ピーター・ズントー事務所でプロジェクトリーダーを務める杉山幸一郎による連載エッセイの最新回「ある1日。」が公開されています。ズントー事務所でのコロナ禍での働き方を紹介する内容です。
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日建設計の山梨知彦と、森美術館特別顧問の南條史生が対話している動画です。
日建設計では、コロナウイルス感染拡大により変わっていく「場」をテーマとして、各界第一人者と建築設計者のスペシャルトーク動画を配信いたします。
第1弾は
南條史生氏(森美術館特別顧問)× 山梨知彦(日建設計チーフデザインオフィサー)による対談です。「AIはゴッホになれるのか!?」
「リアルとアンリアルの境界を壊すアート?」
「二人が思い描く未来の美術館とは?」
…など、これからのアート界を予測する話題をお届けいたします。●COVID-19スペシャルトークについて
都市や建築のみならず、「場」を介してサービスを提供してきたエンターテインメント、飲食などの各業界は、この度の感染拡大により大きな変革を迫られ、今も模索の真っただ中にあります。これまで都市デザインや建築設計を通じて人の集まる空間を提案してきた弊社としましては、これまで以上に、業界を超えてさまざまな分野の方々と知見を共有し、議論を重ねることで、これからの新たな未来を皆様とともに描いてまいりたいと願っております。このスペシャルトークはその第一歩として、企画されました。日建設計は、これらの活動を通じて、今後も、より良い社会に貢献できる環境、都市、建築づくりに努めてまいる所存です。
是非、多くの皆様にご覧いただき、未来に向けた共創の一助としていただけたら幸いです。



鈴木亜生 / ASEI建築設計事務所が設計した、東京・高田馬場のテナントビル「LOAM/高田馬場」です。
高田馬場駅近くの通り沿いに建つテナントビル。
建設発生土としての関東ロームを再利用して開発した関東ローム煉瓦積みファサードが特徴である。未利用な建設発生土の循環利用から生まれた環境ファサードが、収益物件に最大容積確保以外の投資価値を生む指標になることを提示した。今日のSDGs(持続可能な開発目標)が求められる状況下で、都市の収益物件のための開発と建設はどう関わっていくことができるのか。
マテリアルフローの影で建設産業は多くの廃材を生み出している。東京近郊の地盤を掘削すれば必ず出てくる関東ロームは、国土交通省によると工事現場から場外搬出された建設発生土の内、64%は再利用されず不適切に処理され、自然環境や生活環境に大きな影響を及ぼしている。そこで建設発生土としての関東ロームを東京の地域資源と捉え、循環利用を目指した。
先例をつくれば、開発と建設のサステナビリティの向上に少しでも貢献できるはずである。
建設発生土の関東ロームは、製造業者・技術者と協働して試作を繰り返し、関東ローム煉瓦に素材開発した。そして、関東ローム煉瓦積みの環境ファサードを持つテナントビルを実現した。環境へ寄与した計画が収益物件に最大容積確保以外の投資価値を生む指標になることを目指した。



望月蓉平と篠原明理建築設計事務所 / m-saが設計した、茨城・つくば市の美容室「hair salon eto」です。店舗の公式サイトはこちら。
茨城県つくば市の美容室の設計。自動車の部品を販売する店舗の改修工事。
都内の美容室で働いていたオーナーが地元に戻り、自身の店舗を夫婦で開くこととなった。美容室機能に加え、地元の活性のため交流を豊かにする場を作ることも目的のひとつとしており、市街化調整区域の一角に一軒家でかつ外に広がりを持つ敷地を見つけ出した。
一軒家の利点を活かすため、既存の内装を解体し広く多様な空間を生み出すことができるような計画を考えた。内壁の仕上げ=鏡とし、建具の様に鏡が回転することで、ヘアカットをする位置を自在に変えることができるような仕掛けとした。鏡扉を全て閉じると大きな空間が確保できる。鏡を開き角度をつけると囲まれたような空間が生まれ場所を小さく使うこともできる。
使い勝手に応じてスペースを作ることができることで、多様なアクティビティが生まれることを期待している。



