片田友樹 / micelleが設計した、福岡の住宅「KGM2」です。
“作陶”を行う施主の為に計画されました。建築家は、“外部を選択的に取り入れる皮膜”を主題とし、高窓採光を実現する“卍型”に回転させた“ギャップ”を持つ屋根を考案しました。また、“選択的な透過性”の空間として通気等の機能も備えています。
北側斜面の暗い敷地に建つ住居を、籠って作陶の作業をするための別邸に建て替えるプロジェクト。
屋外の障害(作業の邪魔になる騒音、グレアや反射、熱環境、不必要な来客など)から、創作や生活を守る「要塞のような小屋」という施主の要望から、外部を選択的に取り入れる皮膜を主題とした。
そこで、厳しい光環境からハイサイドライトを採れる片流れを風車のように卍型に回転して組み合わせた。そのギャップのスペースを、温室のような透明の波板で覆うことで、光環境、空気環境等の結節点となるため、そのギャップのスペースを細胞膜のような選択的な透過性をもった空間として利用した。
壁面には窓は設けず、切り欠いた外周の四隅に開口部を集約した。結果的に京都の鬼門除けの缺けのような形状となった刳り型と縦すべり出し窓による局所的な気圧差によって通気輪道を作りつつ、開口部のない大きな壁面を作った。風が通り、光や絵画が映える大きな壁面を背負った、静いつで穏やかな空間になった。
また、記号的な窓を設けないことで、外部からの視線に怯える無用の窓をファサードから排除し、開かないカーテンによって占められてしまっている日本の街並みに、有機的な皮膜とその外形が人家としての灯りという機能と家という記号の代わりを果たした新しい「家」のあり方を提案できたのではないだろうか。
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以下、建築家によるテキストです。
北側斜面の暗い敷地に建つ住居を、籠って作陶の作業をするための別邸に建て替えるプロジェクト。
屋外の障害(作業の邪魔になる騒音、グレアや反射、熱環境、不必要な来客など)から、創作や生活を守る「要塞のような小屋」という施主の要望から、外部を選択的に取り入れる皮膜を主題とした。
そこで、厳しい光環境からハイサイドライトを採れる片流れを風車のように卍型に回転して組み合わせた。そのギャップのスペースを、温室のような透明の波板で覆うことで、光環境、空気環境等の結節点となるため、そのギャップのスペースを細胞膜のような選択的な透過性をもった空間として利用した。
光を室内へと通しつつ、高窓を通して屋根/外壁の通気空間と室内空間が繋がり、外壁から室内まで通気や排熱を行うハブのようなスペースであり、置換換気や重力換気、通気空間の風圧差による自然換気と頂部の換気扇によって、外皮/室内環境をパッシブ+アクティブに整えることができる。
正方形の軸を東から北に22.5°ずらした平面と隣地との高低差によって、昼過ぎの日射を遮蔽しつつ、色温度の変化を楽しめる朝日や夕日を取り入れ、一度3寸勾配の透明の波板(多少分光される)を通した光を高窓の開口を通し、更に傾斜窓のすりガラスを通した拡散光として採り入れるなど、選択的に光を取り込んだ。
さらに、このような躯体の分節とは異なった対角線に沿った平面計画とした。
異なる環境を横断し、混ぜ合わせた微地形のような環境下で、最適な場所を選びながら多種のアクティビティが行われるような空間であり、差し込む強い光を柔らかい光の元で見るような、複雑だが初源的な空間が室内に生まれた。
壁面には窓は設けず、切り欠いた外周の四隅に開口部を集約した。結果的に京都の鬼門除けの缺けのような形状となった刳り型と縦すべり出し窓による局所的な気圧差によって通気輪道を作りつつ、開口部のない大きな壁面を作った。風が通り、光や絵画が映える大きな壁面を背負った、静いつで穏やかな空間になった。
また、記号的な窓を設けないことで、外部からの視線に怯える無用の窓をファサードから排除し、開かないカーテンによって占められてしまっている日本の街並みに、有機的な皮膜とその外形が人家としての灯りという機能と家という記号の代わりを果たした新しい「家」のあり方を提案できたのではないだろうか。
寡黙で寓話的な外観であるが、ファンやヒーター付きの衣服や、内側の目(消化器官)と外側の目(受容器)のような選択的透過性を持った有機的な膜をベンチマークとしつつ設計した。
■建築概要
場所:福岡県
用途:住居
設計:micelle ltd. / katada tomoki
施工:時空建築工房
延べ床面積:81.51m2
設計期間:2021年1月~2021年10月
工事期間:2021年11月~2022年7月
撮影:Lemmart