SHARE 松井亮建築都市設計事務所によるヘアサロン”ティエラ”
以下、建築家によるテキストです。
ティエラ
このヘアーサロンは東京の都心にあり、カットエリアやシャンプーエリア、ヘッドスパルームなどから構成されたヘアーサロンです。一般的にヘアーサロンには、通常の建築空間ではあまり目にしないほどの鏡が必要とされます。この特殊な条件に着目し、「鏡」を空間構成の主な要素の1つとして扱うことで、機能に支配された空間ではなく、機能を素材として扱うことができないかと考えました。
まずはじめに、それぞれの空間に必要な「鏡」を、建築の部位の1つである建具や開口部と同等に扱うことにしました。その形状は開口部を象徴するアーチ型に統一することで、鏡としての存在が消え、あたかも隣り合う空間が連続するかのような回廊が広がります。人を映すだけの目的であった鏡は、その存在を消し、空間そのものを映し出す建築の一部になっています。人は鏡に映る自分を見るのではなく、空間の中に映る自分を見ることができ、より自然に自分と向き合えることができます。
壁や天井を覆うマテリアルは、土や骨材などを含ませた特殊な塗装仕上げになっており、鏡と相反するテクスチャーは、アーチの輪郭をより際立たせています。また、鏡の輪郭を少しずつ変化させて空間に点在させることで、「反射」というマテリアルに多様性を持たせています。このサロンは「鏡という機能」=「反射という素材」と読み替えることで空間を構成し、素材の持つ感覚的な現象を利用した新しい提案を試みています。