富永大毅+藤間弥恵 / TATTAが設計した、東京・八王子市の「WOODSTOCK House すぎんち」です。
木造平屋を改修した設計者の自邸兼事務所です。建築家は、極力“ゴミを出さない”計画を目指し、自身で解体した部材を保管して各箇所での再利用等も実施しました。また、性能向上の視覚化も意図して断熱吹付や構造補強も全て現しとしています。
建築行為には大量のゴミがついて回る。
そしてゴミ処理にかかる負担は経済的にも環境的にもどんどん大きくなっている。八王子は日本一ごみの少ない町であり、その分別はかなり細かく、リサイクルも盛んである。
一方高度経済成長期に建てられた木造住宅のストックは大量にあり、性能の低い空家は今後も増えていく状況にある。
こうした空家ストックには生活スタイルの変化に伴う改修だけでなく性能の向上が求められるが、断熱も耐震も、それなりにお金をかけてもそのほとんどが仕上げに隠れてしまい、性能の変化は視覚的に表れることがない。
本件はなるべくゴミを出さないこと、性能の向上を視覚的に表すことを目指して設計された。
60㎡の木造平屋の改修であるが、足場をかけずに無断熱の天井と床を自分たちで解体することで、材を一旦保管し、天井仕上げを再利用したり、薄べニアは不陸調整に使われ、デッキの端材は組み合わされて浴室のスノコになっていった。
元の床板で薪棚が組まれ、最後まで役割が見つからないものは30cm長に切られ、釘が刺さったまま薪となった。抜かなくても肉を焼くと灰の中に釘だけが残り分別されていく。屋根裏と床下に断熱吹き付けをし、天井は塗装だけしてそのまま仕上とした。杉の積み壁や合板による構造補強も全て表しにしている。
これからはその地域にあるストックを使って自らも手を加え、時には余った地面を耕す、百姓的な人間を育む空間が求められていくと思う。子どもには少し高い床の段差も、あるときはトランポリンを置くことで解消し、急なスロープを仮置きすれば日々滑り台のように楽しみ、必要に応じて残された鴨居にものをかけられるようにしたり、棚をつくりつけたりできる。そうした仮置き(ストック)的な状況そのものを表現とする建築のデザインの在り方を考えた。
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以下、建築家によるテキストです。
建築行為には大量のゴミがついて回る。
そしてゴミ処理にかかる負担は経済的にも環境的にもどんどん大きくなっている。八王子は日本一ごみの少ない町であり、その分別はかなり細かく、リサイクルも盛んである。
一方高度経済成長期に建てられた木造住宅のストックは大量にあり、性能の低い空家は今後も増えていく状況にある。
こうした空家ストックには生活スタイルの変化に伴う改修だけでなく性能の向上が求められるが、断熱も耐震も、それなりにお金をかけてもそのほとんどが仕上げに隠れてしまい、性能の変化は視覚的に表れることがない。
本件はなるべくゴミを出さないこと、性能の向上を視覚的に表すことを目指して設計された。
60㎡の木造平屋の改修であるが、足場をかけずに無断熱の天井と床を自分たちで解体することで、材を一旦保管し、天井仕上げを再利用したり、薄べニアは不陸調整に使われ、デッキの端材は組み合わされて浴室のスノコになっていった。
元の床板で薪棚が組まれ、最後まで役割が見つからないものは30cm長に切られ、釘が刺さったまま薪となった。抜かなくても肉を焼くと灰の中に釘だけが残り分別されていく。屋根裏と床下に断熱吹き付けをし、天井は塗装だけしてそのまま仕上とした。杉の積み壁や合板による構造補強も全て表しにしている。
建物に使われている杉は全て多摩産の105x45mmの間柱材であり、中央で構造補強として作られた棚のような壁はこの間柱材を薪と同じ30cm程度にしたものを菱文字状に積み上げてつくられ、屋根裏を支えている。もともとそこにあった曲がり梁は製材所に運ばれテーブルに生まれ変わった。
結果として解体費はDIYで処分費も数万で済んだこともあるが、多摩の製材所、近所の工務店や建具屋に分離発注した結果として総工事費は600万程度、坪単価にして30万円台で済んでいる。
駐車場塀のブロックも交差点の視認状況を悪くしているだけのように思えたので解体し、新たに駐車場の仕上げとして使った。
既存の庭石は再定義され、畑の土留めとなったり、デッキを支える束石となり、灯籠の柱脚は玄関前の飛石となった元々あった株立ちの樫を少し間引いて、切った太い幹は重い石を持ち上げるのに使った。そうして元の日本庭園の灯篭や石を再配置して、飛び石や畑の土留め、あるいはデッキを支える束石になった。
壊したブロック塀で大きいものは駐車場の塀を壊した跡の舗装となり、細かくなったものは、ほかの現場で砂利の下敷きになっていった。
地面がある生活になるのだから小さくても畑をつくりたいということになり、元々細かな砂利が敷かれていた庭を深く掘り起こすことになった。堀った土をふるいにかけると大きいものはアプローチ部分に砂利として戻っていき、やや細かいものは庭木の周りや、舗装や束石の下地固めに使われた。ふるいの網目をすべて通過したものはふかふかな土に生まれ変わり、畑に使われた。
あるもののレイアウト変更だけで場所の価値を変える造園的な手法は、我々が目指していることでもある。
日々大学で学生を教えながら足元で子どもの成長を見ていると思うのは、環境が人をつくるということで、居住空間が担う負担は大きい。世界中から集められた高級素材を使ってつくる、完成度の高い空間の質を享受するだけの資本主義的な空間の価値の時代はまもなく終わる。
これからはその地域にあるストックを使って自らも手を加え、時には余った地面を耕す、百姓的な人間を育む空間が求められていくと思う。子どもには少し高い床の段差も、あるときはトランポリンを置くことで解消し、急なスロープを仮置きすれば日々滑り台のように楽しみ、必要に応じて残された鴨居にものをかけられるようにしたり、棚をつくりつけたりできる。そうした仮置き(ストック)的な状況そのものを表現とする建築のデザインの在り方を考えた。