松本樹 / 愛知工業大学大学院+白石卓央 / 愛媛建築研究所が設計した、愛媛・松山市の、アート事業の交流拠点「ひみつジャナイ基地」です。施設の公式ページはこちら。愛媛県松山市でのアート事業の一環で建築設計コンペが行われ、日比野克彦、藤村龍至、石川智子の審査によって松本の作品が最優秀作品に選出され、実現したとの事。
四国は松山、道後地区に点在する神社仏閣の一つに、時宗開祖である一遍上人の生誕地と伝わる宝厳寺がある。 道後温泉本館の東、山裾に鎮座する宝厳寺へと向かう「上人坂」は、門前町としての歴史から始まり、夏目漱石名著「坊っちゃん」では花街として描かれ、通称ネオン坂とも呼ばれた場所である。現在ではそれらのコンテクストが薄れる中、社会状況に伴う空き家の点在も起因し、混沌とした空気を纏う場となっている。
本計画案が据えられるのは、その上人坂を登り切った先にある、アールの効いたエッジである。わずか50坪程の土地であるが、向かいにある宝厳寺から見下ろす風景を決定付ける立地条件を持つ。 無論、そこから映るのは歴史的コンテクストのみならず、山裾ゆえ両脇に広がる山々、坂上という立地条件から望む遠景が効いた、デプスを持った風景である。
本拠点が担う役割は、歴史・社会状況・風景という重層するコンテクストを纏う「上人坂の再編」である。薄れゆく歴史への応答、沈みゆく地域社会への鼓舞、連なる風景への責任、それらを“一にして遍き”、土地の真価をアートとしてのスケールを超越した「建築」によって示すこと、地域再編へ向けた多様な活動を内包する「多義的な拠点」を生み出す事が課せられた使命であった。
本提案を創造する手掛かりとして、上人坂を含む道後地区に歴史的拠点として点在する神社仏閣を参照した。既にこの地において、数百年に渡り小規模分散拠点として根を下ろしてきたそれらをメタファーとする事は至極必然な判断であった。取り分け着目し、本提案における建築構成要素のアウトラインとして設定されたのは、破風や緩やかな勾配によって表現される、優美な曲面屋根という形式である。
そして、その形状を定めるのは上人坂の歴史・風景というコンテクストである。 アールの効いたエッジと屋根の外形線の近似、かつての花街としての歴史を匂わせる妖艶なフォルム、周囲の山々に近似するフォルムを近景として添える事で完成する風景という様に、描かれる曲線は私の意思のみならず、歴史・風景との合意形成のもとにある。そのようにして描かれる線は、違わず美しいものである。
トラフのウェブサイトに、Enjoy at Homeをテーマとしたコンセプト展示空間『「間」のある家』の写真が13枚掲載されています。
パナソニックの顧客企業向け展覧会「くらし体感スクエア2020」において、「Enjoy at Home」(~仕事も遊びも、したい時にわが家で~)をテーマに、従来の新商品展示にとどまらない、新たなくらし方を予感させるコンセプト展示空間が求められた。
普段の働き方がリモートワークへ変わり、働く場所を選ばない利便性を感じるようになった一方、家での行動は多様化して、在宅時間が長くなり、公私が区別しづらくなった。そこで、予防医学研究者の石川善樹氏と協同で、モードを円滑に切り替えられる「間」と名付けた余白の空間を持つ家のモデルを提案した。 中央に「間」を置き、その周囲に特定の機能を持たせた個室を配した。個室はフィットネスを兼ねた書斎や、趣味を楽しめるトイレなど、その役割だけに留まらない居場所にもなっている。中央の「間」は、ドアを介してそれら居場所を行き来する導入部となり、生活者のモードを切り替えるための時間的・空間的な余白として機能する。手洗いをしてから入室する参道のような玄関、ジョギングコースにもなる軒下、内外がつながるダイニング、シアター専用ルーム、眠りに特化した寝室など、新しいノーマルとして遊びも健康も意識した家となる。
「間」を置くことで、社会とつながったり、趣味の世界へ入り込んだり、いろいろなモードを気持ちよく切り替えて横断しながら、日々の生活を楽しくアップデートできることを目指した。

