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中山英之建築設計事務所が手掛けた、東京都渋谷公園通りギャラリーの「『語りの複数性』展 会場構成」をレビュー。既存ビル内を改装したギャラリーに、動線と壁面を緻密に設計することで、自然な流れを持ったひとまとまりの展覧会という感覚と作品に深く対峙できる状況をつくりだす

595.43中山英之建築設計事務所が手掛けた、東京都渋谷公園通りギャラリーの「『語りの複数性』展 会場構成」をレビュー。既存ビル内を改装したギャラリーに、動線と壁面を緻密に設計することで、自然な流れを持ったひとまとまりの展覧会という感覚と作品に深く対峙できる状況をつくりだす

日程
2021年10月9日(土)
–
12月26日(日)
architecture|exhibition|feature
HIGURE 17-15 cas中山英之会場構成大森克己小島美羽小林紗織山崎阿弥山本高之岡﨑莉望川内倫子東京渋谷区田中みゆき百瀬文
中山英之建築設計事務所が手掛けた、東京都渋谷公園通りギャラリーの「『語りの複数性』展 会場構成」をレビュー。既存ビル内を改装したギャラリーに、動線と壁面を緻密に設計することで、自然な流れを持ったひとまとまりの展覧会という感覚と作品に深く対峙できる状況をつくりだす大森克己《心眼 柳家権太楼》(2019年)展示風景 photo courtesy of 東京都渋谷公園通りギャラリー, photo 木奥惠三
中山英之建築設計事務所が手掛けた、東京都渋谷公園通りギャラリーの「『語りの複数性』展 会場構成」をレビュー。既存ビル内を改装したギャラリーに、動線と壁面を緻密に設計することで、自然な流れを持ったひとまとまりの展覧会という感覚と作品に深く対峙できる状況をつくりだす川内倫子《無題》(シリーズ「はじまりのひ」より)(2018年)展示風景 photo courtesy of 東京都渋谷公園通りギャラリー, photo 木奥惠三
中山英之建築設計事務所が手掛けた、東京都渋谷公園通りギャラリーの「『語りの複数性』展 会場構成」をレビュー。既存ビル内を改装したギャラリーに、動線と壁面を緻密に設計することで、自然な流れを持ったひとまとまりの展覧会という感覚と作品に深く対峙できる状況をつくりだす大森克己《心眼 柳家権太楼》(2019年)展示風景 photo courtesy of 東京都渋谷公園通りギャラリー, photo 木奥惠三
中山英之建築設計事務所が手掛けた、東京都渋谷公園通りギャラリーの「『語りの複数性』展 会場構成」をレビュー。既存ビル内を改装したギャラリーに、動線と壁面を緻密に設計することで、自然な流れを持ったひとまとまりの展覧会という感覚と作品に深く対峙できる状況をつくりだす会場風景 photo courtesy of 東京都渋谷公園通りギャラリー, photo 木奥惠三

中山英之建築設計事務所が手掛けた、東京都渋谷公園通りギャラリーの「『語りの複数性』展 会場構成」です。既存ビル内を改装したギャラリーに、動線と壁面を緻密に設計することで、自然な流れを持ったひとまとまりの展覧会という感覚と作品に深く対峙できる状況をつくりだしています。会期は2021年12月26日まで。展覧会の公式サイトはこちら。

こちらは、実際に会場を訪問したアーキテクチャーフォトによるレビューです

この展覧会の、特に会場構成自体を作品として紹介する際には「東京都渋谷公園通りギャラリー」の背景を共有することが必須であるように思う。このギャラリーは、渋谷区立勤労福祉会館という建物内の1階に位置しており、2020年2月にアール・ブリュット等の振興の拠点として設立された施設である。

実際にギャラリーを訪問して分かるのは、このギャラリーや入居している建物が、新築時に展覧会を行う事を前提に建てられたわけではないという事である。同じフロアには、時間貸しのワークスペースが入居していたりとビル内にはギャラリーと日常が混在しているような印象である。加えて、ギャラリーの展示スペースが、廊下やホールなどを介しフロア内に点在していることも特徴だと感じた。これは建物内の違う用途で使われていたスペースを活用したギャラリーである事を想起させる。建物内に足を踏み入れた瞬間に、美術作品をみるのだという気持ちが切り替わるように考えられているそれ専用に建てられた美術館と比較すると、ある種の作品を展示することに対する難易度が高いギャラリーだと言うことが出来るだろう。

