SHARE 彦根アンドレア / 彦根建築設計事務所による、神奈川の住宅「365°」。海と山を望む高台の敷地。周囲の景色を取り込みつつ強風に対策する為、中庭を囲む様に諸室を配置した“円形”の平面構成を考案。詳細な設備計画や自然エネルギーの活用等で“自立した生活”環境も構築
彦根アンドレア / 彦根建築設計事務所が設計した、神奈川の住宅「365°」です。
海と山を望む高台の敷地に設計されました。建築家は、周囲の景色を取り込みつつ強風に対策する為、中庭を囲む様に諸室を配置した“円形”の平面構成を考案しました。また、詳細な設備計画や自然エネルギーの活用等で“自立した生活”環境の構築も意図されました。
「365°」という建物の名前とコンセプトは、コロナ禍前とまったく違う意味を持ち始めた生活様式からインスピレーションを受けている。
多くの人が自宅で仕事をしながら、家族と一緒に過ごし、必要に応じて距離を保つことを望まれるようになった。同時に、「小さな丘の頂上にあり、360度美しい自然に囲まれたこの素晴らしい土地で、365日、この家族が毎日幸せで充実した日々を楽しむことが出来るように」という願いを込めて、円形のデザインと、コンセプトを掛け合わせたこの名前を名付けた。
敷地は高台にあり、西南方向に海と富士山を望むことができるため、西側に大きな開口部を設けることから計画をたてた。
一方で、海から吹き上げる強い風が吹く場所でもあるため、日を遮るための庇をつけることができなかった。そこで、強い風や日差しから守られる場所として中庭を計画し、その中庭を囲むように部屋を配置する構成とした。
この構成によって、風向きに合わせて外周と中庭に面する窓を開けることができ、また、屋外/屋内/中庭のどこで過ごすかを考え、選択することができる。自然環境は美しい一方で厳しくもあることを認識し、この土地でいかに生活するかということを考えた住宅である。
この住宅は屋外にいるような気分になるデザインがポイントだ。屋外に身を置くことで、心が落ち着き、安らぎを感じ、日常のストレスや精神的疲労を和らげることができ、そしてゆっくり過ごすことへのきっかけを与えてくれる。
風景を取り込むための形態=円形であるとともに、生活という終わりのない活動に寄り添う形でもある。中庭は空を切り取り、部屋から他の部屋へ、空間から空間へ、別の活動へと循環するシーンを映し出す。
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以下、建築家によるテキストです。
「365°」という建物の名前とコンセプトは、コロナ禍前とまったく違う意味を持ち始めた生活様式からインスピレーションを受けている。
多くの人が自宅で仕事をしながら、家族と一緒に過ごし、必要に応じて距離を保つことを望まれるようになった。同時に、「小さな丘の頂上にあり、360度美しい自然に囲まれたこの素晴らしい土地で、365日、この家族が毎日幸せで充実した日々を楽しむことが出来るように」という願いを込めて、円形のデザインと、コンセプトを掛け合わせたこの名前を名付けた。
敷地は高台にあり、西南方向に海と富士山を望むことができるため、西側に大きな開口部を設けることから計画をたてた。
一方で、海から吹き上げる強い風が吹く場所でもあるため、日を遮るための庇をつけることができなかった。そこで、強い風や日差しから守られる場所として中庭を計画し、その中庭を囲むように部屋を配置する構成とした。
この構成によって、風向きに合わせて外周と中庭に面する窓を開けることができ、また、屋外/屋内/中庭のどこで過ごすかを考え、選択することができる。自然環境は美しい一方で厳しくもあることを認識し、この土地でいかに生活するかということを考えた住宅である。
この住宅は屋外にいるような気分になるデザインがポイントだ。屋外に身を置くことで、心が落ち着き、安らぎを感じ、日常のストレスや精神的疲労を和らげることができ、そしてゆっくり過ごすことへのきっかけを与えてくれる。
風景を取り込むための形態=円形であるとともに、生活という終わりのない活動に寄り添う形でもある。中庭は空を切り取り、部屋から他の部屋へ、空間から空間へ、別の活動へと循環するシーンを映し出す。
この住宅の性能は、エネルギー消費を削減するために、機械設備による冷却、加熱、換気及び照明の諸室のレイアウト、ファブリック(ハニカムシェード等)にいたるまでも一括で検討した。
