SHARE 特集”ミラー&マランタ”、ヴィラ・ガルバルドの修復と増築 / 2001-2004
ミラー&マランタによるスイス・カスタセーニャの”ヴィラ・ガルバルドの修復と増築/2001-2004″です。 (※ミラー&マランタの特集ページはこちら。)
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以下、建築家によるテキストです。
スイスとイタリアの国境沿いで、マローヤから西へと向かう曲がりくねった道が、カスタセーニャという小さな村を抜けていく。村落のマッシブなファサード群が道沿いに立ち並び、南の都市の雰囲気を感じさせる。
ヴィラ・ガルバルドはそれらとは対照的に、アゴスティーノ・ガルバルド氏の要請で、1862年にゴットフリード・ゼンパーよって簡素なイタリアの住宅のように建てられた。庭の塀に囲まれて、優雅な住宅がワインのパーゴラによって道からの視線を部分的に遮断しながら建っている。地形と植栽が庭を低い部分と高い部分に分けており、豚小屋と倉庫は庭の高い方にある果樹園の奥に、庭の塀から独立して配置されている。この住宅の西側は、リビングから見渡すことのできる庭の低い部分の背景となっているが、後方は内部の構成と既存部分への隣接を反映している。
新築されたゲストハウスは、既存のヴィラに合わせた雰囲気を持っており、かつて倉庫だった部分を取り壊して作られた。果樹園の奥という配置のおかげで、新築部分はメインの建物に対して主張しすぎないキャラクターを保っている。ボリュームは庭を取り囲む塀から生えるようにして建っていて、その高さと細さのために、タワーのような形状になった。それはイタリア北部にあるロッコリというかつて網で小鳥を捕まえるために建てられたタワーを思い起こさせる。建物は庭の高い方の境に空間的な境界となっていて、その不定形なかたちによってこの谷の住宅のタイポロジーに似すぎることを避けつつ、ヴィラに対する従属的な位置づけにとどまっている。この建物はヴィラ・ガルバルドの優雅さを損なうことなく、古い庭の塀とこの村の伝統な建物の特徴を反映しようとした。
この建物に庭から入ると、エントランスホールはミーティングルーム、そして階段によって上のゲストルームに直接つながれている。ミーティングルームは庭に向かって開いており、秋の夜長に暖炉でこの土地の名産である栗を焼くことができて、この建物のリビングのような役割を担っている。上の階のスラブは少しずつずれていてそれを階段がつないでいる。ゲストルームは階段によってつながれて心地良く落ち着けるものとなっており、あたかもそれぞれがよりかかっているかのようである。踊り場の隅にはいすが置かれていて、人と人とのコミュニケーションのきっかけとなることを期待している。最上階では階段が暖炉とイタリアの方向にある谷と山脈への壮大な眺めへと開いていく。
ヴィラ・ガルバルドそのものは、かつては内部空間に豊かな装飾が施されていて、それが今回注意深く修復され必要に応じてわずかに新しい部分が加えられている。シャワーは新たにデザインされたキッチンの上の東側に付け加えられた。また、後からヴィラの後部に付け加えられた別棟は、解体されて元のサイズに戻された。キッチンに接続している大きなダイニングは、丸石を敷き詰められた細長い裏庭に対して開かれ、その組み合わせによって全体として集まることを促す場所となっている。(翻訳:伊藤達信)
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