SHARE 連勇太朗が監修する、LIXILのサイトでの特集「建築とまちのぐるぐる資本論」が公開中。須藤剛と深野弘之・能作淳平・福田和則・豊田雅子との対話、野澤千絵と高橋寿太郎との鼎談、木村佳菜子と松村淳の論考が掲載
建築家の連勇太朗が監修する、LIXILのサイトでの連載「建築とまちのぐるぐる資本論」の公開中の記事を紹介します。
現在までに、須藤剛と深野弘之に聞く「ニシイケバレイ」、能作淳平に聞く「富士見台トンネル」、福田和則に聞く「ソーシャルキャピタル」、野澤千絵と高橋寿太郎が参加した鼎談、木村佳菜子・松村淳が執筆した論考、豊田雅子に聞く「尾道空家再生プロジェクト」が掲載されています。【ap・ad】
連勇太朗によるイントロダクションより
これから一年間かけて「建築とまちのぐるぐる資本論」というシリーズで、LIXILのこのウェブサイトから様々なコンテンツをお届けしていきます。まず名前を見て「ぐるぐる資本論ってなんだ!?」と思った方が大半なのではないでしょうか。それもそのはず。ぐるぐる資本論はこの特集を始めるにあたって考えたオリジナルの概念です。この原稿で初めてのお披露目となります。まだ世の中で認知されていないこの言葉について一緒に考えていく、それがこの特集の目的です。
(中略)
私たちの創造性を発揮するには、背後にある経済モデルを無視することができない状況が訪れている、それが現代の状況だというのが私の基本的な認識です。
だからこの特集ではお金の巡りについても積極的に考えていきます。大きい経済モデルの話から、各個人のお金に対する認識から、事業の運営についてまで、様々な観点からお金について考えていきます。一昔前(例えば私が学生だった2000年代)まで、建築領域においてお金の話や事業の話をすることは「格がひくい」ことでした。とある有名な建築家に「建築家になりたいならそういう話はよしなさい」と諭されたりもしたものでした。しかし既に書いたように、これからの都市やまちについて考え、哲学や理念を実体化するためには、お金の話を避けて通ることはできません。
(中略)
金融資本主義そのものを止めることや変えることは難しいかもしれませんが、だからといってその波に飲まれ諦めるのではなく、たとえ小さなスケールであったとしても、経済モデルそのものを変革したりデザインしたりすることに挑戦しなければ、私たちの社会を真に支える空間、地域、環境、まちを実現することはできないのではないというのが「ぐるぐる資本論」の仮説です。建築やまちづくりに関わるプレイヤーはこのことに対して自覚的になる必要があり、積極的に介入していく必要があるのではないでしょうか。
以下に、各記事の概要と記事へのリンクを掲載します。
連勇太朗による「建築とまちのぐるぐる資本論」のイントロダクション
これから一年間かけて「建築とまちのぐるぐる資本論」というシリーズで、LIXILのこのウェブサイトから様々なコンテンツをお届けしていきます。まず名前を見て「ぐるぐる資本論ってなんだ!?」と思った方が大半なのではないでしょうか。それもそのはず。ぐるぐる資本論はこの特集を始めるにあたって考えたオリジナルの概念です。この原稿で初めてのお披露目となります。まだ世の中で認知されていないこの言葉について一緒に考えていく、それがこの特集の目的です。
取材1
土地・隙間・人々のアソシエーション ニシイケバレイ
須藤剛、深野弘之(聞き手:連勇太朗)
「建築とまちのぐるぐる資本論」第1回は、ニシイケバレイを取材した。巨大ターミナル駅・池袋からほど近いこのエリアには、そうとは思えない風景がある。
ヴィジョナリーなオーナーと才能ある建築家らがチームを組み、ボトムアップ的かつ戦略的に場所を耕やしてきた。オーナー・深野弘之さんは不動産を活用しながら人々のアソシエーションを生み出し、建築家・須藤剛さんは複数のバラバラの建物や土地を具体的な形としてアソシエーション化している。無関係だったものの間に新たな関係性を構築し、価値やコミュニケーションの循環を生み出しているのだ。
プロジェクト全体がいかに実現されていったのか、その戦略と方法を尋ねた。
取材2
小さな経済とメンバーシップの建築化
能作淳平(聞き手:連勇太朗)
「建築とまちのぐるぐる資本論」第2回は、新宿から中央線とバスを乗り継いで1時間ほどの東京都国立市で、建築家の能作淳平さんが手掛けている複数の商業施設を取材した。どの施設にも共通しているのは、運営者、目的を共にした様々なメンバー、お客さんがひとつの空間を介してゆるくつながっていることだ。初期投資や固定費を抑えつつ、カジュアルにコミュニティのなかで経済循環をつくること、人々の関係をつなぎ建築化することの可能性を能作さんに聞いた。