実際に展覧会を訪れて、作品を眺めながら会場をぐるりと一回りした。そこでの経験を振り返ると、先に書いたような展示空間が、フロア内に点在しているにもかかわらず、ひとつづきの展覧会のまとまりとして経験した感覚が残っているのである。これはまず、中山が今回の展示にあたり苦心した部分だと感じた。具体的には、展示の最初のスペースと二番目のスペースに移動するには、ホールと廊下を通過するのだが、この細長い廊下部分を作品展示スペースとしている。これによって、各展示空間の距離が縮まり、一連の展覧会として認識されやすくなっている。アートに対峙するという経験に出来る限りノイズが入らないように設計されているのである。

また、外部に最も近い公園通りに面した展示スペースのつくり方にも注目したい。ネットなどで他の展覧会期間の写真を見てもらうと明確に分かるのだが、このスペースは道路側がすべてガラス面であり内部の様子が通り側から見られることを意図してつくられた場所なのである。もともとがギャラリーである事を想定していなければ、合理的なつくりであるし、展覧会の性質によってはこの空間がそのまま生かされる場合もあるだろう。後述しているが、本展では出展作家が多様だ。その為に展示壁面を増やす必要があったと思われる。と同時に作品によっては光を許容するものと受け付けないものがある。そんな状況において、中山は、ガラス面から少しのクリアランスをとって新たな展示壁面をつくった。これにより、室内側は川内倫子の作品スペースが生まれ、ガラス面側には、大森克己の展示スペースが生まれる。これだけでも素晴らしいアイデアなのだが、ガラス面側の奥行きの浅さによって、そこが街中にあるショーウィンドウに擬態しているのである。この効果により大森の作品は渋谷の街中において鑑賞すべきものとして通りを行きかう数多の人々の記憶に刻まれることになるのである。

最後になるが、この展覧会の特徴は、出展作家の多さとその作品表現の多様さである。写真作品、絵画作品、映像作品、音響作品等々、様々なアプローチの作品が出展されている。こう書くとここでの鑑賞体験は、凄く雑多なものになっているのではないかと想像されるだろう。しかし、筆者に残っているのは、それぞれの作品をじっくり鑑賞でき、作品と対峙することができたという感覚である。実際に図面を見てもらうと分かりやすいと思うのだが、全ての作品に、その作品を鑑賞する為に最適化された居場所が用意されているのである。そして、それがあまりにも自然であるが故に、作品が先にあったのか空間が先にあったのかが分からなくなるほど一体化していることにも驚かされる。

経験としてはシンプルなのだが、そのシンプルな経験を生み出すために、複雑な形状の壁面と動線が緻密に設計されているのである。滑らかにつくられた動線計画は、それぞれの作品を、この展覧会に参加する関係性を持った存在であることを感じさせる。と同時に、壁面でのさりげない展示空間の分割によって、作家それぞれの作品をじっくりと鑑賞するという体験も実現している。この縁の下の力持ちとして展覧会に貢献している会場構成の巧みさに感嘆させられた。

中山によるポーラ美術館でのモネ展の会場構成が、建築設計業界で話題になったことは記憶に新しい。特に天井のデザインやそれに付随する光の操作の巧みさに目を奪われた読者も多いのではないだろうか。本展の会場構成は、特に写真で見ると控えめでありそこで中山が何を行ったかは見出しにくい。しかし実際に足を運んでみると、展示空間が持つ特質に向き合い、それをより良い方向に変化させ作品と対峙する空間を作り上げるという、中山のアートに対する眼差しと力量を感じさせる会場構成になっているのは間違いない。