同時に、家全体の温熱環境の快適性に大きく関係する、建物を取り囲む外皮から放射される熱気と冷気について考えることも重要だ。高水準の断熱対策を検討し、外気温との差を少なく抑えることで、快適な温熱環境を実現している。温かな太陽の光と風がもたらす涼しさは何よりも心地良く、自ら開け閉めすることができる窓と、自動制御の輻射冷暖房設備を組み合わせることで、家族全員がそれぞれに合った快適な環境を作り出すことができる。
しかし、パッシブシステムだけで猛暑や高湿度に対応するには限界があるため、アクティブシステム(機械設備)に頼る必要がある。
太陽の光、熱、雨水を活用しエネルギーに変えることで、外部インフラに依存する必要のない自立した生活が可能になる。これらのエネルギーは敷地内でつくられるため、災害時等でもすべての機器をほぼ通常通りに動作させることができる。エネルギーの自立は、ここで暮らす家族に心地よい安心感を与えてくれる。
健康と快適さを最適化するには、視覚的な快適さも重要だ。取り囲む空間の質、眺望への視線の抜け、そして建物に入る光の量と質、これらは個人ごとに感じ方が異なるものであり、とても大切な要素。そのため、明るいか暗いかの二択ではなく、多種多様な明るさの場所を用意するために、様々な光の取り込み方をしている。その時の気分やその日の天気、時間帯によって、快適な明るさを探しながら過ごす場所を変えていくことが出来るのである。
海と空の絶え間ない変化に建物が浸り、様々な表情を見せてくれる。風の音や波の音に耳を澄ませ、これまで同じ場所に 5分しか座れなかった人が10分、20分座れるようになり、心と体を休めることができるようなデザインを目指した。日常のスピード感から解放されることで、結果的にクリエイティビティが向上する。この場所だから体感できる日々、刻一刻と変わるその表情を楽しみながら、時間をかけてゆっくりと過ごして欲しいと願う。
■建築概要
題名:365°
所在地:神奈川県
主用途:住宅
設計:彦根アンドレア
担当:藤本陽介
構造設計:ハシゴタカ建築設計事務所 髙見澤孝志
施工:和田工務店 箱崎勇一
階数:地下1階 地上1階
構造:混構造(地下1階RC造+1階木造)
敷地面積:496.67㎡
建築面積:256.42㎡
延床面積:490.51㎡
工事期間:2021年8月~2022年5月
竣工:2022年5月
撮影:ナカサアンドパートナーズ 守屋欣史、彦根藍矢
種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) |
---|---|---|
外装・屋根 | 屋根 | |
外装・壁 | 外壁 | |
外装・建具 | 開口部 | |
内装・床 | 床 | ヒノキフローリング無節 オイル仕上げ |
内装・床 | 玄関・廊下3・クローク・倉庫2床 | モルタル金ゴテ仕上げ |
内装・床 | 洗面1・洗面2床 | |
内装・床 | 浴室1・浴室2・便所1・洗面3・浴室3床 | |
内装・床 | ゲストルーム床 | ヒノキフローリング無節 オイル仕上げ:ワンコートオンリー #1271エボニー(オスモ&エーデル) |
内装・壁 | 壁 | PB t=12.5 チャフウォール塗装(チャフローズコーポレーション) |
内装・壁 | パントリー・クローゼット壁 | 桐パネル 目透かし貼り(タシロ産業) |
内装・壁 | 洗面1・洗面2・浴室1・浴室2・便所1・洗面3・浴室3壁 | |
内装・壁 | 廊下3壁 | コンクリート打放し仕上げ |
内装・壁 | ゲストルーム壁 | 40mm×30mmルーバー オイル仕上げ:ワンコートオンリー #1271エボニー(オスモ&エーデル) |
内装・天井 | 天井 | シナベニヤt=5.5 無塗装 |
内装・天井 | パントリー・クローゼット天井 | 桐パネル 目透かし貼り(タシロ産業) |
内装・天井 | 洗面1・洗面2・浴室1・浴室2・便所1天井 | ヒノキ板張り オイル仕上げ |
内装・天井 | 洗面3・浴室3天井 | ヒノキ板張り オイル仕上げ:ワンコートオンリー #1271エボニー(オスモ&エーデル) |
内装・天井 | プレイルーム・廊下3・クローク・倉庫天井 | PB t=9.5 チャフウォール塗装(チャフローズコーポレーション) |
内装・キッチン | キッチン | 製作(ティデア) |
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※この情報は弊サイトや設計者が建材の性能等を保証するものではありません