中村竜治が2019年に完成させた、東京・渋谷区神宮前の「スタジオ兼ギャラリー」の写真と図面が4枚、中村のウェブサイトに掲載されています。
「ギャラリーとしても使えるデザインスタジオ」を設計して欲しいという依頼を受けた。「デザインスタジオとしても使えるギャラリー」と言い換えてもいいかもしれない。「ギャラリーを併設したデザインスタジオ」ではないところが興味深いと思った。異なる機能が重なっているので、いわゆるLDKのように単に各部屋を用意してそれぞれに合ったしつらえをすれば済むというわけにはいかない。場所は表参道と竹下通りの間の比較的静かな所にあり、築45年の鉄筋コンクリート造の建物の1室を改装している。部屋は地面より少し高くなった1階にあり、東西にある2つの道路に面している。壁と天井は壁紙ではなく塗料で白く塗られ、かつてあった間仕切壁の撤去痕が複数無造作に残されていた。一方で床は木目をプリントしたビニールシートで軽薄に仕上げられ、ちぐはぐな空間となっていた。窓は大小7つあり、シルバーのアルミ枠に網入の半透明ガラスがはまっていた。1つ具体的な要望があった。現状ワンルームである空間を透明で音の漏れない可動式の間仕切で2分することである。また、引っ越しが間近に迫っていたため、解体を進めながら施主と共に現場で考え決めていく必要があった。普段の設計と異なり、後戻りのできない決断をその場で即興的に積み重ねていく場当たり的な設計ではあるが、現場での観察と実感に基づいた設計とも言えた。まず、スタジオにもギャラリーにも不向きそうなビニールの床を撤去することから始めた。