渋谷区神南という比較的訪問しやすい場所に位置するこのギャラリーに足を運ぶことをお勧めしたい。


以下の写真はクリックで拡大します

中山英之建築設計事務所が手掛けた、東京都渋谷公園通りギャラリーの「『語りの複数性』展 会場構成」をレビュー。既存ビル内を改装したギャラリーに、動線と壁面を緻密に設計することで、自然な流れを持ったひとまとまりの展覧会という感覚と作品に深く対峙できる状況をつくりだす「東京都渋谷公園通りギャラリー」 が入る、渋谷区立勤労福祉会館の全景。渋谷PARCOの斜め向かいに位置する。 photo©architecturephoto
中山英之建築設計事務所が手掛けた、東京都渋谷公園通りギャラリーの「『語りの複数性』展 会場構成」をレビュー。既存ビル内を改装したギャラリーに、動線と壁面を緻密に設計することで、自然な流れを持ったひとまとまりの展覧会という感覚と作品に深く対峙できる状況をつくりだす展覧会「語りの複数性」外観 photo courtesy of 東京都渋谷公園通りギャラリー, photo 木奥惠三
中山英之建築設計事務所が手掛けた、東京都渋谷公園通りギャラリーの「『語りの複数性』展 会場構成」をレビュー。既存ビル内を改装したギャラリーに、動線と壁面を緻密に設計することで、自然な流れを持ったひとまとまりの展覧会という感覚と作品に深く対峙できる状況をつくりだす大森克己《心眼 柳家権太楼》(2019年)展示風景 photo courtesy of 東京都渋谷公園通りギャラリー, photo 木奥惠三
中山英之建築設計事務所が手掛けた、東京都渋谷公園通りギャラリーの「『語りの複数性』展 会場構成」をレビュー。既存ビル内を改装したギャラリーに、動線と壁面を緻密に設計することで、自然な流れを持ったひとまとまりの展覧会という感覚と作品に深く対峙できる状況をつくりだす東京都渋谷公園通りギャラリー正面入り口 photo courtesy of 東京都渋谷公園通りギャラリー, photo 木奥惠三
中山英之建築設計事務所が手掛けた、東京都渋谷公園通りギャラリーの「『語りの複数性』展 会場構成」をレビュー。既存ビル内を改装したギャラリーに、動線と壁面を緻密に設計することで、自然な流れを持ったひとまとまりの展覧会という感覚と作品に深く対峙できる状況をつくりだす川内倫子《無題》(シリーズ「はじまりのひ」より)(2018年)展示風景 photo courtesy of 東京都渋谷公園通りギャラリー, photo 木奥惠三
中山英之建築設計事務所が手掛けた、東京都渋谷公園通りギャラリーの「『語りの複数性』展 会場構成」をレビュー。既存ビル内を改装したギャラリーに、動線と壁面を緻密に設計することで、自然な流れを持ったひとまとまりの展覧会という感覚と作品に深く対峙できる状況をつくりだす川内倫子《無題》(シリーズ「はじまりのひ」より)(2018年)展示風景 photo courtesy of 東京都渋谷公園通りギャラリー, photo 木奥惠三
中山英之建築設計事務所が手掛けた、東京都渋谷公園通りギャラリーの「『語りの複数性』展 会場構成」をレビュー。既存ビル内を改装したギャラリーに、動線と壁面を緻密に設計することで、自然な流れを持ったひとまとまりの展覧会という感覚と作品に深く対峙できる状況をつくりだす川内倫子《無題》(シリーズ「はじまりのひ」より)(2018年)展示風景 photo courtesy of 東京都渋谷公園通りギャラリー, photo 木奥惠三
中山英之建築設計事務所が手掛けた、東京都渋谷公園通りギャラリーの「『語りの複数性』展 会場構成」をレビュー。既存ビル内を改装したギャラリーに、動線と壁面を緻密に設計することで、自然な流れを持ったひとまとまりの展覧会という感覚と作品に深く対峙できる状況をつくりだす展覧会「語りの複数性」展示風景 photo courtesy of 東京都渋谷公園通りギャラリー, photo 木奥惠三
中山英之建築設計事務所が手掛けた、東京都渋谷公園通りギャラリーの「『語りの複数性』展 会場構成」をレビュー。既存ビル内を改装したギャラリーに、動線と壁面を緻密に設計することで、自然な流れを持ったひとまとまりの展覧会という感覚と作品に深く対峙できる状況をつくりだす大森克己《心眼 柳家権太楼》(2019年)展示風景 photo courtesy of 東京都渋谷公園通りギャラリー, photo 木奥惠三
中山英之建築設計事務所が手掛けた、東京都渋谷公園通りギャラリーの「『語りの複数性』展 会場構成」をレビュー。既存ビル内を改装したギャラリーに、動線と壁面を緻密に設計することで、自然な流れを持ったひとまとまりの展覧会という感覚と作品に深く対峙できる状況をつくりだす大森克己《心眼 柳家権太楼》(2019年)展示風景 photo courtesy of 東京都渋谷公園通りギャラリー, photo 木奥惠三
中山英之建築設計事務所が手掛けた、東京都渋谷公園通りギャラリーの「『語りの複数性』展 会場構成」をレビュー。既存ビル内を改装したギャラリーに、動線と壁面を緻密に設計することで、自然な流れを持ったひとまとまりの展覧会という感覚と作品に深く対峙できる状況をつくりだす会場風景 photo courtesy of 東京都渋谷公園通りギャラリー, photo 木奥惠三
