SHARE 山田誠一建築設計事務所による、静岡・沼津市の「本郷町の家」。郊外住宅地に計画。外から順に決める“地方の一般的な設計過程”の再考も意図し、環境を遮断した“理想的な空間”を作った後に外部と接続する設計を実践。逆説的な方法で周辺の消極的な印象を肯定的な特徴に変える
山田誠一建築設計事務所が設計した、静岡・沼津市の「本郷町の家」です。
郊外住宅地に計画されました。建築家は、外から順に決める“地方の一般的な設計過程”の再考も意図し、環境を遮断した“理想的な空間”を作った後に外部と接続する設計を実践しました。そして、逆説的な方法で周辺の消極的な印象を肯定的な特徴に変える事も意図されました。
周辺は、自然環境と建物がよいバランスで広がる郊外住宅地であるが、比較的コンパクトな街区のため、隣家が近くて思うように窓が開けられなかったり、建物の影になってしまい日照や通風が十分に得られないことが考えられた。
また地方都市での車の必要性から数台分の駐車スペースを道路側に設け、人通りの多い道路側に対して目線を遮るなどのプライバシーを考慮していくと、おおよその配置や建ち方が決まってしまう。郊外住宅地の環境ではよくあるケースだが、画一的な住宅地の一角をつくってしまうことになりかねない。
そこで、外部環境から順に思考していく一般的な設計プロセスを見直すことにした。
まず、住宅密集地の環境を一旦遮断して、外部環境に大きく影響されない理想的な空間を設定する。均等グリッドとトラスによって支えられたひとつのヴォリュームを導きだし、その四辺にトップライトを設け、均質な光で満たした。外からの視線や騒音などを遮断しつつ、近年多発するゲリラ豪雨などの水害に備えて建物を地面からもち上げ、外部環境からの影響を抑えた内部空間をつくり、改めて外部環境に接続していった。
外周壁と切り離された入れ子状のヴォリュームに機能と諸室を設け、それぞれに必要な寸法を割り出しながら全体の気積を求めた。そして、トップライト下の通路部分を1階のフロアレベルからさらに建ち上げ、その上下に格子付き窓と地窓、デスク、本棚、キッチンなどを設けた。
さらにトップライトからの光をあえて遮る垂壁を設けることで、外部環境とのを整理し、大きな気積の中に深い陰影と奥行きをつくりだした。
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以下、建築家によるテキストです。
環境を肯定する設計プロセス
周辺は、自然環境と建物がよいバランスで広がる郊外住宅地であるが、比較的コンパクトな街区のため、隣家が近くて思うように窓が開けられなかったり、建物の影になってしまい日照や通風が十分に得られないことが考えられた。
また地方都市での車の必要性から数台分の駐車スペースを道路側に設け、人通りの多い道路側に対して目線を遮るなどのプライバシーを考慮していくと、おおよその配置や建ち方が決まってしまう。郊外住宅地の環境ではよくあるケースだが、画一的な住宅地の一角をつくってしまうことになりかねない。
そこで、外部環境から順に思考していく一般的な設計プロセスを見直すことにした。
まず、住宅密集地の環境を一旦遮断して、外部環境に大きく影響されない理想的な空間を設定する。均等グリッドとトラスによって支えられたひとつのヴォリュームを導きだし、その四辺にトップライトを設け、均質な光で満たした。外からの視線や騒音などを遮断しつつ、近年多発するゲリラ豪雨などの水害に備えて建物を地面からもち上げ、外部環境からの影響を抑えた内部空間をつくり、改めて外部環境に接続していった。
外周壁と切り離された入れ子状のヴォリュームに機能と諸室を設け、それぞれに必要な寸法を割り出しながら全体の気積を求めた。そして、トップライト下の通路部分を1階のフロアレベルからさらに建ち上げ、その上下に格子付き窓と地窓、デスク、本棚、キッチンなどを設けた。
さらにトップライトからの光をあえて遮る垂壁を設けることで、外部環境とのを整理し、大きな気積の中に深い陰影と奥行きをつくりだした。
外部環境を一旦遮断し、理想的な空間を求めた上で再度外部環境に接続することは、もともとネガティブだと感じていた場所の印象を、固有の特徴や個性へと肯定していくプロセスである。
■建築概要
建物名称:本郷町の家
所在地:静岡県沼津市
主要用途:専用住宅
家族構成:夫婦+子供1人
意匠設計:山田誠一建築設計事務所 担当:山田誠一
構造設計:高橋俊也構造建築研究所 担当:高橋俊也
建築工事:大栄工業 担当:金澤清文
大工工事:大宮山建築 担当:大宮山健太郎
左官工事:山脇豊左官 担当:山脇豊
木製建具工事:渋谷木工所 担当:平神隆志
金属製建具工事:工藤硝子店 担当:工藤俊彦
塗装工事:山田塗装工業 担当:山田義忠
電気工事:山田電気 担当:山田庸介
給排水工事:隼設備 担当:渡邊崇徳
カーテン工事:カーテンコンフィ 担当:大石美穂
金物工事:金森正起、飯田興業 担当:飯田克彦
基礎・外構工事:勝栄建設 担当:羽切勝美
木材プレカット:渡邊木材 担当:渡邊善正
硝子工事:岡藤硝子 担当:岡田貴之
空調工事:TOKAI 担当:仲野泰幸
主体構造・構法:木造在来工法
基礎:ベタ基礎
階数:地上2階
地域地区:第一種低層住居専用地域
道路幅員:7.2m、2.4m
駐車台数:2台
軒高:6931mm
最高高さ:8321mm
敷地面積:172.84㎡
建築面積:80.57㎡(46.62%<60%)
延床面積:101.80㎡(58.90%<80%)
1階床面積:78.28㎡
2階床面積:23.52㎡
設計期間 2020年6月~2020年12月
工事期間 2021年1月~2021年12月
写真:川辺明伸
種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) |
---|---|---|
外装・屋根 | 屋根 | |
外装・壁 | 外壁 | W105×30t ヒノキ無垢材(渡邊木材) |
内装・床 | 床 | フレキシブルボード セルフレックス4.0t(A&Aマテリアル) |
内装・壁 | 壁 | 砂漆喰塗(山脇豊左官) |
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