SHARE 平井充+山口紗由 / メグロ建築研究所による、東京の住宅「重箱ハウス」
平井充+山口紗由 / メグロ建築研究所が設計した、東京の住宅「重箱ハウス」です。
この住宅の住まい手は母親と息子夫婦の3人家族である。3人とも異なる職場を持ち、普段は外にいる時間が長く帰宅時間も遅い、極めて現代的な生活スタイルである。3人が集まるのは週末だけであることから、この住まいには安心感があり、まちへ出ることを前提とした拠点としての居場所を求めた。
敷地は都内の密集住宅地であり、北側接道で隣地にマンションのバルコニーやアパートの廊下などが迫っている。さらに北側の道路の向いにも南向きの3階建の住宅が建つ。そこで、自分の居場所の周りに、周囲との関係性や距離感をコントロールできる場所と仕掛けを巡らせることで、確かな住まいの場をつくりつつ、近隣共に気配を共有できる新しい仕組みを提案した。
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以下、建築家によるテキストです。
この住宅の住まい手は母親と息子夫婦の3人家族である。3人とも異なる職場を持ち、普段は外にいる時間が長く帰宅時間も遅い、極めて現代的な生活スタイルである。3人が集まるのは週末だけであることから、この住まいには安心感があり、まちへ出ることを前提とした拠点としての居場所を求めた。
敷地は都内の密集住宅地であり、北側接道で隣地にマンションのバルコニーやアパートの廊下などが迫っている。さらに北側の道路の向いにも南向きの3階建の住宅が建つ。そこで、自分の居場所の周りに、周囲との関係性や距離感をコントロールできる場所と仕掛けを巡らせることで、確かな住まいの場をつくりつつ、近隣共に気配を共有できる新しい仕組みを提案した。
囲われた外部=余白
2,3階の生活の居場所の周りは、1m前後のスペースで二重に囲い、西側に上下動線や機能的な部分をまとめ西陽を緩和し、残りを「囲われた外部=余白」としている。この余白に室内は解放され、風や光、そして雨といった自然要素が介入して快適性を担保する機能をもちつつ、気兼ねなく外部との接点をもつためのバッファーゾーンとして機能している。さらに、余白の外側のパラペットと室内側の壁の開口部の高さをコントロールすることで近隣と視線がかち合わず、カーテンやブラインドのような遮蔽物を必要としない室内の広がりを獲得している。また、このパラペットに穿たれた小さな窓の外の開口部は、この建築の多層性を感じさせる要素であり、躯体断面を鋭角に削いで遠方の樹木を引き寄せている。このような環境をコントロールするための装置となっている。
襞を作り出す外皮
外観の特徴となっているセットバックした壁面は、3階建てのヴォリュームの圧迫感を軽減し、ひしめき合う近隣の地上に陽光を落とすことになった。外部仕上げは、1階と2階パラペットのRC造を打放し、2階,3階の木造を金属サイディングとし、上部になるにつれて素材感を希薄にしている。素材は異なるが、いずれもプレーンな仕上げであるため、北向きの外壁に周囲の陽光を受けた風景が淡く映り込み表情を持つ。また、住宅街の高台へ登る坂道の上という立地に、その起伏を捕捉するような佇まいにもなった。外周部の襞からは、時折人の姿や気配が感じられ、日が沈むと生活の明かりが漏れて各階の外壁を浮かび上がらせる。アイレベルから見える外壁面のプロポーションと開口部の位置の検討は厳密に行なった。襞を纏った外皮は、威圧感を与えずに内外の様子をリフレクションする装置として機能する。
骨格と空間
駐車場の間口を確保するため、2階バルコニーのパラペットを大梁としたカンティレバーで持たせたRC造とし、2,3階を木造として軽量化し、重心を対角線上の反対側にずらしてバランスさせた構造としている。また、木造部は、短辺方向にホームコネクターを使った大筋交いで合成を持たせて、筋交いや構造壁がない大きな開口部を実現させている。この2,3階は、ワンルームであり、3階のクローゼットを置き家具とすることで、将来の使い方に対応したフレキシブルな空間としている。
コロナ禍に際して
この住宅は、リビングやダイニング、寝室のほかに、1階のホールに第3の居場所を作っている。このホールは、土間のような場所となっており、仕事や趣味ができる場所となっている。コロナ禍においては、テレワークの場所として活用されている。必要な時以外にオフィスに通わなくなった家族は、住まいをベースとしながら生活している。これまでも私たちが設計してきた住まいには、LDKや寝室以外にも、第3の居場所をつくることを考えている。これは日常の行為に居場所の選択性を増やすことが、心身ともにゆとりを与えてくれるものだと考えているからである。これは広さの大きさに関係なく、PC作業や読書をしたり、スマホを眺めたり、生活のちょっとした場面を補完する場所である。名前のない多焦点な居場所があることが、これからの住まいに必要だと考えている。
■建築概要
工事種別:新築
所在地:東京都
設計:メグロ建築研究所 平井充+山口紗由
構造設計:寺戸巽海構造計画工房
設備設計:
電気/ルナ・デザイン・ラボ 高橋寛、
設備/環境デザインエイアンドエヌ 長山幸代
竣工:2017年3月
施工:平野建設 萩原保夫
構造:RC造+木造
敷地面積:126.87㎡
建築面積:69.92㎡
延床面積:136.99㎡
写真撮影:鳥村鋼一、畑拓
種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) |
---|---|---|
外装・壁 | 2階外壁 | ガルブライト Jフッ素(アイジー工業) |
外装・壁 | 3階外壁 | 鋼板スパンドレル(タカサゴパネル) |
外装・建具 | 建具(RC部) | |
外装・建具 | 建具(木造部) | |
外装・その他 | 樋 | |
内装・床 | 1階床 | 磁器質600角タイル貼り(平田タイル) |
内装・床 | 1階床・3階床 | オークフローリング(IOC) |
内装・床 | 2階床 | チークフローリング(IOC) |
内装・壁 | 一般壁 | 珪藻土クロス貼り(東リ) |
内装・壁 | 洗面脱衣室・浴室壁 | 陶器質タイル200×100貼り(ダントー) |
内装・天井 | 天井 | 珪藻土クロス貼(東リ) |
内装・キッチン | キッチン | オーダーキッチン、キッチンキャビネット(CUCINA) |
内装・水廻り | 洗面器・水栓 | (ADVAN) |
内装・浴室 | 浴室 | ハーフユニットバス(TOTO) |
内装・設備 | エレベーター | 0812パーソナルE(パナソニックホームエレベータ) |
内装・設備 | ルームエアコン | (ダイキン) |
内装・照明 | 室内照明 | |
外構・照明 | 屋外照明 |
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