アーキテクチャーフォトで、先週(期間:2020/11/2-11/8)注目を集めたトピックスをまとめてご紹介します。リアルタイムでの一週間の集計は、トップページの「Weekly Top Topics」よりご覧いただけます。
- 藤本壮介による、群馬・前橋市の宿泊施設「白井屋ホテル」。新築のグリーンタワーと既存改修のヘリテージタワーの二つの個性的な空間が完成
- 辻琢磨による連載エッセイ “川の向こう側で建築を学ぶ日々” 第6回「少しずつ自分を過小評価して仕事を取る建築家」
- 門内一生 / CAPDによる、広島市の住宅「PIVOT SHELTER」
- “建築と今” / no.0003「長谷川豪」
- 竹味佑人建築設計室+武井光による、東京・北区の、マンションの1室のリノベーション「羽の家 / wing room」
- 西村浩 / ワークヴィジョンズ+竹味佑人建築設計室+黒岩構造設計事ム所による、熊本市の、公衆浴場併用住宅「神水公衆浴場」
- 鈴木将記 / 鈴木将記建築設計事務所による、千葉・市川市の、集合住宅の住戸改修「引戸の家」
- 安藤忠雄の設計で完成し2020年10月に開館した、中国・広東省の美術館「He Art Museum」の高クオリティな動画
- MVRDVの設計で完成した、フランス・パリの、ランジェリーブランドEtamの旗艦店「Etam Paris」。19世紀の既存建物に敬意を払いつつ床をガラスにするなどの大胆な操作で改修
- 古谷誠章+NASCAによる、北海道・沼田町の、高齢者福祉施設「沼田町 暮らしの安心センター」
- 田根剛へのインタビュー『建築の「主役」は誰なのか。』
- 岸本貴信 / CONTAINER DESIGNによる、兵庫・姫路市の住宅「阿成の家」
- 2020年度のグッドデザイン大賞等が発表。金賞には建築分野から「まれびとの家」「延岡駅周辺整備プロジェクト」「ソーラータウン府中」等も選出
- 坂野由典 / 坂野由典建築設計事務所による、山口・周南市の、カーディーラーの展示スペースとプレゼンテーションルーム「LEXUS SHUNAN CPO」
- 野路敏之 / 野路建築設計事務所による、福井市の住宅「宝永の平屋」
- 望月蓉平と篠原明理建築設計事務所 / m-saによる、東京・千代田区の店舗「スキンケアストア」
- 経済産業省が建築物と内装で初めて意匠登録が行われた事例を紹介。藤本壮介によるユニクロパーク、佐藤可士和によるくら寿司の意匠も含まれる
- 日本ペイント×architecturephotoコラボレーション企画 “色彩にまつわる設計手法” / 第4回 加藤幸枝・後編 「色彩を設計するための手がかり② 藤原徹平『クルックフィールズ シャルキュトリー棟・ダイニング棟・シフォンケーキ棟』、原田祐馬『UR都市機構・鳥飼野々2丁目団地』」
- 日本建築学会の『建築討論』が写真家の長谷川健太を特集。長谷川へのインタビューに加え、大山顕・鈴木淳平・後藤連平・和田隆介が寄稿
- TOTO通信の2020年秋号「特集:変容する住宅たち」のオンライン版がが公開。篠原一男の「谷川さんの住宅」、本野精吾の「本野精吾邸」等の継承のされ方をレポート


岸本貴信 / CONTAINER DESIGNが設計した、兵庫・姫路市の住宅「阿成の家」です。
兵庫県姫路市、間口6m奥行25mの東西に細長い敷地に計画された。
東には市川が流れ、市川の上空を流れる風を敷地に引き寄せる事を考えた。



望月蓉平と篠原明理建築設計事務所 / m-saが設計した、東京・千代田区の店舗「スキンケアストア」です。
スキンケア商品を扱うブランドの初店舗の設計。
これまではweb上での販売をメインにしていたブランドだったが、顧客との距離をより近くするために、対面によるカウンセリングや、ブランドのイメージを発信できる実店舗を設けることとなった。計画は実店舗の更に前身となるポップアップストアの設計から始まった。
ポップアップストアでは、ブランドイメージを発信するためのキーマテリアルを決めることから始まった。ブランドで使用する茶瓶を砕いて再利用しマテリアルのひとつとしたほか、溶岩石、真鍮などを混ぜこんだ人造大理石を作成した。実店舗での利用を待ち構えた素材をストックすることをイメージしたキーマテリアルの素材ストックに加え、ポップアップストアとして仮設性を考えた結果、素材同士を重ねつつ、お互いの自重を委ねながらバランスをとっているような乾式の什器となった。
実店舗では、ポップアップでストックした素材を敷地に運び改めて空間を再構成した。積まれていた人造大理石は床材として利用。実現した空間には小さな歴史ができたと考えている。


