成田和弘+成田麻依 / kufuが設計した、広島市の、住宅兼ギャラリー「tobe」です。
祖母宅に隣にアートを集める施主家族の為に計画されました。建築家は、祖母との繋がりとギャラリー運営を考慮し、住宅側の全面が開口部で多様な性質の部屋が並列する建築を考案しました。また、既存建物の景色の維持を意図して“視線の抜け”も作られました。
お施主さんからの要望は所有するartと暮らす。artで生きる。
加えて高齢になったお施主さんのお祖母ちゃんと同居し、ひ孫とも生活を共にすることで元気にしたいという要望もあった。敷地は広島市内の住宅街。お祖母ちゃんが所有する土地には3階建てのアパートが建ち、1・2階はお祖母ちゃんが生活、3階は賃貸として別の家族が生活している。周囲には小道が走り、狭いわりには地域の人の生活動線として常に人通りがある。お祖母ちゃんとの距離感、これからのギャラリー運営、生活リズム、色々と打合せをしていくうちに、お祖母ちゃんとの同居は新しく別棟増築という解答に至った。
まず本建物はこの小道に沿ってお祖母ちゃんのアパートを抱え込むように配置した。
アパートに対しては全面掃き出し窓とすることで、建物からはお祖母ちゃんを見守ることができて、お祖母ちゃんはどこからでも入ってくることができる。また小道に対して圧迫感を与えないように、建物の外殻を各部屋ごとのスケールまで落とし込み、更に部屋の間に隙間を設けることで、視線の抜けと、街に対してartを開くような余白を設けた。
既存棟のお祖母ちゃんの寝室窓からの景色はできるだけ変えないために、増築側にも今まで通りの視線の抜けを作った。毎年春に咲くピンクと白の2本のハナミズキも残した。お祖母ちゃんとの生活の距離感を、くねくねデッキの形状で建築的に落とし込んだ。既存と増築の建物間にある内外の境界を曖昧にすることで、別棟だが同居しているような、光も景色も透す薄いカーテン一枚の距離感を実現させた。
家の中でギャラリーを営む際に、プライベートな生活用途であるトイレやキッチン、浴室にもartを添えてギャラリーとして開放していく想定なため、全ての部屋がartの背景として機能する必要があった。そのため、どうしても用途が変えられないこれらの部屋以外の、他の各部屋には特に用途を決めず、光であふれる部屋、左右対称の部屋、天井がとんでもなく高い部屋など特徴のみを与え、できるだけ並列な展示空間とし、それらを外廊下で繋げた。