SHARE 宮城竜紀による”カフカ小説の家”
宮城竜紀が設計したニューヨーク郊外の”カフカ小説の家”です。
以下、建築家によるテキストです。
カフカ小説の家 Villa Metamorphosis
この作品の題名は”変身”から来ている。この小説のように、この建築作品はもともと平凡であった家がある日突然グロテスクかつ詩的な真っ黒な家に変身したという過程をあらわしている。
この家は米ニューヨーク郊外の避暑地ウッドストックの近くにある。家は北は山脈に面しており南は平野と湖に面している。西と東は隣接する家に面している。これは1960年築の家の改装、増築である。西には4つの半透明のルーバーが、東には3つの曲線のスカイライトが増築され、これらは光を吸収すると同時に隣からのプライバシーを保っている。
この家以外にも”孤独の家”、”スカイ ミラー”、”ゲイト タワー”などの構造物が庭につくられている。家を含めたこれらの作品群の個々の形、スケール、位置はこのランドスケープの特有性をいかにして建築として再定義するかという課題から考慮されてデザインされている。一見、非常に個人的な言語でつくられた彫刻のように見えるがこれらの構造物は東西の隣の家からのプライバシーを保つと同時に家からの望ましい景観を強調するという役割をもっておりあくまでも基本的、普遍的な建築のテーマに従ってつくられている。
この土地のあらゆる場所を歩きまわると刻々と視覚的、空間的にイメージが物語りのように変わる。作品全体としての造形言語の一貫性を保ちながらも、どの場所も似たような空間ではなくそれぞれの場所が他とは異なった体験となるように空間のヒエラルキーをつくっている。建築家はこの手法を”図形的神話のランドスケープ”と呼んでいる。
宮城竜紀、建築家 平成22年3月、東京