゆっくりと味わうことのできる空間となる。
各階対角線上に配置された円弧によって切り取り、空間を分節する。その残余空間を主にギャラリーと捉え、展示されたフロマージュを鑑賞しながら、これらの間をぐるりぐるりと回りながらすり抜けるように上階へと奥の空間へと続く。これらの空間は一体的に各種イベント、料理教室、会員制フロマージュ・ワイン会等、レストラン・ブティック・ギャラリー以外の様々な用途に対応し時間によってその変化を見せる。これらの行為が外部とされた既存建築物内からそのファサードを介し、街へとその表情を映し出す。
2009年7月14日 パリ
堀内功太郎