(富永大毅+藤間弥恵 / TATTA)
垂木や間柱に用いられる45×105の小断面材を斜めに積み、並べたものを、縦にも積み上げることで製作される本棚が、増設されるロフトを支持する柱と耐力壁と兼ねている…と、この構造を短い文章で伝えよう努めるとかえって難しく聞こえてしまうので実物を見て頂きたい。
両面使いになっている棚の片側だけに本を並べると不安定になりそうに見えるが、反対側が浮き上がろうとする力に対し、ロフト重量による圧縮のプレストレスと、小断面材を積み上げる際に打ち込むビスによって抵抗できる。
また、斜めに積んだ木材の端部がスラストで広がって崩れそうにも見えるが、棚板がタイビームとして引張抵抗することで安定する。
建築の構造設計で用いる知識を集めると、魅力的な家具の設計にも大いに貢献できると再認識できたプロジェクトとなった。
(井上健一 / 井上健一構造設計事務所)
■建築概要
建物名称:WOODSTOCK House
所在地:東京都八王子市中野上町
主要用途:住宅(兼事務所)
家族構成:夫婦+子供2人
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設計
設計者事務所名:TATTA 担当/富永大毅・藤間弥恵
構造:井上健一構造設計事務所 担当/井上健一
外構・造園:オイコス庭園計画研究所 担当/笹原晋平
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施工:アビリティーホーム 担当/宮前孝仁
大工:大塚智仁・遠藤順平
設備:堀越工業所 担当/堀越賢志
電気:ベルデン 担当/鈴木淳
左官:久米左官 担当/久米謙一
建具:大房建具店 担当/大房登
外構・造園:オイコス庭園計画研究所 担当/笹原晋平
木材:沖倉製材
主体構造・構法:在来木造
基礎:布基礎
階数:地上1階
軒高:3,300mm
最高の高さ:5,290mm
敷地面積:132.43m2
建築面積:60.31m2(建蔽率45.54% 許容60%)
延床面積:59.49m2(容積率44.92% 許容200%)
1階:59.49m2
設計期間:2023年1月~2023年5月
工事期間:2023年7月~2023年10月
撮影:中山保寛写真事務所
建材情報種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) | 内装・床 | オフィス 床 | 杉無垢フローリングt30 EP拭取りの上木材保護塗料
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内装・壁 | オフィス 壁 | 構造用合板t12 EP拭取り
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内装・床 | キッチン 床 | 構造用合板t12
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内装・壁 | キッチン 壁 | 既存PBt9.5 EP
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内装・天井 | キッチン、オフィス 天井 | 発泡ウレタン吹付 EP
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内装・床 | 寝室 床 | 構造用合板t24 EP拭取りの上木材保護塗料
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内装・壁 | 寝室 壁 | 杉45×105透かし積壁
構造用合板t12 EP拭取り
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内装・天井 | 寝室 天井 | 杉30×90ルーバー
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内装・床 | 浴室 床 | 既存タイル
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内装・壁 | 浴室 壁 | 既存タイル一部SI塗装
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内装・天井 | 浴室 天井 | 既存吹付塗装
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内装・床 | トイレ、洗面所 床 | Pタイルt2(東リ)
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内装・壁 | トイレ、洗面所 壁 | 既存PBt9.5 EP
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内装・天井 | トイレ、洗面所 天井 | 既存杉板天井再利用
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内装・キッチン | キッチン | ガスコンロ:ビルトインガスコンロ(リンナイ)
換気扇 [シェード]:既存フードの上構造用合板貼り
家具:杉30×40積+製作カウンター(イノウエインダストリィズ)
シンク水栓金物:浄水器内蔵シングル混合水栓(TOTO)
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内装・水廻り | トイレ、洗面所 | 洗面カウンター:構造用合板t24造作
洗面ボウル:病院用流し(TOTO)
洗面用水栓金物:シングルスプレー混合栓(SANEI)
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※この情報は弊サイトや設計者が建材の性能等を保証するものではありません