中山英之建築設計事務所が手掛けた、東京都渋谷公園通りギャラリーの「『語りの複数性』展 会場構成」をレビュー。既存ビル内を改装したギャラリーに、動線と壁面を緻密に設計することで、自然な流れを持ったひとまとまりの展覧会という感覚と作品に深く対峙できる状況をつくりだす小島美羽《ごみ屋敷》(2017年)、《遺品の多い部屋》(2018年)、《終の棲家》(2019年)展示風景 photo courtesy of 東京都渋谷公園通りギャラリー, photo 木奥惠三
中山英之建築設計事務所が手掛けた、東京都渋谷公園通りギャラリーの「『語りの複数性』展 会場構成」をレビュー。既存ビル内を改装したギャラリーに、動線と壁面を緻密に設計することで、自然な流れを持ったひとまとまりの展覧会という感覚と作品に深く対峙できる状況をつくりだす小島美羽《ごみ屋敷》(2017年) photo courtesy of 東京都渋谷公園通りギャラリー, photo 木奥惠三
中山英之建築設計事務所が手掛けた、東京都渋谷公園通りギャラリーの「『語りの複数性』展 会場構成」をレビュー。既存ビル内を改装したギャラリーに、動線と壁面を緻密に設計することで、自然な流れを持ったひとまとまりの展覧会という感覚と作品に深く対峙できる状況をつくりだす岡﨑莉望 左から《目》(2014年)、《其処無しの浮き》(2017年)、《響動》(2019年)展示風景 photo courtesy of 東京都渋谷公園通りギャラリー, photo 木奥惠三
中山英之建築設計事務所が手掛けた、東京都渋谷公園通りギャラリーの「『語りの複数性』展 会場構成」をレビュー。既存ビル内を改装したギャラリーに、動線と壁面を緻密に設計することで、自然な流れを持ったひとまとまりの展覧会という感覚と作品に深く対峙できる状況をつくりだす小林紗織《私の中の音の眺め》(2021年)展示風景 photo courtesy of 東京都渋谷公園通りギャラリー, photo 木奥惠三
中山英之建築設計事務所が手掛けた、東京都渋谷公園通りギャラリーの「『語りの複数性』展 会場構成」をレビュー。既存ビル内を改装したギャラリーに、動線と壁面を緻密に設計することで、自然な流れを持ったひとまとまりの展覧会という感覚と作品に深く対峙できる状況をつくりだす会場風景 photo courtesy of 東京都渋谷公園通りギャラリー, photo 木奥惠三
中山英之建築設計事務所が手掛けた、東京都渋谷公園通りギャラリーの「『語りの複数性』展 会場構成」をレビュー。既存ビル内を改装したギャラリーに、動線と壁面を緻密に設計することで、自然な流れを持ったひとまとまりの展覧会という感覚と作品に深く対峙できる状況をつくりだす小林紗織《私の中の音の眺め》(2021年)展示風景 photo courtesy of 東京都渋谷公園通りギャラリー, photo 木奥惠三
中山英之建築設計事務所が手掛けた、東京都渋谷公園通りギャラリーの「『語りの複数性』展 会場構成」をレビュー。既存ビル内を改装したギャラリーに、動線と壁面を緻密に設計することで、自然な流れを持ったひとまとまりの展覧会という感覚と作品に深く対峙できる状況をつくりだす山崎阿弥《長時間露光の鳴る》(2021年)展示風景 photo courtesy of 東京都渋谷公園通りギャラリー, photo 木奥惠三
中山英之建築設計事務所が手掛けた、東京都渋谷公園通りギャラリーの「『語りの複数性』展 会場構成」をレビュー。既存ビル内を改装したギャラリーに、動線と壁面を緻密に設計することで、自然な流れを持ったひとまとまりの展覧会という感覚と作品に深く対峙できる状況をつくりだす山崎阿弥《長時間露光の鳴る》(2021年)展示風景 photo courtesy of 東京都渋谷公園通りギャラリー, photo 木奥惠三
中山英之建築設計事務所が手掛けた、東京都渋谷公園通りギャラリーの「『語りの複数性』展 会場構成」をレビュー。既存ビル内を改装したギャラリーに、動線と壁面を緻密に設計することで、自然な流れを持ったひとまとまりの展覧会という感覚と作品に深く対峙できる状況をつくりだす百瀬文の展示スペースへの入り口 photo courtesy of 東京都渋谷公園通りギャラリー, photo 木奥惠三
中山英之建築設計事務所が手掛けた、東京都渋谷公園通りギャラリーの「『語りの複数性』展 会場構成」をレビュー。既存ビル内を改装したギャラリーに、動線と壁面を緻密に設計することで、自然な流れを持ったひとまとまりの展覧会という感覚と作品に深く対峙できる状況をつくりだす百瀬文《聞こえない木下さんに聞いたいくつかのこと》 (2013年) 展示風景 photo courtesy of 東京都渋谷公園通りギャラリー, photo 木奥惠三
中山英之建築設計事務所が手掛けた、東京都渋谷公園通りギャラリーの「『語りの複数性』展 会場構成」をレビュー。既存ビル内を改装したギャラリーに、動線と壁面を緻密に設計することで、自然な流れを持ったひとまとまりの展覧会という感覚と作品に深く対峙できる状況をつくりだす東京都渋谷区公園通りギャラリー北入り口 photo courtesy of 東京都渋谷公園通りギャラリー, photo 木奥惠三
中山英之建築設計事務所が手掛けた、東京都渋谷公園通りギャラリーの「『語りの複数性』展 会場構成」をレビュー。既存ビル内を改装したギャラリーに、動線と壁面を緻密に設計することで、自然な流れを持ったひとまとまりの展覧会という感覚と作品に深く対峙できる状況をつくりだすフロアマップ image courtesy of 東京都渋谷公園通りギャラリー design 中西要介(Studio PT.)

