
567.20 二俣公一 / ケース・リアルによる、福岡市の店舗「ARTS&SCIENCE 福岡」。店を構えるエリアの象徴として捉えた前川建築のタイル壁を参照し、施主の思想とこの環境である意味が交差する空間を構想



二俣公一 / ケース・リアルが設計した、福岡市の店舗「ARTS&SCIENCE 福岡」です。店を構えるエリアの象徴として捉えた前川建築のタイル壁を参照し、施主の思想とこの環境である意味が交差する空間を構想しました。店舗の公式サイトはこちら。
アーツ&サイエンスが福岡に新たに構えるストアの計画。
クライアントは「上質な日常」をコンセプトに、服などの身につけるものから職人によって作られた工芸品・プロダクトなど、商品を丁寧に吟味し、長く使ってもらえる良いものを追い求めながら店づくりを行なってきた。
計画地となったのは、福岡の中心部にある大濠公園よりほど近い、閑静な住宅エリアの一角である。大濠公園は都市公園として古くから市民に親しまれており、私たちは今回の店舗を考えるにあたって、クライアントが大切にしてきたものづくりや店づくりの思想と、この環境であることの意味とが交差するような空間が良いと考えた。
そしてモチーフに選定したのが、公園内にある「福岡市美術館」の外壁を彩る赤茶色のタイルである。建築家の故前川國男氏が用いたそのタイルは、焼物としての質感と艶やかな釉薬が美しく、普段からエリアを象徴する素材のようにも感じていた。そしてその工芸的な美しさは、アーツ&サイエンスの考え方とも相性が良いと考えた。
店舗が入ることになったのは、美術館と同じく1970年代に建てられた角地のアパートメント1階である。空間の中央に大きな躯体壁があり、これをどのように扱うかが課題となった。私たちはまず、この中央の駆体壁を中心に店内を周回できるプランを考えた。そして前述のタイルの質感だけでなく、貼り方も含めてこれを再現。美術館にも使用されている、四半目地と呼ばれるタイルを45度傾けた貼り方を用い、駆体壁全面に貼り込んで店舗の象徴的な表現とした。