塩入勇生+矢﨑亮大 / ARCHIDIVISIONが設計した、東京・杉並区の住戸改修「誰かの部屋 #105 ポールダンサーの部屋」です。
築古住戸の価値向上を目指した計画です。建築家は、ポールダンサー入居の想定に対し、新設の“コンクリートの列柱”を挟んでステージと住まいの機能を並列させる構成を考案しました。そして、列柱の身体性でダンサーの精神に見合う秩序を作り出すことも意図されました。
築50年を超える全14戸の賃貸住宅のうち、105号室を改修した。
クライアントはこの建物のオーナーで古い躯体の質感を好んでおり、スケルトンに解体し、その状態を活かすことで築古の住戸の価値を引き上げることを要望した。
105号室では、クライアントであるオーナーから特殊な2つの要望が求められた。ひとつはポールダンサーが住める部屋を作ること。ただし入居者が決まっているわけではない。もうひとつは個人的に保有していた大量の強化ガラスを使いたいということだった。
踊りの身体性と住まいとの共存を考える。ポールダンスには、半径1500mmの広さが必要である。ポールの他方にベッドやテーブルが置ける広さを確保すると、ステージと住まいの機能が良いスケール感で並列することに気が付いた。私たちはその間に、コンクリートで列柱を作った。
列柱といえば古代ギリシャのオーダーを想起する。室内に打設した180mm角の列柱が体現する力強い身体性が、ダンサーの精神に見合う秩序になり得ると思った。列柱間にはキッチンやベッドを置くための腰壁を作り、更に通路部分を抜く。主な通路の腰壁には隅切を設けて間取り全体の流れと、均斉をもつ形を作った。強化ガラスは、部屋の奥半分に床として敷き詰め、残り半分である玄関から地続きのキッチンや水廻りや収納エリアは、既存モルタル直均しのままとした。