OSTR / 太田翔+武井良祐が設計した、移動型サウナ「サバス」です。
路線バスの車両をサウナに改修する計画です。建築家は、転用だから生み出せる“体験”を目指し、既存の座席配置等の活用に加えて“バスの廃材”を再利用して空間を構築しました。また、風景に馴染む“バスでありサウナであり建築”である事も志向されました。サバスの公式サイトはこちら。
サバスとは、兵庫県にある神姫バスで実際に路線バスとして利用されていた車両をサウナに改造した移動型サウナです。
ピカピカに蘇らせるのではなく、バスの良さはそのままに使えそうなものは活かしながらサウナへとアップデートすることで、「路線バス→サウナ」でしかつくれないサウナ体験にできるのではないかと考えました。バス、サウナそれぞれの体験を重ね合わせることがサバスをつくっていくうえでの指標のひとつとなりました。
まず、バスにサウナを挿入するには敷地があって既存建物があるリノベーションとは違う方法でアプローチする必要がありました。
サウナのクオリティは当然ながら、バスは動くし、揺れるし、搭載できる荷重の制限もありました。法規も建築基準法ではなく、車検をクリアする必要があります。既存のバスもまともな図面はなく、よくわからないパーツや点検口もあったりして、それらを一つずつ実測・検証を繰り返して現場で調整していきました。既存建物をリノベーションすることと同様、そういった「路線バス」というコンテクストを読み込みながら「サウナ」へと変換していきました。
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以下、建築家によるテキストです。
サバスとは、兵庫県にある神姫バスで実際に路線バスとして利用されていた車両をサウナに改造した移動型サウナです。
ピカピカに蘇らせるのではなく、バスの良さはそのままに使えそうなものは活かしながらサウナへとアップデートすることで、「路線バス→サウナ」でしかつくれないサウナ体験にできるのではないかと考えました。バス、サウナそれぞれの体験を重ね合わせることがサバスをつくっていくうえでの指標のひとつとなりました。
まず、バスにサウナを挿入するには敷地があって既存建物があるリノベーションとは違う方法でアプローチする必要がありました。
サウナのクオリティは当然ながら、バスは動くし、揺れるし、搭載できる荷重の制限もありました。法規も建築基準法ではなく、車検をクリアする必要があります。既存のバスもまともな図面はなく、よくわからないパーツや点検口もあったりして、それらを一つずつ実測・検証を繰り返して現場で調整していきました。
既存建物をリノベーションすることと同様、そういった「路線バス」というコンテクストを読み込みながら「サウナ」へと変換していきました。
たとえば路線バスの「狭さ」は、サウナに変換することで「熱」という「価値」に変わります。フラットな床をつくるのではなく、既存床のレベル差をそのまま生かすことで熱源や天井との距離が変化します。ストーブの熱を直に感じられる1列目や、床が最も高いことで天井に近い(最も熱を感じられる)2列目、ベンチ形状により寝ころべる4列目といった風に、座る場所によって好みの熱さを選択できます。
移動する豊かさを感じられるよう、窓は極力そのままのサイズで残しました。到着する場所によって、自然の中にいるようなサウナや、都市にさらけ出されたようなサウナにもなります。バスの前方部分は前室として休憩スペースや荷物置きとして使うことができます。元々のバスの内装や、ベンチの再利用で構成しています。
外観についても、神姫バスの車体から外観のベースは大きく変えることはせず、サウナの要素を追加することでよく見るとバスなのにサウナを感じられる仕様にしています。本来車体にはオレンジ色のラインが1本のみ引かれていますが、サウナと水風呂の関係性を表現する為に水色のラインを一本追加しています。
同じ座席レイアウトや既存窓を生かしたサウナとすること、半分の空間はほぼバスの内装を残すことによって、バスに乗っているのにサウナにいる、という不思議な感覚が味わえたらいいなと考えました。
サバスでは元々バスで使われていた廃材を再利用しています。施工現場がバスの整備を行う工場で、使われなくなったバスのパーツが山ほどあったので、宝探しのように再利用できる材料を検討していきました。
座席についていた手すりに麻を巻いて再利用したり、ロウリュウのためのボタンも元々の「降ります」ボタンです。吊革を加工して温度計に、整理券ボックスはアロマ水のタンクに、水が出てくる部分は窓を清掃するウォッシャーノズルを加工しました。休憩スペースのベンチもかつての座面をそのまま使っています。
その他、建具の持ち手や換気口、照明などあらゆるパーツを再利用しています。バス整備士との現場でのディスカッションが、路線バスを生かすための細かいディテールにつながっています。
サバス自体には水風呂がなく、いろいろな場所や風景に移動して組み合わせて初めて完成する、ある意味ではずっと未完成なサウナです。運用開始して1年、日本全国で使われている様子を見ていると、場所ごとに多種多様な体験を生み出していることが分かります。
機能が「移動」することの可能性を再発見でき、どんな風景でもなじむような「バスでありサウナであり建築」を目指しました。
■建築概要
題名:サバス
所在地:兵庫県姫路市
主用途:サウナ
設計:OSTR / 太田翔+武井良祐
施工:株式会社アトリエロウエ
企画:株式会社リバース、サウナイキタイ
協力:神姫商工株式会社(車体整備)
延床面積:22㎡(サウナ室内法8㎡)
設計:2021年6月~2021年9月
工事:2021年10月~2021年11月
竣工:2022年2月
写真:大竹央祐
建材情報種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) | 内装・床 | 休憩室 床 | 長尺シート(ロンシール)
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内装・壁 | 休憩室 壁 | 既存補修
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内装・天井 | 休憩室 天井 | 既存補修
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内装・床 | サウナ室 床 | フレキシブルボード+スノコ敷
米ヒバ エバーウッド(佐野木材)
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内装・床 | サウナ室 床[ストーブ設置部] | 防水パン
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内装・壁 | サウナ室 壁 | 羽目板仕上げ
米ヒバ エバーウッド(佐野木材)
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内装・壁 | サウナ室 壁[ストーブ設置部] | フレキシブルボード チヨダセラフレキ(チヨダウーテ)
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内装・天井 | サウナ室 天井 | 岩綿吸音板 ソーラトン(吉野石膏)
木板貼 米ヒバ[焼き加工]エバーウッド(佐野木材)
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内装・天井 | サウナ室 天井[ストーブ設置部] | フレキシブルボード+放熱板SUSt1.5 チヨダセラフレキ(チヨダウーテ)
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内装・造作家具 | ベンチ | 米ヒバ エバーウッド(佐野木材)
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内装・設備 | サウナストーブ | Harvia Legend 240 Green Flame(HARVIA)
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内装・照明 | 間接照明 | LEDテープライト100℃タイプ(富士メディシィエ)
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