中村竜治建築設計事務所の会場構成による「ものたちの誰彼(たそがれ)展」です。
身近な壊れやすい物との付合い方を主題とし開催されました。建築家は、展示されるオブジェとその写真の関係性に向合い、説明的ではない“即物的”な展示計画を志向しました。そして、其々の独立した鑑賞を促す“1.4mの高さに梁を掛けた空間”を考案しました。展覧会の公式ページはこちら。※会期はすでに終了しています
「ものたちの誰彼(たそがれ)」展の会場構成です。
展覧会の内容は、朽ちかけたガラスのオブジェと、それを撮り続けた泊昭雄さんの写真を通して、身近なこわれやすいものとのつきあい方を見つめ直すというものです。
実物とその写真が展示されるとき、2つはどんな関係が良いのか?一般的には、主従関係があり、どちらかがどちらかの説明や補足になると思うのですが、2つはそういう関係ではないように思えました。なぜなら、2つからはそれぞれ異なったことが感じられ、良い意味でそれぞれ自立した作品として感じられたからです。
そこで、紹介的、説明的、演出的展示ではなく、2つの自立したものがただただあるという即物的な展示方法が良いのではないかと考えました。場所からも発想を得つつ、そのような状態を生み出す空間や展示方法とはどのようなものかを模索しました。
会場となるギャラリーは無印良品のお店に併設されており、ギャラリーにしては壁面が少なく、売場に対して比較的オープンな場所でした。床も同じ仕上げが続いているため、どこまでが展示場所なのか判然としません。このような場所に、展示場所としての不安定さを感じると同時に面白さも感じ、場所を全部使い切るのではなく、一部を売場に開放することを考えました。
具体的には、ギャラリーを半分ほど囲っている壁の両端を直線で結ぶように梁を架けました。梁は1.4mの高さにかかっており、下を潜れば向こう側へも行くことができます。これにより、梁の奥は不整形に囲いとられ、手前は少し広めの通路のようになりました。
ギャラリーが一部売場空間に取り込まれたように感じられますが、逆に売場全体が展示空間に取り込まれたようにも感じられます。何のための場所か以前より曖昧になったわけですが、そのような場所を利用するように、ガラスのオブジェは梁の上に置き(泊さんが即興で)、写真は梁の向こう側の壁に梁の天端と高さを合わせピンナップしました。