SHARE 三菱地所設計による学生コンペ「+ミライプロジェクト」の最終審査結果を発表。受賞者の提案書と審査講評も掲載
三菱地所設計 設立20周年特別企画の学生コンペ「+ミライプロジェクト」の最終審査結果を発表します。受賞者の提案書と審査講評も掲載します。建築家の宮城島崇人、福屋粧子、藤本壮介、大西麻貴、彌田徹、前田圭介、末光弘和、建築史家・編集者の伏見唯(コーディネーターを兼任)が審査しました。【ap・ad】
2021年、三菱地所設計の設立20周年記念特別企画として開催された「+ミライプロジェクト」は、
『コンペのフレームを超えたコンペ』として、①全国を6つのエリアに分けて提案を募集、②エリア別の一次審査を経て「エリア最優秀チーム」を選出、③「エリア最優秀チーム」は審査員によるクリティークを経て提案をブラッシュアップ、④最終発表・審査会でブラッシュアップ案を発表、というフローで、約3か月間をかけて行われました。2021年11月3日、最後を飾る最終発表・審査会「ファイナルプレゼン」を三菱地所設計本店(東京都千代田区)にて開催。各エリア最優秀チームにより、提出時からより一層磨き上げられた作品が発表され、審査員による質疑を経て、「全国最優秀賞」(副賞:賞金100万円)、「三菱地所設計賞」(副賞:賞金20万円)が選出されました。皆さんの力作を紹介いたします!
[テーマ]目抜き通り そして、そこにたつ建物
多くの街には、その街の中心となる「目抜き通り」が存在します。
街において目抜き通りは人びとの日々の活動の中心となり、我々がその街で生活していくうえでなくてはならない通りです。(中略)
みなさんの街における「目抜き通り」はこれからどのようになってゆくでしょうか。
みなさんの過ごす街の歴史や文化、地域の特性を紐解き、『目抜き通りと、そこにたつ建物』について考えてみてください。
通りと一つひとつの建物の関係を考えることで、すでにある目抜き通りをもっと魅力的にすることも、新たな目抜き通りを生み出すこともできるはずです。
みなさんの提案もまた歴史の一部となり、その街を形作ってゆきます。
建築設計のみならず、アーバンデザイン、ストラクチャー、環境、インフラエンジニアリング、デジタルテクノロジー、アートなどさまざまな視点に立ち、提案してください。 みなさんの自由な発想、提案をお待ちしております。(テーマ文より一部抜粋)
各受賞者の提案書と審査講評は以下に掲載します。
【全国最優秀賞+関東エリア最優秀賞】
『街の仕掛け人 ―土溶け建築と循環する道―』
チーム「下町清掃員」
堤昂太+木下惇+荻野汐香(日本大学大学院生産工学研究科)
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- 「向島橘銀座商店街」(東京都墨田区)を舞台に、長い時間をかけて形成されてきた地域コミュニティによる「記憶の継承と更新」の提案。
- 木造密集地域の危険を伴う木造住宅を住民の手で減築、土壁の左官により更新し、作業を通じて地域や来訪者とのさらなるつながりを創出する。土という建築の基本エレメントで地域固有の街並みを創出しようとする点が注目された。
- 減築された建物間には、路地的な生活動線「土の道」を提案。来街者と生活者の2つの動線で「都市の通りをどう捉えるか」という広がりのある議論を生んだ。
- 一次審査後のオンライン・クリティークを経て提案が大幅に成長。イベントフレームを存分に活かして提案を高めた点でも高く評価された。
【三菱地所設計賞+中部・北陸エリア最優秀賞】
『浮きドヤ ─表裏解体期における裏側文化の未来へ向けた調律─』
伊藤謙(愛知県立芸術大学大学院美術研究科)
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- 舞台は、開発が進む名古屋駅東側(表)に対し、闇市・ドヤ街をルーツとする街並みを有する駅西側(裏)の「駅西銀座商店街通り」。
- リニア開通による開発が表裏の対比を解体するとされる中、地域的個性を確立する機会としてこれを捉え、開発後の街に「裏側の文脈」をつなぐ手法を提案。
- 地域特性に基づく機能(簡易宿所・オフィス等)と、外部から与えられる機能(移動販売車等の駐車スペース)からなる建築を商店街に挿入。再開発後も、街に点在する建築が西側らしさを継承する。
- 高度成長期に形成された都市の再開発が全国で進む中、これを一概に否定せず、非画一的な開発を目指す視点が高く評価された。
【北海道エリア最優秀賞】
『大通東美術館』
チーム「おうちーズ」
業天拓実+猪股航平+川去健翔+柳瀬祥太(室蘭工業大学工学部、同大学院工学研究科)
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- 北海道札幌市の目抜き通り「大通公園」。テレビ塔以東のエリアの全長500mの既存地下通路を活かして、新たな「目抜き通り」として地下と地上を結ぶ美術館を計画。
