


石黒泰司+和祐里 / アンビエントデザインズが設計した、広島の介護老人保健施設「計画と雰囲気」です。
この空間を最も印象づけているものは曲線を描く天井の垂壁であると思う。ただし、地域の介護環境の強化という名目で、行政の採択事業としても実施されたこの介護老人保健施設の改修工事においては、20床の増床が主題であり、この垂壁の存在はまったくもって重要ではない。
さらに言えば、この垂壁は空間において機能的な意味をまったく有していない。
いや、正しくは機能的な意味が失われた物質であった。この垂壁は計画当初、「柔らかい空間」という施主の要望を基に、間接ライン照明を仕込み、サインを取付ける予定であった。つまり照明器具であり、サインであり、防煙垂壁でもある、という機能的な意味を与えられたものであった。そのため、平面計画に重ねる、第2の平面計画として、慎重に形状などの検討が進められた。
プロジェクトが進むにあたり、潤沢とは言えない予算の都合上、照明器具は中止となり、サイン計画も縮小され、素材も防煙垂壁としての用をなさない安価なものへと変更を余儀なくされた。
設計者としてはとうとう別の方向性を考えねばならないのではないかと思案したが、施主はこの垂壁を中止することを決して選択することはなかった。垂壁がなくなることで、対話のなかで共有されてきた空間の雰囲気が失われてしまうことを理解していたのだ。









