井上亮+吉村明 / Inoue Yoshimura studioが設計した、東京・小金井市の住宅「大階段室の住居」です。
駅前の密集地に計画されました。建築家は、採光が厳しい中での明るく開放的な住まいの要望に、限られた光を全体に届ける“すり鉢状”の吹抜けを考案しました。また、全体を“大きな階段室”になぞらえて緩やかに繋がり分節される空間を作る事も意図されました。
駅前の密集地に立つ3階建住居の新築計画である。
敷地は北側の道路以外3方を3階建てのアパートや住宅に囲まれる周囲の建物が建て迫った状況の立地で、採光面で非常に厳しい条件であった。若い夫婦と小さな子供3人の5人家族は、それでも明るい室内と3階建て特有の閉鎖感のない開放的な住まいを要望していた。
採光が期待できる部分は、北側の道路と天空、隣地とのわずかな隙間のみ。そのわずかな採光面に開くように、家の中央に1Fの玄関から最上部まで貫く吹抜を設け、その吹抜に沿うように階段を計画した。吹抜は上階へいくほどすり鉢状に広がり、上階で取り込んだ光を効率よく下階へと落とし込むように計画している。外観も、吹抜の形状に応じて上階へ行くほど道路へと迫り出している。
3階建住宅の場合は、階段が住まいの隅に追いやられ、残りの空間を広くする計画も多いが、ここでは階段自体を肥大化させ、この住居自体が大きな階段室であるかのような計画とした。上方から降り注ぐ光はおおらかな明るさとなって玄関まで届き、肥大化した階段空間が、リビングやダイニング、各諸室を分断された部屋ではなく、「おおきな階段の踊り場の一部」のように変容させる。
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以下、建築家によるテキストです。
駅前の密集地に立つ3階建住居の新築計画である。
敷地は北側の道路以外3方を3階建てのアパートや住宅に囲まれる周囲の建物が建て迫った状況の立地で、採光面で非常に厳しい条件であった。若い夫婦と小さな子供3人の5人家族は、それでも明るい室内と3階建て特有の閉鎖感のない開放的な住まいを要望していた。
採光が期待できる部分は、北側の道路と天空、隣地とのわずかな隙間のみ。そのわずかな採光面に開くように、家の中央に1Fの玄関から最上部まで貫く吹抜を設け、その吹抜に沿うように階段を計画した。吹抜は上階へいくほどすり鉢状に広がり、上階で取り込んだ光を効率よく下階へと落とし込むように計画している。外観も、吹抜の形状に応じて上階へ行くほど道路へと迫り出している。
3階建住宅の場合は、階段が住まいの隅に追いやられ、残りの空間を広くする計画も多いが、ここでは階段自体を肥大化させ、この住居自体が大きな階段室であるかのような計画とした。上方から降り注ぐ光はおおらかな明るさとなって玄関まで届き、肥大化した階段空間が、リビングやダイニング、各諸室を分断された部屋ではなく、「おおきな階段の踊り場の一部」のように変容させる。
生活の中で現れる些細な行為や大小様々な気配は、この大きな階段空間によって緩やかに繋がれ、また適度に分節された「起伏のあるワンルーム空間」となり住まいと住まい手の新しい関係を生み出すように考えた。
なお、大きな吹抜空間を生かして、上方に溜まる熱気を集熱し、基礎内へと戻して循環させることで、上下階の温度差を緩和し建物の形状に合わせた効率よい空調計画を実施している。
■建築概要
題名:大階段室の住居
設計:Inoue Yoshimura studio Inc.
担当/井上亮、吉村明
協力:株式会社川田知典構造設計
所在地:東京都小金井市
主用途:住宅+仕事場
構造:木造
階数:地上3階
敷地面積:88㎡
建築面積:59㎡
延床面積:144㎡
設計:2020年12月~2021年6月
工事:2021年8月~2022年1月
竣工:2022年2月
写真:渡邊聖爾