慶應SBCチームが設計した、神奈川・藤沢市の「慶應SFC SBCプロジェクト 滞在棟3」です。
大学敷地内の滞在型教育施設です。建築家は、“使い方を限定しない学びの場”を求め、空間に“微小な方向性や性格の変化”を生み出す“湾曲するグリッド”を考案しました。そして、自立する建築システムで利用者の“拠り所”を作る事が意図されました。
慶應SBCチームは、西願公登 / アーキスコープ、篠原勲+今村水紀 / miCo.、長岡勉 / POINT、スティーブン・シェンク+服部大祐 / Schenk Hattori、黒川彰+土佐谷勇太 / Sho Kurokawa architectsによって構成されています。施設の公式サイトはこちら。
可変性と経済性を備えた一室空間について考える時、木造であれば均等グリッドをつくるところから設計が始まるのが通例である。
そうしてでき上がる空間の中に、場所ごとの性格の違いを生み出そうと試みる際、間仕切りや家具といった副次的な要素にそれを委ねるのではなく、グリッドのシステム自体に微小な方向性や性格の変化を持たせることができないだろうか。
“使い方を限定しない学びの場“という構想の下、敷地形状から導かれた緩やかに湾曲するグリッドを設定し、その交点に柱を置いてゆく。
僅かに湾曲する2m間隔のグリッドは、少しずつ異なる歪みを持つ単位空間つくり出す。そのわずかに異なる性質を持った場の連続に加え、周囲の地形と連続するように床レベルを操作し、上階に外部広場と繋がるワークスペース、下階にベッドブースや水回りといった機能を納める。
湾曲グリッドには幾何学上の調整を加え、構造材の接合部を数種類のパターンに統一することで、部材の均一性と施工の単純化を計る。さらに、柱の四面には溝と穴を設け、フレキシビリティとアダプタビリティを備えたグリッドシステムに、利用者が自ら空間をカスタマイズしていくための手掛かりとなるようなディテールを与える。
コンテクストやプログラムといった与件に過度な依存をせず、自立する建築のシステムそのものが居場所を作る拠り所となり、建物内外の経験の繋がりを予見させる、そんな空間構成を目指した。