SHARE 植木幹也+進士茶織 / スタジオシナプスによる、群馬・太田市の飲食店「WANDERLUST」。地域に根差し約40年営業するパン店の建替え計画、店の“あたりまえ”を引継いだ上で“集い・学び・交流する場”との要望に応える為に周辺までを視野に入れて設計、人々の多様な振舞の起点となる建築をつくる
植木幹也+進士茶織 / スタジオシナプスが設計した、群馬・太田市の店舗「WANDERLUST」です。
地域に根差し約40年営業するパン店の建替え計画、店の“あたりまえ”を引継いだ上で“集い・学び・交流する場”との要望に応える為に周辺までを視野に入れて設計、人々の多様な振舞の起点となる建築をつくる事が意図されました。店舗の公式サイトはこちら。
毎朝、夜明け前に灯るあかり。街が明るくなるころには、パンの焼ける匂いが漂ってくる。夕方、帰宅する頃には店のシャッターが閉まる音。その街には「いつも通り」を知らせてくれるパン屋があった。
通勤・通学時間になれば、店先を行き交う人々に「おはようございます。いってらっしゃい。」「行ってきます。」の声が聞こえ、お昼の忙しさの後は、広めの歩道でご近所さんとの井戸端会議。そこには、この街に40年あるパン屋ならではの、人と人とがつながる光景があった。
この街に、このパン屋があることが「あたりまえであること」。
建て替えを機に世代交代する建て主から、先代がつくってきたこの「あたりまえであること」を引き継いだ上で、さらに商品を売り、それを買うという一方向のコミュニケーションの場から、双方向のコミュニケーションの場へ転換するために「地域の人が集い、学び、交流するための場所」にしたいと要望された。
そこで私たちは、店の主人が主体の「私の」場所ではなく、地域の人々と共に「私たちの」場所として存在する場を目指し、建物を含めた敷地だけに留まらず、周辺までを計画の対象として設計を行った。
まず、街との関係をつくり出すために、人の姿が街に現れるような配置計画を行い / 敷地境界線をぼかし / 建物のかたちを街に合せ / 地域の緑を生かし / 街の活動に囲まれた建物とする。そして、この街との関係を建物内外に広げるため、街と多層的なつながりをつくり / ここでの出来事が街の記憶と重なるようにし / 地域の人とコトとトキを共有できる場とした。
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以下、建築家によるテキストです。
「私たちの、」をつくる-太田市のパン屋
毎朝、夜明け前に灯るあかり。街が明るくなるころには、パンの焼ける匂いが漂ってくる。夕方、帰宅する頃には店のシャッターが閉まる音。その街には「いつも通り」を知らせてくれるパン屋があった。
通勤・通学時間になれば、店先を行き交う人々に「おはようございます。いってらっしゃい。」「行ってきます。」の声が聞こえ、お昼の忙しさの後は、広めの歩道でご近所さんとの井戸端会議。そこには、この街に40年あるパン屋ならではの、人と人とがつながる光景があった。
この街に、このパン屋があることが「あたりまえであること」。
建て替えを機に世代交代する建て主から、先代がつくってきたこの「あたりまえであること」を引き継いだ上で、さらに商品を売り、それを買うという一方向のコミュニケーションの場から、双方向のコミュニケーションの場へ転換するために「地域の人が集い、学び、交流するための場所」にしたいと要望された。
そこで私たちは、店の主人が主体の「私の」場所ではなく、地域の人々と共に「私たちの」場所として存在する場を目指し、建物を含めた敷地だけに留まらず、周辺までを計画の対象として設計を行った。
まず、街との関係をつくり出すために、人の姿が街に現れるような配置計画を行い / 敷地境界線をぼかし / 建物のかたちを街に合せ / 地域の緑を生かし / 街の活動に囲まれた建物とする。そして、この街との関係を建物内外に広げるため、街と多層的なつながりをつくり / ここでの出来事が街の記憶と重なるようにし / 地域の人とコトとトキを共有できる場とした。
建物が完成した後、緑あふれる路地は、県道の歩道と同じように道として使われ、街のテラスや隣の公園では、子供たちがおいしそうにパンをほおばる隣で、ママたちは井戸端会議をしている。建物内外、敷地内外に点在する居場所は公共施設のエントランスホールにいるような心地よさがあり、自然と時間を過ごしてしまうようだ。時々行われるイベントの際には、カフェスペースがセミナールームへと変わるような利用方法の変化はもとより、パン売り場が、音楽会や寄席のホールともなれば、歩道が入場待ちのホワイエになるなど街の使い方まで変えている。
パンというものがシェアすることができることで、コミュニケーションの媒体となるのと同様に、建築もシェアすることを前提に計画すれば、これまでよりも自由でおおらかに、そこに在ることができるのではないだろうか。
世代が変わっても、この街に確固として「私たちの、」がある場所。そんな建築を目指した。
■建築概要
名称:WANDERLUST(ヴァンダラスト)
所在地:群馬県太田市
主要用途:飲食店(パン屋+カフェ)
設計:スタジオシナプス 植木幹也+進士茶織
施工:安松託建
構造・規模:木造 2階建て
敷地面積:451.80㎡
建築面積:274.95㎡
延床面積:286.84㎡
竣工年月:2018年09月
写真撮影:鳥村鋼一
種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) |
---|---|---|
外装・屋根 | 屋根 | ガルバリウム鋼板立ハゼ葺き |
外装・壁 | 外壁 | ガルバリウム鋼板大波縦張り |
外装・その他 | 軒天 | ケイカル板+シルバー水性塗料 |
内装・床 | 店舗床 | 土間コンクリート研磨+ワックス仕上 |
内装・床 | 工場床 | |
内装・床 | 事務所・休憩室床 | フローリング厚12 |
内装・壁 | 店舗壁 | アクリルシリコン樹脂塗料 |
内装・壁 | 工場壁 | 耐水PB厚12.5+化粧ケイカル板厚6 |
内装・壁 | 事務所・休憩室壁 | ビニルクロス貼 |
内装・天井 | 店舗天井 | PB厚9.5+シルバー水性塗料 |
内装・天井 | 工場天井 | 耐水PB厚12.5+化粧ケイカル板厚6 |
内装・天井 | 事務所・休憩室天井 | ビニルクロス貼 |
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