森恵吾+ジャン・ジエ / ATELIER MOZHが設計した、中国・西安市の、ギャラリーと絵画教室「Liu painting studio」です。設計検討の中で“森の礼拝堂での体験”を回顧した設計者は、天井に完璧な正円を描くことで、集まる生徒と先生の行為を支える背景としての空間を構想しました。
リヨンで絵画を学んだ若いクライアントのための、ギャラリーと絵画教室の計画である。
クライアントは、慣れ親しんだ西洋のアトリエの雰囲気と同時に、たくさんの若いゲストを迎え入れられるフレッシュな雰囲気の場所を望んでいた。
改築前のこの場所は、平面的な広さの割りに天井が低く、そのせいで柱の無骨さも気になった。ここにクライアントの要求をどう満たすか考える中で、アスプルンドの森の礼拝堂での体験をふと思い出した。低く抑えられた平天井を支える柱の列。その奥には、白くポッカリと円形に穿たれた天井。その下で参列者たちは中心の祭壇を囲う。
あの場所の雰囲気 – もちろんここは教会でも何でもないのだが – を思い浮かべながら、プランに線を引いてみた。
円周上には生徒が集まり、中心を見つめることができる。中心は描写する対象(オブジェ)かもしれないし、クライアントである先生かもしれない。あるいは逆に、円の中心に立った先生が、周囲の生徒たちの様子を見渡すこともできる。さらに、円弧に沿ってカーテンを巡らせば、内部はテンポラリーなギャラリー空間として使用できる。
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以下、建築家によるテキストです。
描くこと、祈ること
リヨンで絵画を学んだ若いクライアントのための、ギャラリーと絵画教室の計画である。
クライアントは、慣れ親しんだ西洋のアトリエの雰囲気と同時に、たくさんの若いゲストを迎え入れられるフレッシュな雰囲気の場所を望んでいた。
改築前のこの場所は、平面的な広さの割りに天井が低く、そのせいで柱の無骨さも気になった。ここにクライアントの要求をどう満たすか考える中で、アスプルンドの森の礼拝堂での体験をふと思い出した。低く抑えられた平天井を支える柱の列。その奥には、白くポッカリと円形に穿たれた天井。その下で参列者たちは中心の祭壇を囲う。
あの場所の雰囲気 – もちろんここは教会でも何でもないのだが – を思い浮かべながら、プランに線を引いてみた。
円周上には生徒が集まり、中心を見つめることができる。中心は描写する対象(オブジェ)かもしれないし、クライアントである先生かもしれない。あるいは逆に、円の中心に立った先生が、周囲の生徒たちの様子を見渡すこともできる。さらに、円弧に沿ってカーテンを巡らせば、内部はテンポラリーなギャラリー空間として使用できる。
今回の計画の骨子となるこのシンプルなアイデアは、中国での過酷な設計条件 – 期間の短さや施工の粗さ – に対して非常にプラスに働いたようである。明快であり、間違いがない。そのおかげか、意外なほどに大きなトラブルもなく、スルスルと竣工を迎えた。
プランでは、完璧な正円として描かれていたはずの天井は、実際に体験してみると、思いのほか歪んで見えた。もちろん広角レンズのように、引きをとって見ることもできないので、視界に写るのは断片的な円弧でしかない。しかし、この場所を使い始めた生徒たちが、いつもこの円の中心に集まって作業している姿を見ると、当初思い描いたイメージがぼんやりと実現されていることを実感できた。
よく考えてみれば、絵画教室という場所は、人が集まり、静かに集中した時間を過ごす、という非常に特殊な場所なのだろう。複数人で集まりながらも、黙々と自己と向き合う「描く」という行為は、ある種「祈り」にも似て神聖なものと言えるのかもしれない。
もちろんここは教会でも何でもないが、ここで特別な時間を過ごす生徒たち、そして先生であるクライアントの行為を支える適切な「背景」としてこの計画が馴染んでくれることを願っている。
■建築概要
物件名:Liu painting studio
所在地:中国陕西省西安市
延床面積:150m²
設計:ATELIER MOZH(森恵吾、Jie Zhang、Jingru Xu、Baolei Liang)
竣工年:2020年11月
撮影:FUSION Photography – Zhu Runzi
建材情報種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) | 内装・床 | 教室床 | カラーPVC
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内装・壁 | 壁 | カラーモルタル
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内装・柱 | 教室柱 | カラータイル
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内装・造作家具 | カウンター | ステンレスパネルt=2mm
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内装・造作家具 | テーブル | 木板+石材パネル
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