SHARE 京智健 / カイトアーキテクツと山口陽登 / YAPによる、愛媛の「伊方町観光交流拠点施設 佐田岬はなはな」。津波対策で護岸がかさ上げされた敷地にて、建物にピロティ・スロープ・ランドスケープを導入し集落と海を接続し直すことで、大自然のスケールと集落のスケールが同居する建築を構想
京智健 / カイトアーキテクツと山口陽登 / YAPが設計した、愛媛の「伊方町観光交流拠点施設 佐田岬はなはな」です。津波対策で護岸がかさ上げされた敷地にて、建物にピロティ・スロープ・ランドスケープを導入し集落と海を接続し直すことで、大自然のスケールと集落のスケールが同居する建築が構想されました。施設の公式サイトはこちら。
愛媛県伊方町、佐田岬半島の先端近くに建つ交流拠点施設の計画である。
公募型プロポーザルを経て、私たちの設計チームの提案が選定された。敷地は、大分県佐賀関と伊方町三崎を結ぶフェリーターミナルに隣接している。町内で生産・収穫した海の幸や山の幸を、旅行者が気軽に楽しめる直売所や飲食店舗に加え、地域住民が普段から利用できるカフェ、公民館のような機能を持つ多目的スペース、ギャラリーなどが求められた。
目の前には宇和海の雄大な風景が広がり、背後には三崎の山々と集落が広がっている。この風景は佐田岬半島の海と陸が延々と絡まりながら東西に続く「ひだ」状の独特な地形によって生み出されている。南海トラフ巨大地震などに備える津波対策として護岸のかさ上げ工事が行われ、グランドレベルから宇和海への視界は絶たれ、「自然」と住民の「暮らし」が分断された。
敷地には既存の建物があったが、広大な敷地の中で点として存在し、隣接するフェリーターミナルとも集落とも、うまく関係をつなぐことができていないように感じた。そのような状況でも敷地を読み取り、宇和海の大自然のスケールと集落のスケールが同居する建築となることを目指した。
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以下、建築家によるテキストです。
ピロティ・スロープ・ランドスケープで、集落と海を接続し直す
愛媛県伊方町、佐田岬半島の先端近くに建つ交流拠点施設の計画である。
公募型プロポーザルを経て、私たちの設計チームの提案が選定された。
敷地は、大分県佐賀関と伊方町三崎を結ぶフェリーターミナルに隣接している。町内で生産・収穫した海の幸や山の幸を、旅行者が気軽に楽しめる直売所や飲食店舗に加え、地域住民が普段から利用できるカフェ、公民館のような機能を持つ多目的スペース、ギャラリーなどが求められた。
目の前には宇和海の雄大な風景が広がり、背後には三崎の山々と集落が広がっている。この風景は佐田岬半島の海と陸が延々と絡まりながら東西に続く「ひだ」状の独特な地形によって生み出されている。南海トラフ巨大地震などに備える津波対策として護岸のかさ上げ工事が行われ、グランドレベルから宇和海への視界は絶たれ、「自然」と住民の「暮らし」が分断された。
敷地には既存の建物があったが、広大な敷地の中で点として存在し、隣接するフェリーターミナルとも集落とも、うまく関係をつなぐことができていないように感じた。そのような状況でも敷地を読み取り、宇和海の大自然のスケールと集落のスケールが同居する建築となることを目指した。
宇和海の護岸から敷地に向かって、揺らぐことがない堅牢なRCの壁をつくり、護岸のスケールを敷地内に引き込んだ。
さらに2Fの床をRCで持ち上げピロティをつくり、宇和海からの海風が敷地を通り抜けるようにした。ピロティをくぐり抜けると、護岸のトップに向かって緩やかに地盤面が上昇していく。このランドスケープにより、護岸の存在感は薄まり、集落と宇和海はシームレスにつながれる。
集落から2Fに向かって、約100mのスロープを登って建築の内部に入っていくと、宇和海が眼前に広がる。動線に呼応するように徐々に高くなるボリュームが、点ではなく線状の経験を生み出す。その線的な経験の空間にカフェや多目的スペース、売店、ギャラリーが点在し、フェリーからの観光客と集落に住む人々を各所で受けとめる。
コンクリートの柱と壁に愛媛県産材のスギの重ね梁で屋根をかけた。力強さと柔らかさが同居する空間を目指した。小さなスケールの軒下空間がひだ状に連続しながら、佐田岬半島のような細長い一体の建築を形成する。
また、伊方町は原子力発電所を保有している自治体である。東日本大震災以降、新しい地域エネルギービジョンを策定し、再生可能エネルギーの利用拡大を通じて、町民や来訪者の地域エネルギーに対する理解が深まることを目指している。太陽光発電、地中熱利用といったすでに敷地に内在する再生可能エネルギーを活用し、愛媛県内初のNearlyZEBの公共施設を実現している。
新しい建築を建てることを通して、そこにすでにある建築、集落、自然、人、素材、エネルギーの関係性を再編集する。分断するのではなく地域の関係性をつなぎ直す建築となることを目指した。
■建築概要
作品名:伊方町観光交流拠点施設 佐田岬はなはな
所在地:愛媛県伊方町
用途地域:都市計画区域外
延床面積:1,200.02㎡
構造・規模:RC造+S造+木造 地上2階建て
用途:物販店舗+飲食店舗+公民館+ギャラリー+観光案内所
設計期間:2018.05-2019.06
工事期間:2019.07-2020.05
竣工年月:2020.05
意匠設計:京智健 / カイトアーキテクツ+山口陽登 / YAP
構造設計:満田衛資構造計画研究所
設備設計:日本設計
外構設計:和想
サイン:廣村正彰 / Hiromura Design Office
スチール家具:上田安伸 / bowlpond
建築工事:堀田建設
ZEB工事:伊方電気
種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) |
---|---|---|
外装・屋根 | 屋根 | ガルバリウム鋼板縦ハゼ葺き:ガルバリウム カラー萌・KS85 (淀川製鋼所) |
外装・壁 | 外壁 | コンクリート打放し+黒塗装:アクアカラー [ブラック](アシュフォードジャパン) |
外装・その他 | 外部手すり | ローバル塗装:マットカバー・MT-18KG(ローバル) |
内装・床 | B棟1F多目的スペース床 | モルタル金ゴテ押さえ+撥水剤塗布 |
内装・床 | C棟1F売店床 | モルタル金ゴテ押さえ+撥水剤塗布 |
内装・床 | C棟2F食堂床 | 無垢フローリング:ハイパーウッド15ナラ・HW1590-0TWナラ(天龍木材) |
内装・壁 | 壁 | コンクリート打放し+黒塗装:アクアカラー [ブラック](アシュフォードジャパン) |
内装・天井 | 天井 | 構造用合板 |
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