取材3
ソーシャルキャピタルで地域を育てる方法
福田和則(聞き手:連勇太朗)
「建築とまちのぐるぐる資本論」第3回は東京を離れ、鎌倉・葉山のエリアを起点に各地の地域創生を目指す「エンジョイワークス」の代表取締役、福田和則さんを取材した。空き家や遊休不動産の活用といった日本の多くの地域が抱える問題に、建築家でも都市計画家でもない、金融出身の福田さんがこれまでとは違った角度からイノベーションを起こしている。全国展開を進めている今、福田さんがそれぞれの思いやエリアをどのように捉え、建物やまちの価値を高めるための再現性ある手法をどのように生み出しているのか、お話を伺った。
鼎談1
住宅過剰社会から脱却するための戦略
野澤千絵(明治大学政治経済学部教授)+高橋寿太郎(創造系不動産代表取締役、神奈川大学建築学部教授)+連勇太朗(明治大学専任講師、NPO法人CHAr代表理事、株式会社@カマタ取締役)
全国で同時多発的に「ぐるぐる資本論」的発想による場づくり、拠点づくり、まちづくりが行われている状況ですが、そうしたグッドプラクティスはどのような社会的状況のなかで行われているのか、視野を広げて考えてみたいと思います。ぐるぐる資本論を発想するに至った背景や問題意識は 「本特集への招待」 としてまとめましたので是非読んでください。ぐるぐる資本論にはまだ厳密な理論や定義があるわけではないので、議論をドライブさせるためのキーワードとして新しい発想やコミュニケーションのきっかけになれば良いなと思っています。特集におけるひとつひとつのインタビューや記事はもちろんですが、今回の鼎談を通してぐるぐる資本論をより深めていければと思います。
論考1
クラウドファンディングと建築・まちづくり
木村佳菜子(MotionGallery)
昨今、建築やまちづくりの領域において「クラウドファンディング」という言葉が当たり前に聞かれるようになったが、どのような場合にクラウドファンディングが有効なのか、そもそもクラウドファンディングとは寄付や投資とどう違うのかなどと考えると、具体的にはイメージが掴めないという方も多いのではないだろうか。
そこで、数年という浅いキャリアではあるが、クラウドファンディングキュレーター(★1)として様々なプロジェクトを目にしてきた筆者の視点から、建築やまちづくりとクラウドファンディングの関わりについて概説できればと思う。★1──プロジェクトを発掘し、クラウドファンディングの達成に向けて起案者を伴走支援するスタッフの名称。
論考2
共同体をベースにした建築とまち、経済モデルを構想する
松村淳(社会学者)
最近、シェアやコミュニティ、コモンズといった言葉をよく目にするようになった。私のまわりを見渡しても、シェアハウスに住んでいる友人はひとりやふたりではない。車はカーシェアリングサービスで十分だから一生所有する予定もないとうそぶく学生もいる。これらの現象は、若者を中心に日本人が経済的に貧しくなった証左であるとも言える。確かに、各種統計データを見てもそれは疑いようがない事実だ。しかし、シェアハウスもカーシェアリングも決して安さを売りにしたサービスではないことを考えると、シェアリングエコノミーの隆盛を可処分所得の減少だけに帰責させるのは短絡的であると言わざるを得ない。
シェアすることしか選択肢が残されていないから仕方なくシェアを選ぶというよりは、積極的にシェアを選択している、と考えた方が良さそうだ。だとすれば、とりわけ30代以下の若い世代に何らかの心理的な地殻変動が起きていることは明らかだろう。とはいえ、そうした若い世代の心理的地殻変動について詳細に論じる紙幅はないので、膨大に出版されている関連書籍を適宜ご参照いただきたい。
本稿でまず検討したいのは、こうした動向を新しいタイプの資本主義の萌芽として考えて良いのか、ということである。それについて検討するために後期近代論というマクロな視点から今の時代を俯瞰してみよう。
取材4
建築を残し希望を託す 尾道空家再生プロジェクトの15年
豊田雅子(聞き手:連勇太朗)
「建築とまちのぐるぐる資本論」の4回目の取材は広島県尾道市へ。2日間にわたり、NPO法人尾道空き家再生プロジェクトによる複数の建築再生事例や、資材・古い家具などをストックしている倉庫まで見せていただき、深い感銘を受けた。日本における空き家活用の先駆者である同NPO代表理事の豊田雅子さんから、尾道の貴重な建築群をいかに活かし、まちがどのように変わってきたのか、そして現在の課題まで含めて、その粘り強い活動の15年の軌跡と背後にある理念を伺った。
今後も「建築とまちのぐるぐる資本論」には、新しいコンテンツが追加されていくとのこと。