
書籍『特集:MARU。 Architecture 高野洋平+森田祥子 KJ 2016年4月号』をプレビューします。
私たちはいつも、どうしたら住まい手や使い手が空間を自分のものとして認識してもらえるかに腐心します。その建築や空間に愛着を抱き、使いこなしてもらうきっかけとなるからです。それはお気に入りの家具を置くだけで良いかもしれません。もたれかかった柱が落とす影のかたちによるのかもしれません。厳重な鍵が必要な場合もあります。一滴の光も漏らさないことも求められます。様々な因子を通じて、人は空間を自分のものとして獲得することができます。
私たちはこの空間の獲得の過程を「パーソナライズ」と呼んでいます。ウェブ用語では「ユーザーに最適化されたカスタマイズ」を意味しますが、どちらかというと、本来の「個人化」に近いニュアンスです。建築家に提示される要望は、クライアントが空間を「パーソナライズ」するためのヒントになります。
一方、クライアントからの要望をはじめとした様々な条件が与えられたときに、私たち建築家はそれを咀嚼分解し、自分たちの建築作品として再構築します。これは作り手による「パーソナライズ」です。使い手による空間の「パーソナライズ」と作り手による空間の「パーソナライズ」、2つが重なり合って、建築のアイデンティティが生まれます。
すべての建築を貫く大きなテーマを掲げていない私たちは今、目の前に現れた課題が、自分の系譜を前提とした思考をそれぞれに通過することだけによって、どうにか生み出す空間を「パーソナライズ」しています。ここから描かれていることは、私たちの系譜や思考の断片です。突如として現れた「MARU。Architecture」ってなに?という疑問に対して今の私たちを伝えるには、2人の思考を一緒に辿ってもらうことが一番手っ取り早いだろうと考えました。似たような言葉で全然違う事を言っていたり、同じようなことを繰り返したり、拙いですが、私たち2人が違う思考で同時に存在していることも感じてもらえると嬉しいです。
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