以下、建築家によるテキストです。


「ギャラリー」と一口に言っても、そう名前のついた施設にはさまざまな質の空間が付帯しています。たとえば展示室と展示室を結ぶただの廊下も、そうであることを少し忘れてみたら、細長い形をした、他とは違う固有の質感を帯びた場に違いありません。

「語りの複数性」展もまた、ひとりひとりにとってそれが唯一であると感じている世界を、少しだけ忘れてみることからはじまる展覧会、と言えるかもしれません。

建物というのは、名前のつけられた、定まった用途を与えられた場所の集まりです。今回の会場構成は、そんなまとまりのなかに、できるかぎりそうではない可能性としての複数の場を、探り当てていくような時間でした。

ひとつに思えていた世界が、もしかしたらそれぞれに異なる受容体としての私たちの数だけ、少しずつ違ったかたちで複数ある。この展覧会のそんな想像力に、重なり合うような空間であったらと願っています。(中山英之)


中山英之と、キュレーションを手掛けた田中みゆきの対談動画

2021年10月9日から開幕した展覧会「語りの複数性」に向けたプレトーク。
本展覧会では、固有の感覚や経験に裏打ちされた表現や、経験していない現実を自らの身体をもって受け取り、表現する試みを扱います。
プレトークでは、展覧会のはじまりや出展作家の紹介をしながら、展示室において鑑賞者による複数の想像が立ち上がる空間をどのように設計できるのか、本展の会場構成を担当する建築家の中山英之さんにお話を伺います。

出演:中山英之(建築家、本展会場構成)、田中みゆき(本展企画担当)
手話:那須映里
映像補助通訳:倉谷慶子、瀬戸口裕子
手話監修:廣川麻子(TA-net)
撮影:丸尾隆一、冨田了平
編集:丸尾隆一

youtube.com
■建築概要

題名:「語りの複数性」展 会場構成
設計:中山英之建築設計事務所
担当:中山英之、川本稜、磯涼平
施工:HIGURE 17-15 cas
グラフィックデザイン:中西要介(Studio PT.)
階数:1
延床面積 :207.00m²
———
展覧会名:語りの複数性
会期:2021年10月9日 (土)~12月26日(日)
開館時間:11:00~19:00
休館日:月曜日
会場:東京都渋谷公園通りギャラリー 展示室1、2及び交流スペース
入場料:無料
出展作家:大森克己、岡﨑莉望、川内倫子、小島美羽、小林紗織、百瀬文、山崎阿弥、山本高之
企画:田中みゆき
会場構成:中山英之建築設計事務所
主催:(公財)東京都歴史文化財団 東京都現代美術館 東京都渋谷公園通りギャラリー

