田中了多 / MIRRORが設計した、奈良市の飲食店「宿雨」です。
商業ビルの奥にあるコーヒースタンドです。デザイナーは、道との程良い距離と外の共用部に注目し、店のイメージを象徴して外装とも繋がる“紺色”に染色した空間を考案しました。また、カウンターに収納もできる椅子が内外の境界横断を促進します。店舗の公式サイトはこちら。
降り続く雨という意味を持つ言葉「宿雨」を、店名としたコーヒースタンドの計画。
計画地はテナントビルの1階で、少し奥まった場所だが、前面道路からの程よい距離や共用部の外部空間に魅力を感じた。
まず木を紺色に染色し、木目を雨が降る様や水溜りの波紋に見立て、床、壁、天井を覆うことで、宿雨としての特徴的な空間をつくった。
テナントビルの外装が紺色だったため、店内と同化し、内外が繋がった場所となった。
よって境界になりかねない店舗サインは付けない事とした。染色された木は、引きで見るとただの紺色に見え、近づくにつれて木目が現れる。結果、客は気負いなく宿雨の世界に浸ることになる。
次に外部空間をも店として使うためのキッカケを、家具に委ねたいと考えた。
店として必要な機能であるスタンディングのカウンター、調理台、コーヒードリップ台、収納など、使い勝手によって異なる家具の高さの差を利用して、木の塊がずれながら積み重なる形状とした。
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以下、建築家によるテキストです。
降り続く雨という意味を持つ言葉「宿雨」を、店名としたコーヒースタンドの計画。
計画地はテナントビルの1階で、少し奥まった場所だが、前面道路からの程よい距離や共用部の外部空間に魅力を感じた。
まず木を紺色に染色し、木目を雨が降る様や水溜りの波紋に見立て、床、壁、天井を覆うことで、宿雨としての特徴的な空間をつくった。
テナントビルの外装が紺色だったため、店内と同化し、内外が繋がった場所となった。
よって境界になりかねない店舗サインは付けない事とした。染色された木は、引きで見るとただの紺色に見え、近づくにつれて木目が現れる。結果、客は気負いなく宿雨の世界に浸ることになる。
次に外部空間をも店として使うためのキッカケを、家具に委ねたいと考えた。
店として必要な機能であるスタンディングのカウンター、調理台、コーヒードリップ台、収納など、使い勝手によって異なる家具の高さの差を利用して、木の塊がずれながら積み重なる形状とした。
そして外部空間で自由に使える引き出しテーブルや、スツールも組み込んだ。また家具をずらした部分が、入口扉の戸当りを兼ねるなど、5.5坪と小ぶりな空間において、複数の要件を一手で解決することも考えている。
内外が繋がった場所を横断する1つの家具をシェアすることで、内と外、客と客、客と店員、それぞれがフラットな関係を創出する場所となった。
■建築概要
題名:宿雨(しゅくう)
所在地:奈良県奈良市学園北1丁目1−11イヴビル102
主用途:コーヒースタンド
設計:MIRROR 田中了多
施工:ティーエイチイー 橋本幸治
照明計画・特注照明:NEW LIGHT POTTERY
音響計画:listude(sonihouse)
計画面積:18㎡
竣工:2021年4月
写真:西岡潔