緒方洋平+緒方春 / OGATAYOHEIが設計した、東京・豊島区の住宅「Honest house」です。狭小敷地において、各空間を立体的に配置することで視線が抜け、空間を広く知覚させます。また、構成上求められた構造体のバットレスは日射負荷抑制にも寄与します。
本計画の敷地は東京の都市部の住宅地に位置する。
都心では再開発により敷地が統合され巨大な構造物が増え続ける一方で、住宅地では土地の細分化が進む。
この敷地も細分化された敷地の一つであり、40㎡程しかない。細分化された近隣の敷地には規格化された木造住宅が建ち並ぶ。
南側には神田川が流れ、川沿いの落葉樹である桜並木により四季を感じることが容易な土地だ。また、南側の建物との間が広く空いているため、冬でも日陰になることが少ない日当たりのよい場所である。
視線の広がりによって空間を広く感じさせるために、平面的には階段を建物の中央部に設け、風呂場やランドリーからなる従空間と居間や寝室からなる主空間を対角に配置した。
各空間を立体的に配置することで縦方向の視線の広がりの確保を目指した。
立体的な床構成の為に生じる構造的な問題を解決するために、外部に構造体のバットレスを設けた。
このバットレスは南側外壁に設けた庇と併せて建物に影を生じさせ、夏季の日射負荷を本質的に抑制する。
冬季には太陽高度により影の面積が減り、南側外壁全体を蓄熱壁として利用することで暖房にかかるエネルギーの抑制を図った。
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以下、建築家によるテキストです。
設計コンセプト
人を包み込む、おおらかで落ち着きのある空間。
季節や天候や時刻によって多様な表情を持つ空間。
この場所、この敷地でしか成り立たない空間。
人、環境、地球の変化に応じて成長する空間。
これらは今回神田川沿いに建つ都市型狭小住宅の目指した空間です。
人と環境と建築の在り方に立ち戻ることで、陽の光、水の音、風の匂いを感じ取り、変化に柔軟で、経験を共に積み重ねる柔らかい構造体に包み込まれる空間を造りました。
敷地
本計画の敷地は東京の都市部の住宅地に位置する。
都心では再開発により敷地が統合され巨大な構造物が増え続ける一方で、住宅地では土地の細分化が進む。
この敷地も細分化された敷地の一つであり、40㎡程しかない。細分化された近隣の敷地には規格化された木造住宅が建ち並ぶ。
南側には神田川が流れ、川沿いの落葉樹である桜並木により四季を感じることが容易な土地だ。また、南側の建物との間が広く空いているため、冬でも日陰になることが少ない日当たりのよい場所である。
構成
視線の広がりによって空間を広く感じさせるために、平面的には階段を建物の中央部に設け、風呂場やランドリーからなる従空間と居間や寝室からなる主空間を対角に配置した。
各空間を立体的に配置することで縦方向の視線の広がりの確保を目指した。
1階は洞窟のようなアプローチ空間とゆとりのある玄関を計画した。この玄関は洗い出しの土間空間とし、坪庭の石の彫刻を望みながら腰掛けられる高さ30cmの段差を設けた。段差部に引き出し収納を設けることで限られたスペースを有効に利用している。
2階は台所と吹抜けを持つ居間があり、3階との空間的、視線的なつながりを意図した。
居間の南側に配置された開口部が周囲の環境や光を効果的に建物内に取り込む。
3階はプライバシー性と静寂性の求められる寝室を設けた。壁面全体に書棚や収納を設けることで吸音効果が得られ、ベッド用ロフトに設置された可動ルーバー壁により光や空気の流れを調整することができる。
M3階に設けられたランドリーからは直接屋上へ出ることができる。屋上では周囲が一望でき、気持ちよく洗濯物を干したり、日光浴しながら仕事を進めることもできる。
外観・構造
立体的な床構成の為に生じる構造的な問題を解決するために、外部に構造体のバットレスを設けた。
このバットレスは南側外壁に設けた庇と併せて建物に影を生じさせ、夏季の日射負荷を本質的に抑制する。
冬季には太陽高度により影の面積が減り、南側外壁全体を蓄熱壁として利用することで暖房にかかるエネルギーの抑制を図った。
環境
バットレス及び庇の日射負荷抑制に加えて、敷地周辺環境を利用した環境負荷低減も考慮している。
敷地の側を流れる川の気化作用と街路樹の木陰によって周囲より冷やされた空気を1階の開口部より取り入れる計画とした。
更に屋上に設置した天窓を開閉させることにより重力換気を促し夏季及び中間季の空調負荷を抑制できる。
冬季は字街路樹の葉が落ちることにより日差しが建物に到達する。
■建築概要
物件名称:Honest house
用途:個人住宅
所在地:東京都豊島区高田1-1-3
設計・監理:OGATAYOHEI™(緒方洋平、緒方春)
構造設計:渡邊織音
設計協力:早河諭
階数:地上3階
高さ:軒高8.46 m
最高高さ:9.99 m
敷地面積:40.65 ㎡
建築面積:24.18 ㎡
延床面積:62.94 ㎡
構造種別:鉄筋コンクリート
施工:株式会社木村工業
石工事:和泉正敏
竣工年月:2020年7月
写真撮影:小野寺宗貴写真事務所