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2021.11.19 Fri 06:31
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    【シリーズ・建築思索360°】第3回 保坂猛が語る“LOVE² HOUSE”と“建築思索”

    1,350.92 【シリーズ・建築思索360°】第3回 保坂猛が語る“LOVE² HOUSE”と“建築思索”

    architecture|feature|promotion
    インタビュー住宅保坂恵保坂猛図面あり建築思索360°東京
    【シリーズ・建築思索360°】第3回 保坂猛が語る“LOVE² HOUSE”と“建築思索”

    「建築思索360°」は「360度カメラ RICOH THETA(リコーシータ)」と建築ウェブメディア「architecturephoto®」のコラボレーションによる特別連載企画です。現代社会のなかで、建築家として様々な試行錯誤を行い印象的な作品をつくる4組の建築家に、その作品と背景にある思索についてインタビューを行い、同時に建築・建設業界で新しいツールとして注目されているRICOH THETAを活用することの可能性についてもお聞きしました。さらに建築作品をRICOH THETA を用いた360度空間のバーチャルツアー「RICOH360 Tours」でもご紹介します。


    保坂猛が2019年、都内に2度目の自邸として建てた「LOVE² HOUSE」は、床面積が18.84㎡の平屋というコンパクトさでありながら、不思議と狭さを感じさせない、実に心地よい空間だ。この「LOVE² HOUSE」はどのようなプロセスを経て生まれたのか。そして光や外部環境をうまく取り込む設計手法や発想の源泉となる建築めぐりの旅など、保坂の建築への姿勢について迫った。

    ※このインタビューは感染症予防の対策に配慮しながら実施・収録されました。


    小さい空間にほしいものが全部ある

    以下の写真はクリックで拡大します

    【シリーズ・建築思索360°】第3回 保坂猛が語る“LOVE² HOUSE”と“建築思索”「LOVE² HOUSE」(設計:保坂猛建築都市設計事務所、2019年)ファサード。部屋にいると近所の人達から気軽に話し掛けられるという。 photo©藤井浩司


    360度カメラRICOH THETA Z1で撮影した画像データを埋め込み表示した、RICOH360 Toursの「LOVE² HOUSE」バーチャルツアー。画像内の矢印をタップすることで、空間を移動することができます。

    ――保坂さんご夫妻は以前「LOVE HOUSE」(2005年)を設計して住まわれていましたが、新たに「LOVE² HOUSE」(2019年)を建てて引っ越されたんですよね。どのような経緯だったのですか。

    保坂猛(以下、猛):2015年に早稲田大学芸術学校の准教授に就任して、横浜から早稲田まで通うのが困難になったのがきっかけです。
    引っ越し先を探すにあたって、これまで戸建てに住んでいたのに都内でマンション暮らしは想像できなくて、結局もう一度建てることにしました。

    【シリーズ・建築思索360°】第3回 保坂猛が語る“LOVE² HOUSE”と“建築思索”建築家の保坂猛と恵夫妻。 photo©大原宗

    ――新しい敷地が決まって、すぐに現在の姿をイメージされたのでしょうか。

    猛:結構な紆余曲折がありましたね。最初は2階建ての四角い建物のイメージで40案ぐらいスタディを繰り返していましたから。平屋案に変わっても四角いままで。鉄骨造で考えていた時期もありました。どうにかまとまって確認申請を出して施工会社と工事契約を結んでも「何か違うな」と思って。

    そうこうしていたら結局、確認申請を3回出すことになってしまいました。施工会社との契約も1回目の契約はご破算にしてもらっています。

    ――何が原因で決まらなかったのでしょう。

    保坂恵:(以下、恵):「LOVE HOUSE」があまりに好きだったので、引きずっていたのでしょうね。でも「せっかくだから全然違う方が面白いかも」と割り切ったら、いい方向にいったみたいです。

    たとえば前回の住宅はそぎ落としていく楽しさを体感したので、今度は小さい空間にほしいものが全部あるのがいいと思いました。

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    インタビュー住宅保坂恵保坂猛図面あり建築思索360°東京
    2021.11.19 Fri 07:23
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    2021.11.18Thu
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    2021.11.20Sat
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    • クリスト&ガンテンバインとオフィス・ゲールス・ファン・セーヴェレンが、2021年10月にハーバード大学主催で行ったレクチャーの動画
    • 「香川県庁の旧館と東館が国の重要文化財に 丹下健三氏が設計」(NHK NEWS WEB)

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