公益財団法人 文化財建造物保存技術協会の、文化財(建造物)活用のための調査・計画・設計監理を行う人材募集のお知らせです。詳しくは、ジョブボードの当該ページにてご確認ください。アーキテクチャーフォトジョブボードには、その他にも、色々な事務所の求人情報が掲載されています。
新規の求人の投稿はこちらからお気軽にお問い合わせください。
文化財(建造物)活用のための調査、計画、設計監理までを行う人材を募集しています。
近年、文化財の活用に対する関心が高まる中、当協会においても、旧富岡製糸場西置繭所(2020年に工事完了)などを筆頭に、文化財を保存していくための修理や耐震補強と一体となった整備活用に関わる業務が増加しています。建物の価値を尊重しながら、次の世代へつなげていくために、どのように建物を保存・活用していくか、一緒に考えていく人材を求めています。
文化財(建造物)の活用に関連する、調査・計画・設計・監理が主な業務です。
建物調査などリサーチの比重も大きいです。少人数の部署(現在4名)ですので、はじめは内部で進行を確認しながら仕事を覚えていただきます。ひとつのプロジェクトの期間が長いので、じっくり仕事に取り組んでいただけます。
また、全国各地の文化財が対象となりますので、土地に根差した文化財を通して、その土地固有の歴史に触れることができます。

本記事は学生国際コンペ「AYDA2020」を主催する「日本ペイント」と建築ウェブメディア「architecturephoto」のコラボレーションによる特別連載企画です。4人の建築家・デザイナー・色彩計画家による、「色」についてのエッセイを読者の皆様にお届けします。色彩計画家、加藤幸枝氏担当の第4回目後編は建築家の藤原徹平氏、アートディレクター / デザイナーの原田祐馬氏の作品を測色し、判断の根拠を推測していただきました。
色彩を設計するための手がかり②
藤原徹平「クルックフィールズ シャルキュトリー棟・ダイニング棟・シフォンケーキ棟」
原田祐馬「UR都市機構・鳥飼野々2丁目団地」
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つながりをつくる素材・色彩/藤原徹平「クルックフィールズ シャルキュトリー棟・ダイニング棟・シフォンケーキ棟」
千葉県木更津市にある、体験型の複合施設です。30haもの広大な敷地の中に、農園や養鶏場・アート展示やレストラン・宿泊施設などが集積しています。
藤原氏率いるフジワラボによって設計された主な施設は、シャルキュトリー(食肉加工・販売)棟・ダイニング(レストラン・カフェ・ベーカリー)棟・シフォンケーキ(製造・販売)棟の3つです。シャルキュトリーは鉄骨造、他2つは木造で、外装にはそれぞれ自然素材が使用されています。
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外装色を測ってみたところ、シャルキュトリー棟の鋼板は10R 3.0/3.0程度、鉄骨部分の錆止め塗装は10R 3.0/8.0程度でした。色相(色合い)と明度(明るさ)は同じで、彩度(鮮やかさ)のみが異なります。鋼板の広い面は彩度が低く、鉄骨の線材はやや彩度があり、この面積比の効果もあって2色(素材)の違いはさほど意識されません。さらにシャルキトリー棟は軒が深いため、少し距離を置くと外観はぐっと暗さを増し、スレンダーな平面形状を連想させる屋根面が明るく引き立って見えました。
設計を担当されたフジワラボのスタッフ、中村さんにお話を伺ったところ、シャルキュトリー棟は小規模ながら食品を扱う「工場」であることから内部空間を清潔に保ち、フレキシブルな設計ができる鉄骨造が選択され、加工肉の血肉のイメージからも自ずと鉄(色)が選定されたのだそうです。