- 周辺で進むビルの更新とも連携し、展示空間が地下を通じてビルエントランスや中央分離帯に表出。通りと美術館に不可分な関係を構築する。
- 既存の地下空間を拡張・プログラムを与えつつダイナミックにつなぎ、「通りが先か建築が先か」を問いかける提案として評価された。
【東北エリア最優秀賞】
『まちのホワイエ』
チーム「小山田・武田」
小山田陽太+武田亮(東北工業大学工学研究科)
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- 仙台を代表する目抜き通り「定禅寺通り」(宮城県仙台市)。現在、通りを大きく覆うケヤキ並木が車の排煙を滞留させていると指摘されている。
- 中央分離帯に全長700mの緩やかな斜状の地下路を設け、通りの延長上にある広瀬川まで通し、川から通りへ空気を引き込む提案。地下路は各所で地上と接続。多目的に利用できる、新たな都市空間を生む。
- 「通り」特有の長さを活かし、河川を街につなぐ着想が評価された。新たに地下路を築く上で、既存のケヤキ並木との関わり方が議論となった。
【関東エリア最優秀賞】
『日光街道煙突通り―都市には「個性」が必要である―』
千葉遼(東京理科大学工学研究科)
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- 敷地は旧日光街道の一角(東京都足立区)。工場等の煙突が並ぶ工業の街として発展した歴史から、煙突をインフラ(基盤)として街を更新する提案。
- 新たに設ける「煙突」は、構造としてこれを取り巻く建築と一体化し、街に高さ方向の連続性を構築。銭湯(熱の循環)やアトリエ(風の抜け)など、建築の機能に合わせた役割が与えられ、「人を循環させるインフラ」として、新たな街のシンボルとなる。
- 問題提起に注目が集まり、煙突のような「ノスタルジー性」をどう扱うかという議論に一石を投じた。
【近畿・中国・四国エリア最優秀賞】
『裏寺町漂白計画』
チーム「漂白剤」
北條達也+山田達也(京都工芸繊維大学工芸科学研究科)
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- 通りの両側を寺の塀に挟まれ、街の賑わいから隔絶された「裏寺町通り」(京都府京都市)。通りと寺の境界線を再構成し、来訪者の「豊かな溜まり場となる通り」をつくり、かつての「広場としての寺」の姿を新たに実現する提案。
- 景観を特色づける軒の連なりを残し、壁を列柱に置き換える。通り抜けが生まれ、通りと寺に緩やかなつながりを構築。相互の領域を横断する居場所を提案した。
- 従来からの檀家と新たな来訪者の混在、ハレとケの重層性の創出など、場所の持つ特性を反転させた着想などが評価された。
【九州・沖縄エリア最優秀賞】
『CANVAS STREET』
チーム「通りもん」
山本英輝+遠藤瑞帆+井本圭亮+伊賀屋幹太(九州大学大学院人間環境学府)
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- 天神(福岡県福岡市)を貫く「渡辺通り」を舞台に、大資本による商業の中心地で、個人の活動がこれと共存できるシステムの提案。
- ビル内のテナント(大資本)は不動産に加えて、店舗を囲む可動産(キャンバス)を借りる。通路に店舗を開放する際、余剰となるキャンバスをビルのファサード面に設置。さらにこれを個人に貸し出し、多様な商業活動に活用してもらうことで、資本のスケールを超えた協働を生む。
- 「広告」を建築表現として前向きに扱うことが可能な、未来に対する提案として評価された。
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+ミライプロジェクトについて
将来「まち」や「建築」に携わって活動したいと考える全国の学生のみなさんに「設計の楽しさ」を実感していただきたいと、「全国の同じ志を持つ仲間・さまざまな都市で活躍する建築家との交流の場をつくりたい」との想いから、三菱地所設計の社員有志が中心となって開催したイベントです。
https://www.mj-sekkei.com/20th/株式会社三菱地所設計
1890年、東京・丸の内を近代日本のビジネスセンターに整備すべく、当時の三菱社が創設した「丸ノ内建築所」にルーツを持つ、日本で最も歴史ある組織設計事務所のひとつです。2001年に三菱地所より分社し、2021年には設立20周年を迎えました。現在、都市計画や建築設計はもちろん、企画・コンサルティング、リノベーション、CM、インテリアデザインなど、その活動領域は日本国内にとどまらず、中国、韓国、台湾、シンガポールやインドネシア、ベトナムなど東アジア全般に展開しています。
https://www.mj-sekkei.com/
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