MVRDVの設計で完成した、フランス・パリの、ランジェリーブランドEtamの旗艦店「Etam Paris」です。19世紀の既存建物に敬意を払いつつ床をガラスにするなどの大胆な操作で改修が行われています(ガラス床は、真上や真下から見ると曇る特殊なフィルムが貼られていてプライバシーが確保されるのだそう)。
この店舗は、オペラ座ガルニエに近いパリの一等地をの建物に存在しいています。19世紀のオスマン様式の建物を改装し、内部の障壁を取り除き、ガラスの床を追加して室内に光が入るようにしています。デザインでは、歴史的建造物への敬意と保存への取り組みが、予想外のユニークなショッピング体験を実現しています。そして、展示されているランジェリーのように、この店は露出度が高く、同時に親密な雰囲気を醸し出しています。
最も印象的な変更点は、地上階にガラスの床を設けたこと。これにより、地下階まで光が入り込み、訪問者は上下の階で商品や人を見ることができるため、この店舗を訪れる人を魅了する体験を提供することができるのだそう。そして、このガラス床には、斜めから見ると透明になり、真上や真下から見ると曇る特殊なフィルムが貼られており、ガラスの床に立つ人にはプライバシーを確保し、めまいを防ぐことができます。これは展示されているランジェリーを直接的に連想させるものであり、露出度が高く、かつ控えめな印象を与えることを意図したとの事。
中央に地下に降りる大階段があります。この階段、地下1階と地上階の床は、19世紀のパリで広く使われていた石畳の道「pavé en bois debout」にインスパイアされた淡い色の木材を端に敷き詰めて仕上げられています。このフローリングから生まれた模様は、ガラス床に施された滑り止めの模様にも発展し、2つのフローリングが一体化させることに寄与するとの事。
このプロジェクトでは、保存と再生が同時に行われていることを示す代表的な例があるそう。それは、建物の内部を解体する際に、建物内の元々の壁の一部。この歴史的な要素が保存に値することに疑問の余地はなかったそうですが、MVRDVのオープンなフロアプランのコンセプトの中で重要な障害となっていました。結果としては、アーティストのゴードン・マッタ=クラークの作品からインスピレーションを得て、デザインチームは石の専門家と協力して、壁の部分を5トンの回転式の「出入り口」に変換し、店舗のフロアプランの開放性を維持しながらも、歴史的な壁を元の場所に簡単に移動させられるようにデザインしたのだそう。
TOTO通信の2020年秋号「特集:変容する住宅たち」のオンライン版が公開されています。篠原一男の「谷川さんの住宅」、本野精吾の「本野精吾邸」等の継承のされ方をレポートしています。



野路敏之 / 野路建築設計事務所が設計した、福井市の住宅「宝永の平屋」です。
春は桜、夏は百日紅、秋はヤマモミジ、冬は雪化粧。表情豊かに四季を楽しませてくれる母屋の庭に、どんな建築なら受け入れてもらえるだろう。そう考えながら計画は始まりました。
母屋は敷地が約360坪あり南北に長く、その半分以上が池泉庭園になっていました。池を囲む木々の太い枝は広く空を覆っていて、その雰囲気は年月を経てきた安心感に包まれています。計画は母屋敷地の一部を利用した平屋とし、屋根の形もできるだけその存在を薄くするために寄棟とすることとしました。必要な諸室を納めていき、屋根の形も二つの方形が雁行する形態としました。インテリアも方形の屋根構造と地域材の表情を生かし、家族の集まる場に求心性を持たせています。



鈴木将記 / 鈴木将記建築設計事務所が設計した、千葉・市川市の、集合住宅の住戸改修「引戸の家」です。
日本の建築には昔から引戸が多く用いられてきた。日本の建築には縁側空間があり、日本人は雨戸や障子といった引戸を活用し、外部の自然や人との繋がり方をコントロールしながら暮らしてきた。このように外部環境との繋がり方をコントロールする装置を、集合住宅の住戸内でも活用することはできないだろうか?そんな考えから今回の改修プランは検討された。
ごく一般的に言って、集合住宅の住戸内廊下は暗く閉鎖的である。これは宿命と言っても過言ではなく、限られた採光は居室に割り当てられ、住戸内廊下は無採光でスペースは最小化されるためである。今回の改修前住戸には、そんな住戸内廊下に対して、合計5つの開き戸が付いていた。 開き戸は開くか閉じるかはっきりした建具であり、どちらかと言えば閉じている状態が通常で、閉じた部屋を一時的に通行可能にする建具であると言えるだろう。扉を開ければその分部屋や廊下のスペースを使い、閉じている方が空間はすっきり見える。
これに対して引戸はどうだろうか。平面図では一次元的な枠の中で、開いても閉じても扉に使うスペースは枠内に納まり、引き込み戸や雨戸のように、開いている状態を通常とする場合も多く、完全に開又は閉の状態に加えて、外の音が聞こえるように少しだけ開けたり、視界をコントロールするため少しだけ閉めたりと、周辺環境との様々な繋がり方をつくり易い特徴がある。開き戸に比べて、開くことと閉じることの境界は曖昧にされ、こちら側と向こう側の距離感をコントロールできる。言わば、繋がり方の調整弁の役割を果たすのである。
安藤忠雄の設計で完成し2020年10月に開館した、中国・広東省の美術館「He Art Museum」の高クオリティな動画です。制作は一条。こちらのページには竣工写真が15枚掲載されています。